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行間を読み取れ。新聞主要各紙のトップ記事を内田誠がぶった斬り!

まさか新聞に書いてあること、すべて鵜呑みにしている人は少ないとは思いますが、その裏の文脈を、しかも主要4紙すべてについてガッツリ読み込もうというのはさすがに厳しいですよね。そんな時におすすめなのが『uttiiの電子版ウォッチ』。「吉田照美ソコダイジナトコ」や「スーパーニュース・アンカー」でもお馴染み、ジャーナリストのウッチーこと内田誠さんが各紙のトップ記事を深ーく掘り下げ月曜~土曜日まで週6で配信しています。今日ご紹介するのは4紙中の朝日・読売。さっそくどうぞ!

学校における義務教育の挽歌、なのか?

【朝日】の1面トップは「学校外で義務教育 容認案」「フリースクールや家庭学習」。超党派の国会議員(自民・民主・維新・公明・共産など)がまとめた「多様な教育機会確保法案」。27日に案を固め、今国会での提案を目指すという。氏岡真弓編集委員の解説がついていて、この話がフリースクールの位置づけを検討せよとの教育再生実行会議提案に発すること、文科省も検討会議で議論を始めていること、法案は、一定水準の教育を子どもに受けさせれば保護者は義務を果たしたことと見なす制度を指向していることなど。教育の質をどう確保するのかなど課題も多いと指摘している。

uttiiの眼

文科省の官僚にとって、「学校における義務教育」は長く、いわば官僚としてのアイデンティティーの源泉だった。そこを揺さぶり続けてきたのは、もちろん12万人を超える不登校の小中学生という存在だ。今度の法案が、この問題の根本的な解決につながるものなのか否か、注視したいと思う。

私はかつて「風の子学園事件」(91年)をきっかけにこの問題の取材をしたことがあったが、子どもたちを苦しめていたのは、学校に行けない自分を否定する感情、甚だしい場合は、「駄目な自分を自分で罰しなければならない」といった感情だった。かえって不登校の子どもの方が「学校に行かなければならない」という義務感を強く抱いているという逆説が成り立っていた。ある少年の、「誰か自分を殺してくれないか」と思い続けていたという告白を忘れることが出来ない。「学校イデオロギー」はそれほどまでに強固で、官僚の頭の中はもちろん、不登校の子どもたちやその親たち、地域社会までが取り込まれ、そのために様々な悲劇が生まれた。

学校外の学びの場、「居場所」としてのフリースクールも例外ではない。素晴らしい取り組みをしているところも多いが、なかには子どもたちの「登校拒否」を治療の対象とし、精神主義に由来する暴力行為の対象としたりする例も現れた。二人の子どもをコンテナに監禁して衰弱死させた「風の子学園事件」はその典型だった。20年前くらいから教育委員会主導で始められた「適応指導教室」(ひどい名前だ!)も、結局は「学校イデオロギー」を補完するだけで、子どもと親の精神の解放にはつながらなかった。今度の法案も、「学校外の学びの場」をどう位置づけるのか、まさしくその点をこそ、見極めたいと思う。官僚の「義務教育幻想」の上に、不登校の子どもたちを「異常」と位置づけるようなものであっては何の意味もない。学びの場の選択は本来自由だ、というところまで到達している法案なのかどうか、そこが最も重要な点だが、記事と解説はそこには答えてくれていない。

>>次ページ 読売新聞のトップ記事に唖然

原発事故がなかったらなあ…

【読売】の1面トップは、東芝の不適切会計についてで、「利益水増し 2事業400億円」。今現在、営業利益の水増しが疑われている500億円のうち、スマートメーターとETCの2つの事業に関わる分が全体の8割、400億円に上ることが分かったとの記事。東芝にとって、主力の原子力事業の先行きが不透明になり、上記2つの新規事業での収益拡大を急いでいたため、コストが増えても決算に反映させなかったということらしい。関連記事が9面にあり、「多角化」の難しさという観点で今回の不適切会計の背景を探っている。

uttiiの眼

東芝にとって原子力事業がいかに重要な部分を占めていたのかが分かる。営利企業としては、当てに出来なくなった原子力に見切りを付け、新たな収益分野を開拓する当然の行動の中で、会社上層部の期待の大きさを忖度して決算を誤魔化そうとしたということなのだろう。「新規事業分野、しっかり儲かっています!」と嘘をついた

しかし、「主力の原子力事業」という言い方、《読売》が言っているので本当なのだろうが(笑)、それ自体、衝撃的なことだ。9面の関連記事には、多角化の試みが不適切会計につながっていく経過が書かれている。福島第一原発の事故以前、2015年度に原子力事業で売り上げ、実に1兆円を目指していたのだそうで、落ち込みを埋め合わせるべく手を出した慣れない新規事業で工期が遅れるなど、コストが大幅に増えてしまったことが原因なのだという。可哀想な東芝…。何の罪もない東芝にこんな苦労をさせるなんて…。という《読売》の声が聞こえてくるような気が(笑)。やはり原子力事業の再活性化、なかでも原発再稼働こそが、東芝を含む総てを癒やしてくれるということなのだろう。ああ馬鹿馬鹿しい。

 

続きでは以下の毎日新聞、東京新聞の一面も解説しています。

【毎日新聞トップ】日中関係が良かったらどれだけ大勢来ていたことか…

【東京新聞トップ】「屋根なし五輪」決定

 

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『uttiiの電子版ウォッチ』2015/5/20号より一部抜粋

【2015/5/20号の目次】
■はじめに
・松野頼久氏が維新の党代表の座についたことで、ちょっと面白いことが起きるかも
■フラッシュ・ニュース
・維新、代表に松野氏、幹事長に柿沢氏
・米国防総省「日本でのオスプレイ運用変更の計画ない」
・安保法制特別委設置を議決、野党は名簿提出拒否
・都知事会見、500億円要請で国を批判
・日馬富士、臥牙丸にも金星献上
■【朝日新聞トップ】学校における義務教育の挽歌、なのか?
■【読売新聞トップ】原発事故がなかったらなあ…
■【毎日新聞トップ】日中関係が良かったらどれだけ大勢来ていたことか…
■【東京新聞トップ】「屋根なし五輪」決定

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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