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【高城剛】米国のAIIB不参加は確信犯。どこかのタイミングで必ず日本を裏切る

中国主導の国際金融機関AIIB。報じられている通り日本は参加を表明していませんが、その是非を巡り未だに様々な意見が飛び交っています。そんな中、高城さんは「米国は英国のAIIB参加を事前に知っていた。日本は米国の芝居に騙されていると考えることも必要」と説いてます。

AIIBを外交カードに使うのならどのような方法が最も有効?

Question

先月のAIIBに関する読者の方のご質問は今の日本国内の保守論陣の主張の大部分が包括的に集約されたもので私自身はほぼ同意できる内容でした。高城さんがどうお答えになるのかとても興味深かったです。

そして回答の中で特に「近年富を築いた国家、企業の多くはチャイナマネーをうまく利用しており新しいマーケットへの投資とセットになっているAIIB投資のチャンスを逃すのは勿体無い」と仰られた部分が印象的でした。

私は反原発論者ではありませんが、それでも中国の危険過ぎる原発が東南アジアに乱立するのを助長する様な投資を日本がする理由は無いと思います。

そしてこれは今だに為替操作されていて流通量の25%以上が偽札と言われる元の基軸通貨化を目論む戦略の第一歩にもなり得る試みです。そもそも中国共産党幹部の独断で投資先を決定する機関に加盟しても日本政府が得るものは何もないと思います。

また「儲けるためにはチャイナマネーくらいうまく利用すべき」と高城さんが仰っている事にはかなり驚きました。

私は最早AIIBに参加するかどうかをうやむやにして永遠に引き延ばして様々な譲歩を引き出す事が日本にとっては中国はおろかアメリカに対しても外交カードとして強力な意味を持っている様に思えます。

AIIBを利用するというのであれば、中国のこの弱みを徹底的につく事が最も有効だと考えますが高城さんは如何お考えになりますでしょうか?

高城剛さんの回答

今週は、中国を封じ込める上でAIIBを考えて見ることにしましょう。

もし、AIIBがうまくいかないだろう、と思うなら、是が非でも参加するべきだと僕は考えています。なにしろ、AIIBを通じて取りっぱぐれた日本から捻出した資金は、英国やドイツと共に公的に取り返すと国際社会に主張できるからです。かつて中国は日本と国交回復するときに、「第二次世界大戦時の損害賠償の請求を一切放棄する」といったのに関わらず、日本の保守政権は多額の援助を続けてきました。

円借款だけで3兆円以上あります。そのほかにも無償協力が何千億円という規模でありますが、事実上取りかえせない債券になっているものも多くあるのです。ですので、AIIBの失敗を機に、いままで大声で言えなかった中国への援助金の大きさを国際社会に問うことができるチャンスでもあるわけです。

表面化しているだけでも3兆円超で、多国間援助を入れると6兆円超ですよ! その上、対中政府貸付は、いまも年々増え続けているんです。これを、中国人も日本人もあまり知りません。すなわち、AIIBは出資額や為替操作や偽札の問題ではないのです。もはや多大なる資金を日本は中国に捻出し、いまも続いています。

一方、AIIBがうまくいったら、その際には富の配分を英国やドイツと共に公的に主張することが可能です。AIIBそのものはタブついた中国内の余力をアジア全般に広めることなのでしょうが、東南アジア諸国は、もう中国とベッタリインフラ開発をやることをすでに決定しており、日本は「遅かった」ので、入り込む余地がほとんどありません。AIIBより、この東南アジアに対して「遅かった」ことは、別の大きな問題だと個人的には思っています。

>>次ページ アメリカの本当の狙いとは?

米国は、東南アジアとは物理的な距離があり、インフラ事業はそこまで美味しいものではなく、むしろ、インフラ整備が終わった後に関心があるはずです。なぜなら、東南アジアのインフラ事業でモノいうのは「賄賂」であり、他国での「賄賂」行為は米国では違法ですが、中国は違法ではありません。ちなみに、日本ではグレーです。

ですので、中国でも日本でもどこでもいいのでインフラ整備をとっとと整えて、その後、自動車やソフトウエア、サービス、医療に代表される米国企業製品を流し込むことが本当の狙いで(さらに金融と保険など)、どこかのタイミングで米国は必ず日本を裏切ります。それは歴史を見ても明らかなのです。おそらくですが、僕は米国は英国がAIIBに参加することを「事前に知っていた」と思っています。どう考えても、知らないわけがありません。もうすでに、米国の「芝居」に騙されていると考えることも必要です。でも残念ながら「本社」にモノを言える「支社長」は、日本に見当たりません。

また、参加不参加の二極論に陥ってはいけませんし、「ほら、見たことか」とAIIBの失敗を待つ(人の失敗を心待ちにするような国)だけになってはいけません。参加しながら、さらに優位に立てる可能性も考える必要があります。そうしないと、気がつかないうちに自分が変化を拒んでいることなってしまい、二極論に陥ってしまいます。AIIBに不参加したい人たちや、憲法改正したい人たちは、多くの人を二極論に陥いらせることが作戦なのです。ですので、目的が中国に対する牽制や、日本が国際的に中国に対して優位に立つことであるならば、その可能性を持ってAIIBに参加することを検討すべきだと僕は思うのです。しかし、目的が米国の意向に沿うことや、(空気いれられた)プライドのようなものであれば、その限りではありません。

ちなみに、(大型旧式の)原発輸出は安倍政権最大のビジネスで成果も着々と出ています。皆さんから預かった税金を他国への営業補助金として使って。そこには、反原発論者の税金も含まれており、実に皮肉な話です。

image by: Wikimedia Commons

 『高城未来研究所「Future Report」』
著者:高城 剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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