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北海道新幹線って、なぜ特急券が高いの?

開業まですぐそこに迫っている、いま話題の北海道新幹線。しかし、この特急券は意外と高めの価格設定になっています。この件について、無料メルマガ「客車隊報」の発行者であり、「海峡同盟」で代表を務める中尾一樹さんが詳しく解説しています。なぜ、北海道新幹線の特急券は高くなってしまったのでしょうか?

北海道新幹線の特急券はなぜ高いのか?

新聞やテレビなどのニュースではとにかく「高い!」と紹介されている北海道新幹線。

では、なぜそんなに高いのでしょうか?

まずはJR北海道の社長さんに聞いてみました…って、うそうそ。

でも直接この耳で聞いてきたのであながちうそでもないかも?

つかお前なぜ直接聞いてきたの?

インタビューでもしたの?? 

…いえいえ。

昨年11月に函館で開かれた運輸審議会公聴会の席上で、私の2mくらい前で社長自ら説明していた内容ですから間違いはないでしょう(汗)

そのJR北海道社長いわく「北海道新幹線は青函トンネルを貨物列車と共有するため、余計にかかる経費がある。またJR北海道の区間はわずか(148.8km)しかないが、短くても必要な設備を維持する経費がかかってしまうため高めの設定となった」とのことでした。(筆者注:発言要旨ゆえ、若干意訳・短縮してあります)

では、その発言内容は真実なのか?

おおまかに言えば真実ですが、若干誇張されている部分もあります。

たとえば今回の開業時点で「必要な設備」に車両を検査する工場が必要なの?という点です。

今回JR北海道が保有する新幹線車両(H5系)はわずか4編成

残りはすべてJR東日本の車両が乗り入れてきます。

なので、北海道新幹線に乗っても、実は東北新幹線のE5系車両である確率のほうが高くなります。

昨年4月時点でE5系は28編成あり、さらに増加していますので、H5系に遭遇できる確率は十分の一くらいでしょうか。

その程度なら車両の大規模検査をJR東日本に委託すれば、車両工場を維持する巨額な経費は浮いたはずです。

ほかにも「それは違うだろ~?」と思う内容がいくつかありましたが、あいにく運輸審議会公聴会の式次第では公述人から質疑をする機会はありませんでした。

そして最大の課題は特急料金の加算」です。

たとえば東海道新幹線の東京駅から山陽新幹線の博多まで乗り通しても、東海道(JR東海)と山陽(JR西日本)の境目である新大阪駅で特急券が急に高くなることはありません。

しかし同じように直通運転が実施されている山陽新幹線の新大阪駅から九州新幹線の鹿児島中央駅まで乗った場合、山陽(JR西日本)と九州(JR九州)の境目である博多駅で特急料金が加算」されます。

かの妙なルールが今回の高額な料金となってしまった最大の原因です。

特急料金の加算の理由

では、なぜこんな妙なルールが認められているのか?

その理由とされている事象を以下に記します。 

その1「東北新幹線と上越新幹線ですでにやっている」

東京に住んでいるとわかりにくいのですが、たとえば仙台から大宮経由で新潟へ行く場合、東北新幹線と上越新幹線の境目である大宮駅で特急料金が「加算」されます。

これは国鉄時代からのルールであり、国鉄を分割民営化したJR東日本でも踏襲されております。

しかしその後開通した北陸新幹線(開業時点では長野新幹線と呼ばれてましたが)は料金を通し計算しており、いまいち根拠が謎です。

いっぽう同じ北陸新幹線の金沢開業時点ではJR西日本とJR東日本の境目である上越妙高駅を超えると特急料金が高くなります

これは単純加算ではなく、加算した額から若干割り引いた価格を設定しておりますが、高くなること自体は変わらず、東京~金沢(450.5km、14,120円)は東京~米原(445.9km、12,400円)に相当する距離なのに、実際には東京~新大阪(552.6km、14,140円)に相当する運賃・料金がかかってしまっています。

その2「会社またがりの料金についてはルールがない」

鉄道には「運賃」と「料金」のルールがあり、新幹線に乗る場合は運賃+特急料金」を支払わねばなりません。

上記の金額も運賃と指定席特急料金(通常期)を合計した額であり、一般的に新幹線の「料金」は?と聞かれた場合、この合計額を教えるのが世間の常識(らしい)です。

ではこの運賃と料金、だれがどうやって決めるのでしょうか?

