「原油安」と「円安」…2つの「安」で日本経済は新たな夜明けへ

 

原油安に直撃された中国の石油利権

中国も原油安の打撃を受けている。中国の国有石油企業はこれまでリビア、シリア、イラクなどの世界各地の油田権益を買い漁ってきた。それが原油安によって、投資回収ができず、大きな損失を計上することとなった。

たとえば、2013年9月、中国は重質油が大量に埋蔵されているベネズエラのオリノコ油田に1兆6000億円を超える巨費を投じたのだが、今回の原油安で油田の評価額は半減してしまった。

中国の石油閥の中心にいたのが、胡錦濤政権で党内序列9位だった習永康だが、習はこの6月、収賄、職権乱用、機密漏洩などの罪で無期懲役と個人財産の没収が決定された。関係の深いエネルギー企業の元側近も続々と摘発されている。

そもそも習永康が石油閥の大立て者として石油利権を握ったのは、元国家主席の江沢民によるバックアップがあったからだが、原油安による石油閥の没落により、今後は江沢民の立場も危うくなると長谷川氏は見ている。

中国は2020年にはアメリカを抜いて世界最大の石油消費国になると予想されており、それに備えるという建前で、中国の石油閥は世界各地の油田権益を買い漁っては実は自らの利権を拡大してきたのだが、今回の原油安によって、そんな利権も吹き飛ばされてしまった。

なお、中国国内は消費エネルギーの70%以上を石炭に依存しているため、原油価格の下落の恩恵はそれほど受けないという。

原油安と原発再稼働で鬼に金棒の日本経済

原油安は世界第3位の石油消費国である日本にとって、大きな恩恵をもたらす。東日本大震災での原発事故をきっかけに、平成25(2013)年9月には48基の原子力発電所すべてが停止した。

不足する電力を火力発電で補うために、原油などの輸入が激増し、平成25年には27兆円と、震災前に比べて10兆円も増加した。これが電力料金の上昇につながって、一般家庭向けが19.4%、企業向けが28.4%も上昇してしまった。

しかし、急激な原油安によって、原油の輸入にかかる費用は1年間で少なくとも5兆円は削減できる、という試算がある。これが電力料金の引き下げにつながり、日本経済の上昇に寄与する。さらに原発の全面再稼働が加われば、鬼に金棒である。

原油安によって電力を使う製造業、サービス業だけでなく、ガソリンを使う輸送業、石油燃料を用いる野菜・果物のハウス栽培や漁船のコストも大幅に削減される。高度に石油に依存する日本経済は、原油安の恩恵を様々な面で受ける。

とすれば、アメリカがシェール革命で原油安を引き起こしたように、日本も独自のエネルギー源を開発して、さらなる原油安を追求すべきだろう。それがメタンハイドレートである。

日本周辺の海底には低温高圧の下で水とメタンが固体になったメタンハイドレートが存在している。火をつけると燃えるために「燃える水」と呼ばれ、メタンを抽出すれば天然ガスとして利用できる。日本近海ではすでに合計971カ所でメタンハイドレートが確認され、国内の天然ガス使用量の100年分が存在する、と推定されている。

メタンハイドレート利用のための技術開発は着々と進められており、その実用化は目前に迫っている。完成の暁には日本のエネルギーの自立が実現され、遠く中東から原油を輸入する、というリスクはなくなる(「JOG(513)石油で負けた大東亜戦争」参照)。また一層の原油安をもたらして、日本はアメリカと並んで世界経済を引っ張っていく事になろう。

>>次ページ 円安は日本に何をもたらすのか?

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