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特別対談Part2 高城剛×石田衣良「大手出版社は思考が役人と同じ」

世界を股にかけ、幅広いメディアで活躍中の高城剛さん。最近ではノマド的生活をしていることでも注目を集め、その経験を書いた本も出版されています。そして、ベストセラー作家として多くの小説やコラムを発表し続けている石田衣良さん。近いようで遠い世界にいるお二人が、自身の視点で日本の出版業界の先行きについて語り尽くしたスペシャルトークのPart2です。お二人の有料メルマガをご購読いただいている読者限定で公開している対談を、特別に一部だけお見せします。かつて出版業界と同じ局面を迎えていた洋服業界は生き残りを賭けてどのような手段をとったのか? そして高城剛さんの考える打開策とは…?

特別対談Part1 高城剛×石田衣良「これからの出版はライブと同じ」

出版のカタストロフィは近いうちに必ずおとずれる

高城:まず、僕は新参者の作家です。だから、既存の出版業界から嫌われようが他にはできない新しい挑戦をもっとしたいし、同時にデジタル化とは逆の方向にも力を入れたいと思っているだけなんです。

石田:正直言って出版の世界は、本に代わる新しい柱が作れないという話で、みんな思考が止まるんですよね。「作家はライブとかないし、大変だよね」というところで、みんなが止まって、何も動かないのが現実なので。でも、昔はありましたよね。文藝春秋の「文化講演会」みたいに作家を何人か呼んで、日本中を巡るんですよ。で「今、東京では、何があるんだ」ということを話していたんですが、それかもしれないなぁ。

高城:ただ、渋谷公会堂の時も、大きい出版社に話を持って行ったら「何か事故が起こったらどうするんだ」って言われて。講演会で事故は起きないって(笑)。

石田:刺されない限りね(笑)。そこら辺に関しては、今の出版業界の頭の硬さというか、動きの悪さもありますよね。必ずネガティブなことを言って、前例がないと言って潰そうとするんだよね。

高城経営陣の問題のような気が、僕はしますけどね。よく「電子書籍の話を聞かせてくれ」と言われて、大きい出版社に行くと、はじめは電子書籍の担当部長が出てきて、その後は担当役員、担当常務と、どんどん位が上がって行くんですよ。それで最後に社長にお会いすると「何だ、あなたの決断の問題じゃん」というところに行き着きます。経営が新しいことをジャッジメントできない。

石田:これまで本は、基本的に刷って問屋に卸せば、あとは何もしなくても売れていたんですよね。それで「何もしないのはいいことだ」って、頭に染み付いているんですよ。思考役人と一緒で、実際には動けないんです。だから、たぶん別の人間が決定できるポジションに来るか、この状態が持ちこたえられないくらいのカタストロフィが来るまでは、何も変わらない気がしますよ。

高城:カタストロフィは、遠くないうちに間違いなく来ますよ。

石田:そうなんだよなぁ。だけど、いわゆる紙の世界で、そのことを考えて先に動いている人ってほとんどいないですよ。電子系の担当の人って、窓際でもうこの人ダメだなって人ばっかりじゃないですか。エースがまわってこないので……それが厳しいんだよなー。

高城:雑誌が広告収入依存してきてしまったというのもあるでしょうね。出版社の人間も目線が広告代理店みたいになってますからね。あと、タレント主義。とにかく、リスクを少なくするためにどうするかと考えいて……新しいことはできないですよ。

石田:そうかぁ。

高城:幸いにも、今は個人で書籍がリリースができたり、集客も含めてイベントもできたりする時代です。作家は、出版社とはちょっと距離を置きながら、リスクを取りながら自分の道を進まないと良くないと僕は思います。

石田:そうなんですけどね。紙の本から電子の版権を切り離すっていうのは、なかなか決断がいりますね。

高城:作家も出版社に依存せずに独立すべきだと僕が思ったのは、たとえば紙の本だと誰が買っているかわからないですよね。ところが電子だと大体のことはわかるんですよ。あとは意見のフィードバック蓄積できます。多くの人が望んでいるものを、価格も含めて提供できるいい時代なんですよ。

石田:意見のフィードバックって、それはどんな形ですか? 例えばメールが来る感じですか? 「こんなのが読みたいです」みたいな。

高城:極端な話、国別、地域別で、どこの人が読んでるかもわかります。

石田:地域別に形を変えたものを出すとか、そういうことじゃないですよね?

高城:いえ、紙の配本数だったら、地域によって変えるんです。僕のお客さんの少ないところには配本を少なくして、多いところは徹底的に厚くします。

石田:それは出版社と組んでやっているの?

高城:いいえ。紙の本を出す場合も、僕が自分のデータをもとに配本の指定をしているんです。「仙台の金港堂にそんなに置いても売れないからやめて」「札幌駅前の紀伊國屋ならもう少し売れるからそっちに置いて」という具合に。

石田:ちなみに、高城さんは地方で売れるんですか?

