板挟みの安倍総理。オバマ大統領が辺野古工事中断に不快感

 

米大統領が代わるとどうなる?

これにさらに米国の政権交代という事情が重なる。米大統領選で仮に孤立主義者のトランプが勝つようなことになれば、日米安保体制そのものが大混乱に陥る。彼は「貧しい米国が豊かな同盟国を守ってやっているのはおかしい」という主張で、日本に対しても日米安保条約について再交渉し、今まで通りに米軍に駐留してほしいのなら費用を全額負担しろ、それがイヤなら米軍は引き上げる、後は核武装でも何でもして自分で守れ、と言ってくるだろう。核武装はご免だが、少なくとも海兵隊を日本から引き揚げさせるチャンスは生まれるのではないか。

クリントンになれば、オバマ政権の対日政策を基本的に引き継ぐだろうが、彼女を取り巻く民主党系の外交政策エスタブリッシュメントの間では、辺野古断念論や海兵隊撤退論が強まっている。アジア戦略の専門家であるジョゼフ・ナイ元国防次官補は、2年前から「普天間の辺野古移設は長期的な解決にはならない。中国のミサイル能力の向上で沖縄に部隊を集中させておくこと自体が危険だ」と主張している。またクリントン政権の国務長官になる可能性があるカート・キャンベル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)も、だいぶ前から「当初合意の96年当時と状況は大きく変わった。辺野古移設は政治的にも予算的にも、さらに環境破壊という観点からも、もはやコストが大きすぎて実状に合わない」と公言している。ナイもキャンベルも辺野古移設のSACO合意をとりまとめた米側の中心人物であり、その2人が揃って辺野古は唯一の選択肢ではないないと言い出している意味は大きい。

どちらに転んでも、米国の政権交代で辺野古建設中止海兵隊の国外撤退を交渉する余地は、今までよりも遙かに大きくなると見るべきだろう。従って、上述『選択』記事の見出しのように、辺野古断念なら普天間永久固定化と決め込む必要は全くない。オバマ政権下での米軍のアジア再配置計画は戦略論的に曖昧であるが故に、既得権益にしがみつく守旧的な軍部を押さえ込めずに中途半端で意味不明なものに陥ってきた。トランプならもちろんクリントンであっても、漠然たる「中国脅威論」に立って冷戦時代と同様の米兵力をアジア前線に張り付けておくことの意味を根本的に問い直さざるを得なくなるのは必至で、それまでの間、沖縄県民としては辺野古工事再開をストップさせたまま普天間早期返還の圧力を強めていくことが必要になる。

そうすると、安倍はますます板挟み状態となって、米国の守旧派の側に身を寄せる売国奴として辺野古建設を血を流してでも強行するのか、沖縄県民の側に立って「オールジャパン」を代表する真の日本首相として米国と再交渉するのか──の二者択一を迫られることになる

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