中国VS米国。戦争をする気もないのに挑発する理由とは?

 

「シルクロード経済圏構想」とターキッシュ・ストリーム

もし「シルクロード経済圏構想」と中露同盟が進むならば、アメリカとEUの影響力が及ばない一大ユーラシア経済圏が誕生することになる。

では、マケドニアはこうした流れではどこに位置しているのだろうか? 実はマケドニアはこの構想の要衝に位置しているのだ。

周知のように「シルクロード経済圏構想」の要になるのは、中国内陸部から中央アジアやバルカン半島を経由して、中国の最大の消費市場であるヨーロッパへの鉄道網の整備である。最近中国は、ギリシャのアテネにあるピレウス港の3分の2を買収し、ピレウス港からマケドニア、そしてセルビアを経由してハンガリーへと連結するバルカンと東ヨーロッパを結ぶ鉄道網を整備している。マケドニアはこの構想の中心にある。

さらに、マケドニアが重要なのは「シルクロード経済圏構想」だけではない。ロシアがヨーロッパに天然ガスを送るパイプラインは現在関係が悪化しているウクライナを通過している。これを嫌ったロシアは、ウクライナを経由しない「サウス・ストリーム」というパイプラインの付設を行っていた。だが、欧米の圧力による経済制裁にパイプラインの通過国が加担したため、2014年12月、「サウス・ストリーム」の計画を中止した。

代わりにロシアは、ロシアから黒海を経由し、トルコを通過してヨーロッパに至る「ターキッシュ・ストリーム」を建設している。「ターキッシュ・ストリーム」は、トルコ、ギリシャ、マケドニア、セルビア、そしてハンガリーを通過するパイプラインだ。中国の「シルクロード経済圏構想」の鉄道網と同じ地域に「ターキッシュ・ストリーム」は付設される。

欧米の影響力を排除した新秩序

このようにマケドニアは、中国の「シルクロード経済圏構想」でもロシアの「ターキッシュ・ストリーム」でも、地政学的に重要な要衝になる。マケドニアの親ロシア派の政権の元で政情が安定すると、マケドニアを中心としたバルカン半島は、アメリカの影響力が及ばない中露同盟の新しい秩序の元で大発展する可能性が極めて高い。この地域、ならびにユーラシア全域からアメリカとEUに影響力は排除される。

マケドニアを不安定にし、構想を潰すアメリカ

さて、このような状況を見ると、「ウクライナ政変」を仕掛けたヴィクトリア・ヌーランドや、「カラー革命」を仕掛けたジョージ・ソロスの「オープンソサイティー協会」などがなぜいまマケドニアに入っているのかがよく分かる。

つまり、マケドニアに政変を仕掛け、EUとNATO加盟を希望する親欧米派の政権を樹立し、中露同盟による新しい秩序の形成をたたき潰すことが目的だ。

中国の挑発はブラフ

マケドニアの政変は、まだ日本ではまともに報道されていない。南沙諸島における中国とアメリカの対立が注目を集めている。ジョーズ・ソロスやCIAの元高官など、まさにマケドニアの政変を仕掛けている当事者が、中国とアメリカの軍事衝突の可能性を示唆し、第三次世界大戦を警告しているのである。

こうした文脈から判断すると、アメリカが中国と本格的に軍事対立する意図はないと見てよい。南沙諸島で強硬に出ている中国を挑発しながら、中国や国際社会の関心を中国に集中させ、その間にマケドニアで政変を仕掛けると見た方がよいだろう。

すると、中国への挑発とマケドニアの政変は連動していると考えた方がよい。マケドニアの政変で親ロシア派の政権が打倒され、ウクライナと同じように親欧米派の政権ができると、中国との軍事衝突の可能性を示唆するキャンペーンや、また中国に対する挑発は止むものと思われる。

image by: wikimedia commons

『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』より一部抜粋

著者/ヤス
早稲田大学卒。企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等を担当。世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立てる。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をメルマガで配信。
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