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パナマ文書は「米大統領」までも変える。ヒラリーに浮上した黒い疑惑

世界の首脳たちを震え上がらせている「パナマ文書」騒動。しかし、その影響を受けるのは国のトップに立っている人間だけではないようです。静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之さんは、メルマガ『NEWSを疑え!』の中で、米国大統領候補選真っ最中のヒラリー・クリントン氏の側近と、ロシア・プーチン大統領の黒すぎる繋がりを指摘しています。ウクライナ情勢をめぐる対立以降、経済制裁が続く米露の関係ですが、その背後では何が起こっているのでしょう?

「パナマ文書」がヒラリーを直撃する?

パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した「パナマ文書」によると、ロシアのプーチン大統領の側近たちは、保有するロシアの大企業の株式を租税回避地のダミー会社に移転するため、ロシア最大の銀行スベルバンクを利用している。

文書を調査している団体の一つ「組織犯罪・汚職報道プロジェクト」(OCCRP)が4月4日に発表し、米国の保守系ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」が翌日報道した。

「パナマ文書」報道の直前の3月30日、米政治ニュースサイト「ポリティコ」は、ロビー会社「ポデスタ・グループの幹部3人が、スベルバンクのロビイストとして、米国のロシアに対する経済制裁を緩和させる目的で活動することを、米政府に届け出たと報じた。この届にクライアントとして記載されたのは、スベルバンクのほか、ケイマン諸島籍の投資銀行トロイカ・ディアログ、キプロス籍のSBGBサイプラス、ルクセンブルグ籍のSBインターナショナルである。

3人は同社の共同創業者トニー・ポデスタ氏、スティーブン・レイドメーカー元国務次官補(ブッシュ政権(子))、デビッド・アダムズ元国務次官補(オバマ政権)である。

ポデスタ・グループのもう一人の共同創業者こそ、米大統領選のヒラリー・クリントン選対本部長のジョン・ポデスタ氏である。ジョン氏はトニー氏の弟で、クリントン大統領の首席補佐官やオバマ大統領の特別補佐官(カウンセラー)を歴任しており、オバマ政権への影響力の強いシンクタンク・アメリカ進歩センターを創立した。

トニー・ポデスタ氏も、クリントン陣営への大口献金を集める役目を果たしており、クリントン候補当選の暁には、兄弟とも要職への起用が確実視されている。

それゆえ、スベルバンクがポデスタ・グループの力を借りようとすることは驚くに当たらない。ポデスタ・グループはウクライナの親ロシア政権を支持する団体と契約していた実績もあるから、ロシア側は、契約に応じる可能性があるとみたのだろう。

しかし、ポデスタ・グループはなぜ、プーチン政権およびロシア情報機関との関係が明らかに深い、スベルバンクとの契約に応じたのだろうか。トニー・ポデスタ氏が説明しなければ、弟そしてクリントン候補が説明を求められることになる。

クリントン候補は大統領選に正式に出馬する前、ゴールドマン・サックスの非公開の会合で3回スピーチし、講演料67.5万ドル(6700万円)を受け取ったことを、今年2月3日にCNNの記者に問われ、「ゴールドマン・サックスがくれると言ったからもらいました」と答えて批判された。ポデスタ氏としては、「スベルバンクがくれると言ったからもらいました」と言うわけにはいかない。

なお、ロシア政府系のスプートニク通信社は、「パナマ文書」報道が米政府と投資家ジョージ・ソロス氏の陰謀であると日本語でも宣伝している。しかし、ソロス氏の支持するクリントン陣営に、「パナマ文書」が米政界で初めて波及したことは、その陰謀説と矛盾する。

いずれにせよ、「パナマ文書」問題が米国大統領選の行方を左右する要素として浮上してきたことは紛れもない事実だ。骨の髄までビジネスマンのトランプ氏との関わりでも出てこようものなら、民主党のサンダース氏が大統領に最も近い候補者となり、選挙の行方がますます読みにくくなった。

(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

 

 

NEWSを疑え!』より一部抜粋

著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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