短い待ち時間で手軽にステーキが食べられる人気の立ち食いステーキ店「いきなり!ステーキ」。その躍進の秘密はどこにあるのでしょうか。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、図表を用いたわかりやすい分析・解説がなされています。
他社(競合以外)から学ぶ姿勢
今回は「立ち食いステーキ」で躍進している企業を分析します。
●いきなり!ステーキ(ペッパーフードサービスが展開するステーキ屋)
戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):立ち食いステーキ屋
- 競合(お客様の選択肢):ステーキ屋、ステーキを扱うレストラン など
- 状況:ここ数年は、「ステーキブーム」「赤身ブーム」が到来しているともいわれており、追い風が吹いている状況のようです。
■強み
1.本格的なステーキを手軽に食べられる(圧倒的な安さ)
- 厚切りビッグサイズの炭火焼きステーキ
- リーズナブルな価格で大きなステーキ肉を食べられる
- 上質な肉を安く食べられる
2.待ち時間が短い
- 肉をカットし、焼いて提供するまでに5分程度
- 手早くボリュームのある肉料理が食べられる
⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★ステーキ店運営ノウハウと少ない従業員でも店を回せる仕組み
- 東証マザーズ上場のペッパーランチグループであり、本格ステーキ店「ステーキくに」を展開しています。
- 従業員の教育制度としてステーキマイスター制度があります。
- 扱う食材を徹底的に絞り込むことで調理工程を簡素化(これは廃棄ロス削減にも貢献しています)。
- 従業員は、ピーク時でも5~6人程度で運営しています。
上記のように上質な肉へのこだわりと徹底的にムダを省く仕組みがあるからこそ、強みを実現できているといえます。
■顧客ターゲット
- 高級肉を食べたい、でも時間はない方。
- 手軽にステーキを食べたい方。
→女性の割合は意外に高く30%程度
戦術分析
■売り物、売り値
- 上質なステーキ
ヒレステーキ:量売り価格 1グラム当たり9円[税抜き]
(200gから注文可能:200gで1,800円)
トップリブステーキ:量売り価格 1グラム当たり8円[税抜き]
(200gから注文可能:200gで1,600円)
黒毛和牛サーロインステーキ:量売り価格 1グラム当たり15円[税抜き]
(200gから注文可能:200gで3,000円)
などステーキメニューを豊富に揃えています。肉以外の食べ物メニューはサラダとライスのみ。
- よりリーズナブルなランチメニュー(ライス・サラダ・スープ付)
ワイルドステーキ: 300g 1,350円(税抜き)
ワイルドハンバーグ 300g: 1,000円(税抜き)
■売り方
肉マイレージカード(アプリと連動)
→ステーキを食べた分量が「マイル」として加算され、食べた量がデータとして蓄積されます。
- 食べたデータが月間や累計の順位に反映されることで、顧客はゲーム感覚で、食べた量を競っているようです。
- 108円と有料でありながら、発行枚数は20万枚に上ります。
- 累計3kgで「ゴールドカード」、累計20kgで「プラチナカード」、累計100kgで「ダイヤモンドカード」となります。「ダイヤモンドカード」を目指すことをモチベーションとするファンもいるようです。
- お得で便利なマネーチャージ機能を搭載しています。
■売り場
- 店舗は東京都心部を中心に出店しています。ほとんどが20~30坪の狭い店です(賃料を抑える効果があります)。
- カウンターで立ったままステーキを食べるというスタイル。
→テーブル席よりも収容できる人数が多く、顧客の回転も速いです。滞在時間が短いということでもあります。実際に顧客の滞在時間はランチで20分、ディナータイムで30分と非常に短いです。
まとめ(戦略ショートストーリー)
手軽にステーキを食べたい方をターゲットに、少ない従業員でも店を回せる仕組みに支えられた「本格的なステーキを手軽に食べられる」という強みで差別化を実現しています。
上質なステーキを安く提供するだけでなく、肉マイレージカードに食べた量をデータとして蓄積し、食べた量を競争する楽しさを提供することで、顧客の支持を得ています。
分析のポイント
「他社(競合以外)から学ぶ姿勢」
ここまでの「いきなり!ステーキ」分析をとおして、お気づきかもしれませんが、既存の企業で似ているお店が存在します。そうです。「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」などのお店です。大成功を収めているお店ですね。共通点としては、高級なものを安く提供することや立ち食い、高回転率などがあげられます。
ペッパーフードサービスの一瀬社長は「いきなり!ステーキ」の検討の際、俺のシリーズのお店を視察に行かれているそうですので、成功企業の成功要因をうまく自社に取り入れている好事例といえます。
ここで重要なのは、他社(競合以外)から学ぶ姿勢です。
競合する企業の成功事例を取り入れたとしても、やはり、オリジナルに勝つのは難しいです。先行企業の方が一日の長がありますので。
一方で、競合しないお店の成功事例を取り入れると、競合内で際立つということが多いです。例えば、ファーストリテイリング(ユニクロ)の成功要因のひとつに製造小売り(SPA)があげられますが、このSPAをメガネ業界に取り入れて躍進しているのがJINSですね。
本メルマガでもJINSを取り上げています(Vol.0)
また、Vol.28で取り上げたヤキタテイは、パン屋に100円均一を取り入れることで、人気店となっています
●【MBAの企業分析】大ウケ100均パン屋の顧客満足度が異常に高い理由
そして、「いきなり!ステーキ」は成功事例を取り入れるだけでなく、自社オリジナルの顧客のファン化の取り組みである肉マイレージカードを加えることで、より際立つ存在となっています。
つまり、他社の成功事例に自社の独自性を加えることができること、逆に言えば、自社の独自性が活きる成功事例を取り入れることが重要ということです。
他社(競合以外)から学べることは非常に多いと思いますので、例えば本メルマガで取り上げた企業からマネできることはないかという視点を持って読んでみることをお勧めします。
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