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「石油はあと30年でなくなる」を最近聞かないワケ

日本が経済発展するために欠かせない地下資源。「資源がなくなるから経済発展はそこそこにしよう」という声に対し、中部大学の武田邦彦教授は、自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、それは錯覚であると指摘。そして、実際に石油などの地下資源が枯渇する可能性はあるのか、詳しく解説しています。

日本経済発展のための第二の前提「地下資源の枯渇」

前回、これから日本が経済発展をするうえでの第一前提である「私たちは十分に豊かか」ということを考えてみました。最近ではしばしば「私は十分に豊かだから経済発展などしなくてもよい」という人がおられるからです。でも、先回整理したように私たちは平均的に1年で2500万円ぐらいの所得が必要で、日本ではそれはたったの1万人に8人しかいないことがわかりました。

つまり、簡単に言うと私たちはまだまだ貧乏なのです。

そして今回は第二の前提、「豊かにはなりたいけれど、資源がない。環境が悪くなる」とされることに真偽を確かめておきたいと思います。多くの経済学者は「資源や環境のことはわからない」ので悲観的になり、「どうも資源も枯渇するし、環境も悪くなるらしい。だから経済発展はそこそこにしなければ」と錯覚している人が多いからです。

まず第一に石油などの地下資源が枯渇する可能性があるかどうかを整理します。

よく「地下に埋まっているものは有限だ。有限なものを使っていくのだからそのうちなくなる」という考えが述べられますが、これはあまりにも荒すぎでなんの情報も与えません。たとえば、1年に100万円の貯金を下ろす人がいて、貯金が1000万円なら10年で貯金がなくなってしまいますが、貯金が10億円あるとなくなるまで1000年もかかります。だから、「地下にあるからなくなる」のではなく「どのぐらいあるか」が問題です。

この計算はかなり簡単で石油や鉄鉱石は生物の活動の中で生まれてきているので、これまで誕生した生物の数から計算するのですが、現在の人間が消費する資源量からいえば、石油も鉄鉱石も短くても1万年以上あります。ここでは詳細な計算は示しませんが、単なる資源計算で行うと石油はこれから600万年から2000万年ほどあるということになります。

どうしてこんなにあるかというと、人間の活動というのは自然の量と比べると比較にならないほど小さいからです。

地上に生存していた生物は6億年ほど前からほとんど同じ数です。人間ぐらいの大きさに換算すると、300億人ぐらいだったと考えられます。そして一般の生物に比べて人間は50倍ぐらいの資源を消費するといわれていますから、300億人÷50=6億匹ぐらいと考えられます。この6億匹のうち、1万分の1ぐらいが地下に潜ったりして石油や鉄鉱石を作り出したので、人間の資源消費に換算して36兆匹分が地下に存在します。

現在の人間が60億人ですから、どんどん使ってなくなるのは6000年以上先ということがわかります。

この計算はあまりにおおざっぱですが、いずれにしても「すぐなくなる」という話ではないことがわかります。

image by: Shutterstock

 

武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』より一部抜粋

東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。
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