中国の野望をくじくため、米国は「辺野古」を捨て石にする

 

中国の野望をくじくというアメリカの軍事目標を達成するため、中国の脅威を吹き込み、自衛隊に集団的自衛権行使のできる機能を持たせたうえで、南西諸島だけの戦闘で済むような「制限戦争」を想定しているのだ。

中国との全面戦争に発展することさえなければ、米軍の損失は最小限にとどまり、一時的にはどうであれ、互いに必要な米中の経済関係も持続できると踏んでいる。米軍兵士の命や兵器の損害も、自衛隊を使うことによって、少なく抑えられるという算段だろう。

こうしたオフショア・バランシングといわれる米国の戦略安倍政権積極的に受け入れ中国に対抗しようとしているように見える。中東やアフリカでも、米国は自衛隊をうまく利用して軍事作戦を進める腹だろう。

しかし、過度に中国を恐れ、敵視する必要はない。米国は覇権を守るために軍事戦略を練っているかもしれないが、日本のとるべき道は、日米安保を堅持しつつ、中国とも共存共栄をはかることである。

軍事力を背に高飛車な外交を展開したいという外務官僚のエゴに、国民がつき合わされる筋合いはない。

人口減少社会を迎え、GDPの維持が難しくなっている日本が中国を必要としているのは明らかであり、中国もまた、いかに自前の産業が発展してきたとはいえ、いまでも日本が必要なのは確かであろう。

日本研究で著名な歴史家、ジョン・ダワーは言う。

「中国がこれからの数十年間に直面する国内問題は経済問題あり人口問題あり環境悪化あり政府腐敗ありと、いずれも私たちがいたるところで目にしているものです。それらの解決は気が遠くなるようなものです」

中国がいかに軍事力を拡大し、勢力圏を広げても、国内問題が解決しない限り、一流国の仲間入りはできない。徐々に目覚めつつある中国国民をいつまでも共産党独裁の力だけで抑え込むことなどできないだろう。

日本は中国の内包する数々の問題解決に、なくてはならない良き隣人として、付き合っていけるはずだ。それこそが外交の力だ。

もし仮に、伊波洋一が指摘するように、辺野古への新基地建設を、南西諸島での局地的な中国との戦争を想定して米国が日本に押しつけているのだとすれば、あまりにも痛ましい話ではないか。

戦争末期には本土決戦の捨て石とされ、サンフランシスコ講和条約締結後も本土と切り離されて米国の統治が続いた苦難の歴史が思い起こされる。

沖縄への米軍駐留継続を望んだとされる昭和天皇の心情はどのようなものであっただろう。

「昭和天皇実録」によると、天皇は米軍の沖縄駐留について「25年ないし50年あるいはそれ以上の長期」を求めたと、米側報告書に記されている。

ソ連など共産勢力の伸長や、旧軍部復活への不安。そうした自らに降りかかるかもしれない危機を回避するため天皇は米軍の長期駐留を望んだという説もある。

「長い駐留を願う声は各界各層にあった。ただ米軍にすれば、そうした声は渡りに船だった」(2015年10月4日、朝日新聞)ともいう。

沖縄をこれ以上犠牲にすることはできない。国家権力に屈することなく、辺野古の基地建設を食い止めようとしている沖縄県知事、翁長雄志の闘争を支持したい。

image by: Shutterstock

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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