かなり大まかにいえば、運賃は運輸審議会で、料金は鉄道会社で決められます。

しかし新幹線の特急料金だけは公共性が高いため、運賃と同様に国土交通省の認可(=運輸審議会の答申)が必要となります。

そのためJRになってから新幹線を作った会社については既存のルールではなく「新しいルール」が妥当かどうかを運輸審議会で審議し、その結果を元に国土交通省が認可することになっていますが、問題はこの認可基準が「会社単位」であるということです。

つまり会社をまたがった場合の料金をどうするかについては明確なルールがなくぶっちゃけ鉄道会社(この場合JR)のいいなりになっているのが実情です。 

1987年以降に開業した新幹線は基本的にJR東日本の範囲内にあったため、既存の東日本ルール(料金タリフの意)が適用されており、新規の「料金」設定が発生することはありませんでした。

2004年に九州新幹線が開業する時、九州新幹線のための新しい料金ルールが設定されましたが、この時点では山陽新幹線とつながっていなかったため、単に「ちょっと高いぞ」で済んでおりました。

しかし、2011年に博多で山陽新幹線につながる際、なんと会社またがりのルール(法令など)がないことや、九州ルール自体は2004年に設定されているため運輸審議会の公聴会は開かれず、誰一人文句が言えないまま「会社がかわれば加算する」という新しいルールができてしまいました。

その結果、北陸新幹線金沢開業も、今回の北海道新幹線も新しいルール…。

いや、JRが勝手に決めていいというルールに基づき境目の駅で特急料金が加算されるという事態になってしまいました。 

今回開業する北海道新幹線は東京から新函館北斗まではキロ数にして862.5km運賃と特急料金の合計は22,690円となります。

かりに東海道新幹線で同じ位の距離となる東京から東広島まではキロ数にして862.4km運賃と特急料金の合計は18,240円ですから、単純に考えた場合東海道新幹線より4,450円も高いと言えます。

実際問題としては仮に通しで計算しても東京駅加算(210円)や、東海道新幹線と東北新幹線では計算ルールの違いがあるので単純比較できませんが、それでも高いということはかわりません

先述の公聴会でも、私を含めた公述人3人が3人ともこの問題に触れていましたが、なぜか運輸審議会でもマスコミでもこの問題は取り上げられず、私をインタビューした某テレビ局は本筋と無関係なコメントだけをわざわざ編集して流してました。

これはたぶん審議会の委員もマスコミも「会社またがり」という概念がなかったためこのような結果になってしまったと推定されますが、本日現在までこの問題を取り上げたネットニュースすらないというのは情けない限りです。

なお、地元の北海道新聞が「お得に乗ろう!北海道新幹線」という連載記事を掲載しています。

本当はここで安いきっぷを紹介する予定でしたが、そちらの記事を読んで頂いた方が早そうなので、ここでは割愛させて頂きます。 

さて、これだけ料金が高い高いと書きましたが、幸いなことに北海道新幹線一番列車の指定券は発売開始からわずか25~30秒で完売しました。

でも私が勤務する旅行会社では、今からでも北海道新幹線の一番列車に乗れるツアーを発売しております。

既に満室状態な函館駅前のホテルもセットされておりますので、皆様のご利用をお待ち致しております。

ツアー詳細はこちらから。

Image by: Shutterstock

Source by: 客車隊報

客車隊報

著者/中尾一樹(海峡同盟 代表)
青春18きっぷやクルーズ列車等の情報を中心としたメルマガを配信中。旅行サークル「海峡同盟」では青春18きっぷで北海道に行けなくなる可能性が発生したことをきっかけに2001年に結成。最近は海峡特例を守ることを目的として、国土交通省・運輸審議会が主催する公聴会に参加し公述人として意見するなど活動を行っている。

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