中国VS米国。戦争をする気もないのに挑発する理由とは?

 

「シルクロード経済圏構想」と中露同盟を潰す

これはまだ日本ではほとんど報道されていない。しかしこれは、アメリカが「シルクロード経済圏構想」と中露同盟を潰すための壮大な戦略の一部なのである。

中国が立ち上げた「シルクロード経済圏構想」は壮大だ。この構想は「一帯一路」と言って、中国の貿易ルートとなる海路を整備すると同時に、発展の遅れた中国の内陸部とヨーロッパを中央アジアを経由して鉄道網で結ぶという計画だ。

中国政府は発展の遅れた中国の内陸部を開発し、この地域を産業の新たな拠点にする計画を促進し、膨大なインフラ投資を続けている。でも内陸部は、中国の貿易ルートである沿岸部から距離があるため輸送コストがかかる。この問題を解決しない限り、内陸部の発展は難しいのが現状だ。

これの切り札となるのが「シルクロード経済圏構想」だ。中国の最大の市場であるヨーロッパと内陸部を鉄道網で結ぶ壮大な計画だ。中国と、カザフスタンなどの中央アジア、そしてドイツやスペインとヨーロッパ諸国、さらにはロシアやトルコまで包含する構想だ。この構想で、ヨーロッパ、ロシア、トルコ、中央アジア、中国などのユーラシア全土がひとつの経済圏として結ばれる可能性が出てくる。これからユーラシアが、世界経済の成長をけん引する地域になることは間違いない。

アメリカとEUの排除を目指すロシア

この構想は中国だけのものではない。かねてからロシア、カザフスタン、ベラルーシ、タジキスタンなどの中央アジア諸国との経済同盟である「ユーラシア連合」を構築しつつあるロシアの協力もあって、実現に向けて進んでいる。ロシアは東シベリアの天然ガスをパイプラインで中国に輸出する計画を締結した。

また、「ユーラシア連合」に加盟しているカザフスタンは、「シルクロード経済圏構想」における鉄道網の重要なハブ(中心)でもある。ロシアが主導する「ユーラシア連合」と中国の「シルクロード経済圏構想」は融合しつつある。本格的な中露同盟の出現だ。

一方ロシアの目標は、旧ソビエト帝国の影響力の回復だ。ロシアは、エネルギー大国といってもその経済力は限られている。ロシア単独ではこの目標を実現することは困難だ。そこでロシアは中国と同盟して、中国の経済圏拡大に協力しながら、ユーラシアにおけるロシアの政治的な勢力圏の拡大を模索している。

中国との同盟がロシアの勢力圏拡大につながる理由は、ユーラシアからアメリカやEUの影響力を完全に排除することができるからだ。ロシアにとって最大の宿敵は、アメリカとそれが主導する軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)だ。ドイツの東にはNATOを拡大させないという1991年の約束をアメリカは反故にして、NATOをバルト海3国などの旧ソビエトの共和国まで拡大し、ロシアの喉元に迫っている。グルジアなどもNATO加盟を希望しており、NATOの拡大は続いている。

また、EUに加盟を希望する旧ソビエトの共和国も多く、ロシアの経済圏を侵食しつつある。

これらのことは、ロシアにとって極めて大きな脅威だ。この脅威に対抗するためには、ロシアは中国と同盟して、中国が主導する経済圏構想や軍事同盟に積極的に協力することで、アメリカとEUの影響力の排除を目標にしている。要するにロシアは、中国の力を借りて、ユーラシアにおけるアメリカとEUの影響力の排除を進めているということだ。

>>中国・ロシアの動きにアメリカは?

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