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遂に中国に「ノー」を突き付けた台湾。蔡英文勝利が意味するもの

先日の台湾総統選挙で蔡英文氏が大勝利を収め、初の女性総統が誕生しようとしています。親中派とされた現職の馬英九氏に対し、蔡英文氏は台湾独立志向の親米・親日家と言われており、若者を中心に絶大な支持を受けて当選しました。これを受けて、今後日本の対台湾政策はどのように変わっていくのでしょうか。そして、台湾独立の現実味は? 無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者、北野幸伯さんが鋭い意見を述べています。

台湾総統選、蔡英文勝利の世界史的意味

皆さんご存知のように、台湾で16日、総統選挙がありました。

蔡英文主席、地滑り的勝利…台湾総統選まとめ

読売新聞1月17日(日)20時39分配信

 

【台北=比嘉清太】16日の台湾総統選で初当選を果たした最大野党・民進党の蔡英文(ツァイインウェン)主席は、得票数、得票率ともに同党候補で過去最高で地滑り的な勝利を収めていたことが、台湾・中央選挙委員会のまとめからわかった。

 

台北市では民進党総統候補者として初めて得票率が5割を上回った。

 

今回の総統選で蔡氏は、民進党が地盤とする南部だけでなく、国民党の地盤だった北部でも朱立倫(ジューリールン)氏の得票数を上回った。

 

最終的に22の自治体のうち、一部の離島などを除く18自治体で勝利を収めた。

今回は、蔡英文さん勝利の「世界史的意味」を考えます。

蔡英文さんとは?

まず、蔡英文さんについて知っておきましょう。

1956年8月31日生まれ。現在、59歳。台湾大学法学部卒業後、渡米。コーネル大学で法学修士を取得。その後イギリス、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士。帰国後、国立政治大学、東呉大学の教授。

なんか、メチャクチャ才女のエリートですね。

李登輝さんが総統だった1990年代、蔡英文さんは、経済部・国際経済組織首席法律顧問、経済部貿易調査委員会委員、行政院大陸委員会委員、行政院公平交易委員会委員などを歴任。30代半ばから40代半ばにかけて、すでに政策に深く関わっていたのですね。

さて、李登輝さんは国民党ですが、2000年には、民進党政権が誕生します。蔡英文さんは、台中関係の政策を担当する行政院大陸委員会・主任委員に就任。04年、民進党から立法委員(=議会)選挙に出馬して当選。06年1月から07年5月まで行政院副院長(=副首相)。10年前には、すでに行政院副院長(=副首相)をされていたのですね。

民進党が再び野党になった08年、同党12代主席に就任。2012年、再選を目指す国民党の現職・馬英九さんと台湾総統選を戦い、敗北。この結果をうけ、党主席を辞任。しかし2014年、党主席に返り咲く。2016年1月16日、台湾総統選で勝利。今年5月、初の女性総統になる予定。

次期総統になる民進党蔡英文さんと、現職の国民党馬英九さん、最大の違いはなんでしょうか? そう、「中国に対する姿勢」が違うのですね。馬さんは、あまりにも急速に中国に接近していった。「このままでは、中国に併合されちゃうよ!」という危機感が台湾人の中に形成されていった。

1月16日に行われた台湾総統選挙の結果、野党・民進党の蔡英文主席が圧勝、総統就任式が行われる5月20日に台湾の政権交代が実現する。

 

選挙戦最大の争点は、中台関係-台湾は中国とどう向き合うべきか-だったが、台湾は有権者の総意として、馬英九現政権の急速な対中接近路線に「ノー」を突き付けたわけだ。
(時事通信1月19日)

「馬英九現政権の急速な対中接近路線に『ノー』を突き付けた」

これが、台湾総統選、最大のポイントですね。

変わる流れ

ソ連崩壊で冷戦が終結した1991年末から2008年までを、「アメリカ一極時代」と呼びます。「100年に1度の大不況」が起こった08年から、世界は「米中二極時代」に突入しました。しかし、「二極」時代の中身を見れば、沈むアメリカ昇る中国という関係。

ところが、2015年3月から流れが変わってきます。日本以外の親米諸国がすべて裏切った「AIIB事件」で、アメリカは「真の敵がどこにいるか?」をはっきり悟った。

以後、アメリカは、ロシアと和解し「ウクライナ問題」を事実上解決。シリア、IS問題を他の大国に任せ、イラン制裁を解除した。年初に起こったサウジとイランの「国交断絶問題」に関しても、「仲介するつもりはない!」と宣言している。つまり、アメリカは、中東からはっきり距離をおきつつある

欧州と中東の問題に大方ケリをつけたアメリカは、アジア問題に集中するようになった。去年12月、日韓慰安婦合意を行わせ、「中国の属国状態」にあった韓国を中国からひきはがした。そして、今回、台湾で相対的に「反中」「親米親日の総統が誕生する。「AIIB事件」で世界的に孤立したアメリカは、韓国を取り戻し、台湾を取り戻しつつある。

そして、「中国からアメリカへ」の流れを加速させているのが、中国経済がボロボロになってきたこと。中国政府によると2015年、中国のGDPは、6.9%の成長だったそうです。しかし、この数字を信じている人は誰もいません。なんといっても中国の貿易総額は2015年、前年比で8%減少。輸出は、2.8%減輸入にいたっては、14.1%も減った。

中国政府、GDPについては、いくらでもウソをつけます。しかし、輸出入に関しては、「相手国」がいるので、ウソがつけない。貿易額が8%、輸入が14%減った国のGDPが、「6.9%成長」なんて、ありえないですね。

金の切れ目が縁の切れ目

去年まで中国に「へ~こら」していた世界中の国々も、今年から徐々に態度が変わっていくことでしょう。

馬政権時代、世界もアメリカも日本も、そして台湾人自身も、「台湾独立なんて非現実的すぎる」と考えていた。しかし、風は変わってきています。ソ連が崩壊して、15の共和国が独立をはたした。同じように、中国共産党政権が崩壊する事態になれば、台湾独立も現実味が出てくることでしょう。

しかし、それはまだ先の話。

「独立云々」は抜きにしても、日本は、誕生する蔡英文政権を全力でサポートするべきです。特に経済面のサポートが大事です。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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