高城首都圏のほうが圧倒的です。地方だと大きい書店に置くよりは、大阪の「スタンダードブックストア」みたいな偏った書店の方が相対的に売れますね。

石田:それじゃ書店ごとの傾向も、全部把握できてるんですね。

高城:そうです。地域と置くべき書店がそれなりにわかります。ある程度の顧客の顔も見えているし。

石田:それはAmazonで本を売っていれば、誰でもできることなの?

高城:きちんと調査すればできますよ。それから広告の打ち方があるんです。

石田:へー。すごい。そんなの考えたことなかったな。

高城:僕は出版社ではなくて、デマンドサイドって言ってるんですけど、作家はデマンドサイドになれるかどうかなんですよ。ですから僕らはコンテンツを作るクリエイターであって、ホルダーであって、デマンドサイドでもあるんです。

石田:今の出版は、これまでの形態ですごく利益を享受してきたので、それを丸々飛び越えるのは、なかなか難しいんだよね。だから、まったく別な出版社と組むとか、今までのところで書き続けながら、新しいところでは別な本の書き方や売り方を考える、という風にするしかないのかもしれないなぁ。

高城:両方じゃないですか。やっぱり今は両方やらなきゃいけないんじゃないですか。

石田:でも、メルマガはその点、もう流通の経路がまったく違うじゃないですか。紙の本とは。

高城競合しないですからね。

石田:そうそう。だから独立して切り離せるんだけど、紙の本となるとなかなかむずかしいよね。そういえば、村上龍さんがやってた小説の配信はどうなんですか?

高城:詳しくはわかりませんが、あれは広告モデルでやっているように見えます。実際はともかく、そう見えてしまっているのがポイント。

石田:デジタルで雑誌を作って代理店をかませたってパターンなんですかね。今、高城さんが話していた配本まで、こちらで指定するというやり方とは全然違いますね。

高城:僕は、読者に近くなりたいと思ってるだけですので、そうしています。

石田:それって、日本でやってる人ってどれくらいいます?

高城:ほかの作家の方々とはまったくお会いしてないので、わからないですね。僕は大手出版社からの紙の本も、可能な限り配本指定します。僕の方がお客さん知ってるじゃないですか。だって僕のお客さんだもん。

石田:ああ、確かにね。僕は自分のお客さんのこと知らないなぁ。

高城:それは問題じゃないですかね。書き手としても。

石田:そこが、さっきの危ないパターンですよ。サイン会でたくさんの読者に会ってはいるけど、本当のところはわかんないもんなぁ。

高城:僕は書きたいものを自分で書いてるけど、それを届ける時にはやっぱり求めている人にきちんと届けたいんですよ、価格も含めて。だから、僕の本を買ってくれる人たちの服やカメラの好みまで、それなりに理解しているつもりです。その人たちのライフスタイルの一辺に、僕のメルマガや本があるわけですから。

石田:そっかぁ。でも、それを考えている人は、日本の作家では、まずいないですね。やっぱり作家も出版社と一緒で、書いて放り出しモデルなんですよね。小説の場合はリアクションはもう読めないので。

高城洋服業界もかつてはそうだったんです。ファッションデザイナーがいて、大手に洋服デザインを供給して、それを百貨店に卸していました。それがここ10年強で、SPA製造小売)という形態になりました。つまり自分達で工場生産して、自分達の店で直接売る。その工場では、店舗でお客さんと会ったデータが、瞬時に工場に戻っているわけですよね。お客さんがこんなものを求めていると。すると最短半月で店頭に出ます。このサイクルで「ユニクロ」も「ZARA」も伸びていったわけで、出版業界SPAモデルになれば、抜本的に変わると思いますよ。

石田:うわー、なるかなー。でもそのサイクルって2年とか3年じゃだめですか(笑)。

高城:ダメだと思いますね。

石田:そんなに速く書けないよー(笑)。

高城:いやいや、メールマガジン電子ってそういうものですよ。

石田メルマガはできますね。

高城:そうですよね。だからそういうのが、出版社の基本にならないと、今みたいに3か月前の情報を紙で印刷して、月1回で出すみたいなモデルはいつまでもあり得ないですよね。

石田:そっかぁ。でもそうなんだよな。どこかでそういうものがひとつあったうえで、今までの小説みたいなのがあるというパターンにならないといけないですね。要はそれってライブCDの関係ですもんね?

高城:ある意味、そうですね。

石田:その両輪が回らないと、持ちこたえられない話ですよね。

高城:実際はもっと多様化していくと思いますけどね。僕は、「売らない本」を出そうとも考えてるくらいだから、出版社と今後深く付き合うのは難しくなってくるでしょうね。

……と、まだまだ続くこの対談の全文は石田衣良さん、高城剛さんの有料メルマガをご登録いただき、1月のバックナンバーを購入すれば読むことが可能です。この機会にぜひ、ご登録ください。この対談は、Part3に続きますので、どうぞお楽しみに。

 

 

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