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もしもあなたのマンションが被災したら?逃れられない「3つの選択肢」

日本では大地震を始めとする数多くの天災が発生しています。不幸にして自分の住んでいるマンションが被災したとき、あなたのマンションではどのような対策をとるのかご存知ですか?メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者である廣田信子さんが、このテーマで開いたワークショップでの経験をもとにお話して下さいました。決して他人事ではないマンションの防災・復興についていちどきちんと考えてみませんか?

最悪をシミュレーションして気づくこと

こんにちは! 廣田信子です。

2015年最後のワークショップは、地震でマンションが大きくダメージを受けた場合における復興の合意形成がテーマでした。防災にいっしょうけんめい取り組んでいるマンションからの依頼です。

これまで、命を守って、被災後マンションで生活を継続するためのしくみは考えてきたけれど、復旧復興の方針をどのように合意形成するかということはまったく考えたことがなかったというので、今回、ワークショップの依頼を受けました。

合意形成は管理組合にしかできない重要な役割ですが、最悪の状態での合意形成について考えたことがある管理組合はほとんどないのではないかと思います。せいぜい、緊急時には総会決議をしなくても復旧工事を実施できるよう規約に定める…ぐらいの対策しか論じられていません。

私自身も復興の合意形成をテーマにしたワークショップは初めて。いきなり、ハードルが高いワークショップをどう進めるかかなり真剣に考えました。

まず、建物が壊れる住宅が機能しなくなるということをちゃんとイメージできるかが勝負なので、阪神淡路大震災東日本大震災のときの、被害認定の状況、その後の合意形成の難しさについて、かなり具体的な話をして、写真なども見てもらってから、ワークショップに入りました。

あの写真のように建物が大きく破損して、エレベーターも壊れ、復旧のめどがたっていない状況で、あなたはどうしているか…という問いかけに対しては、これまで、大地震が来ても自宅に留まるということを前提に被災後を考えてきたマンションでしたが、余震が来て、写真のように壁が崩れていたら、恐くて自宅にはいられないかもしれない…エレベーターが止まったら、うちは14階だから、長期間生活するのは無理かもしれない…と「自分ごと」として実際に被災後イメージすることができました。

で、復旧、復興には、被害状況を様々な方法で調査し、複雑な手続きについて調べ、復旧方法費用を検討するという膨大な仕事があります。そのことに関しても、初めて具体的に考えてみました。考えたことがないのは、多くの管理組合で当たり前のことです。

誰が復旧、復興の合意形成に必要な仕事をやっていますか…という問いには、始め、「理事さんたちが…」と人ごとのように思ったのが、その内容をよく知ると、とても理事さんたちだけではできない、住んでいる人総力で取り組まないとできないことだと理解し自分も積極的に関わるイメージが持てたようでした。

そこで、究極の選択というワークショップをやってみました。主要構造部の破損が大きいが、修復は可能だったとして、

  1. 修復する
  2. 解体し清算する
  3. 建替える

の3つの選択肢を、負担金額、仮住まい期間等も含め具体的に示し、どれを選択するかを話し合いました。その中で、費用負担の金額と仮住まい期間の長さから、建替えは難しいというのが共通の意見でした。

で、修復するか、解体し清算するかは、2つにわかれました。

高齢の方は、もうそうなったら、多少の清算金をもらって施設に入る、修復のためにまとまったお金を出すのも、工事期間の仮住まいもしたくない…という考え方で一致していました。たぶん、ローンも残っていないのでしょうから、それも無理からぬ選択です。

一方、まだ現役の世代は、修復するという選択をした方がほとんどでした。家族が住むところは絶対に必要ですが、二重でローンを組んで新しいマンションを購入することは難しいからとかなり具体的な話が交わされていました。

で、せっかく修復しても、被災マンションであるというレッテルが張られ市場で認められないのでは…ということについては、ある方が、被災したのに合意形成がしっかりできて立派によみがえったマンションと市場で言われるように頑張る…と。

すばらしい前向きの発言が参加者から出たのですから大成功です。

今回、しっかりワークショップを行ったことで、被災後の具体的なイメージができ、建替えは難しいという思いを共有できました。そして、修復するか、壊して清算するかは、年齢や、仮住まい、費用負担ができるかによって意見が異なることが、がわかりました。

今からそれを意識していれば、備えることができます。いざというときのためにお金が重要だから、積み立てておかなくては…というような具体的な対策についても思いが至ったようです。

さらに、建て替えが難しいということは、被災した場合に限らず、老朽化した場合でも同じだということ…だったら、いつまでこのマンションをもたせるかということも考えてみなければ…その上で、しっかり維持管理していかなければならない…と。私が意図した以上に、参加者に気づきがあり、ほんとうによかったと思いました。

今回のワークショップがうまくいったのには、2つの理由があると思います。

1つは、日頃から、マンションについて考えている参加者が多かったことです。

もう1つは、同じマンションの住人によるワークショップだったということです。いろいろなマンションの方が集まっている中でのワークショップは、それぞれが自分のマンションをイメージしますから、人の話を「自分ごと」として捉えにくいのです。今回は、みんなが自分のマンションのこととして共通の認識で臨めたのでいい成果が出ました。

こうやって、マンション内でワークショップをしてみるのは、本当に大事だと思います。ただ、勉強しただけでは、あまり意味がないのです。「自分ごと」としてどこまで具体的にイメージできるかが将来を考える場合の最も重要なポイントになります。

ぜひ、ワークショップやってみませんか。最悪を想定という荒療治もなかなかよかったですよ!

image by: Shutterstock.com

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。
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