「原油安」と「円安」…2つの「安」で日本経済は新たな夜明けへ

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一時期に比べ持ち直したとはいえ、低値で推移する原油価格。円も6月現在、120円を超える水準となっています。4万3000人の読者数を誇る無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』の著者・伊勢雅臣さんは、「原油安はサウジによるロシア潰し」とし、さらにこの2つの「安」が日本経済を潤し、今後日本は世界経済の牽引役になると分析します。

原油安と円安は日出ずる国の新たな夜明けを示す暁光である

2つの「安」が我々の身辺に押し寄せている。原油安と円安である。

原油安は我々の日常生活においてはガソリン価格の低下として顕著だ。1年前、平成26(2014)年7月のレギュラー実売価格が158.3円だったのが、年明けの2月には125.4円と20%ほども下落し、その後、やや持ち直したとは言え、6月時点で134.5円となっている。

円相場も同様に急落している。民主党政権下の平成23(2012)年12月には1ドル83.64円だったのが、安倍政権発足後、急激に円安が進み、翌年5月には100円を突破した。昨年7月頃までは100円前後で推移していたが、その後、もう一段の円安が進み、本年6月現在では120円超の水準となっている。

原油安と円安は、国際的な政治と経済の絡み合いの原因でもあり、結果でもある。この2つが何故生じたのか、我が国や世界にどういう影響を与えるのか、政治・経済の両面にまたがる分析では第一人者である国際エコノミスト・長谷川慶太郎氏の説に耳を傾けて見よう。

原油安の裏にあるもの

まず原油安から見ていこう。国際的な原油価格は2014年6月に1バレル(159リットル)107ドルを突破した後に下がり始め、12月16日には54ドルとほぼ半値、5年7カ月ぶりの安値となった。さらに2015年初にはいきなり40ドル台となった。

昨年11月末にはOPEC(石油輸出国機構)の総会が開かれ、世界の代表的な産油国12カ国が集まった。一部の参加国が日量3000万バレルの生産枠を減らして価格維持を図るべきだと主張したが、中心国サウジアラビアが減産を受け付けなかったので原油価格下落に拍車がかかった。

原油安の背景にあるのが、アメリカのシェール革命である。これは地下100~3000メートルの深さにあるシェール(頁岩=けつがん)と呼ばれる硬い岩盤層に埋まっているシェールオイル(原油)とシェールガス(天然ガス)を取り出す技術が確立されたことから起こった。

従来の油田やガス田は特定の地域に集中しているが、シェールオイル(以下シェールガスも含む)は広く分散しており、アメリカでは2014年にはこれを加えて、原油生産量は912万バレルと、前年比約179万バレルも増加した。国内生産量の増加に伴って、石油製品の輸入量も減っており、2014年は日量525万バレルと昨年よりも約90万バレル減っている。

同時に、中国を含む新興国の景気が減速し、ヨーロッパ経済も停滞しているので、石油燃料の世界需要も低下している。

需要量の減少と、供給面でのシェール革命による供給増、サウジによる生産量維持という両面から、国際市場で原油がだぶつき、急激な原油安が起こっているのである。

>>次ページ なぜサウジは価格下落を放置したのか?

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