日米韓vs北朝鮮・中国?
さて、ワシントンでは3月31日、日米首脳会談に先立って2年ぶりに日米韓3国首脳会談が開かれ、北朝鮮の核・ミサイル開発を「重大な脅威」と位置づけて軍事圧力と経済制裁を強めていくことを確認した。日韓が慰安婦問題でいがみ合うのを止めて対北朝鮮で結束せよというのはオバマの安倍に対する至上命令で、安倍はそれに従わざるを得なかった。
しかし安倍の本音は日米韓の安保協力によって対北朝鮮のみならず対中国の軍事圧力を強めることにある。会談では、中国の東シナ海・南シナ海への進出についても議論され、「かなりの部分で問題意識が一致した」と外務省筋は語ったが、実態は違っていて、
- 韓国はそもそもからして「中国脅威論」とは無縁である
- 米国は南シナ海は重視するが、東シナ海問題にはさして関心がなく、ましてや尖閣の岩礁を巡って中国と戦争する気など毛頭ない
- ところが安倍の最大関心事は尖閣で、そこがヒートした場合に米軍に出動して貰いたいがために苦心惨憺、安保法制まで作って「米軍と肩を並べて戦う自衛隊」をアピールしたことを米国から評価してほしい
──という同床異夢状態にある。
南シナ海を巡る米中の確執は、中国が海南島を基地とする戦略原潜に米本土を攻撃可能な長距離核ミサイルを配備しつつあるのに対して、米軍が空中・洋上からのあからさまな偵察行動を展開し、それを牽制するために中国が島々の軍事建設を急いでいるという問題であって、「中国がどこまでも領土・領海を拡張しようとする膨張主義的侵略行動に出てきた」とかいう大仰な話ではない。米中関係の基調は、米ボーイング社が今年、海外初の旅客機組立工場を中国に開設することが象徴するように、濃密な経済関係をベースとした協調にあり、それはそれとして南シナ海の軍事偵察ゲームには鎬を削るという、言わば大人の関係にある。「中国が尖閣を手始めに島伝いに沖縄に攻めてくる」というような安倍の冷戦思考は、米中首脳からすれば子供じみて映っている。