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17分52秒。たった1つの動画がサッカーの未来を変えた

なでしこジャパンの健闘及ばずアメリカの優勝で幕を閉じた女子ワールドカップ。その準決勝で日本相手にオウンゴールを献上してしまった自国選手を絶賛するイギリスチームの監督のFIFA公式動画が話題になっていますが、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者・りばてぃさんは「このたった1本の動画には、計り知れない意味や意義がある」と言います。

たった1つの動画が救い守るもの

今まさに世間の注目を集めているサッカーの女子ワールドカップも、新しい仕組みによる「世論形成」や「社会現象」の一例と言えるだろう。

決勝戦はもちろんのこと、準決勝まででも、すごい騒ぎだ。

今回の準決勝が、米独日英という、先進国首脳会議みたいな顔合わせだったから、
余計に盛り上がったのかもしれない。

米独日英ならどの国も、世界で最もインターネットが発展し普及している国だから、試合前からネット上には、ものすごい量の関連情報や動画があふれ出ていた。

それらが世論形成に与える影響は大きく、アメリカでは、準決勝のドイツ戦のテレビ中継が、今大会最多の視聴者数を記録。

いや、今大会どころか、これまでアメリカで放送された女子サッカーのすべての試合の中で、史上3番目に多い視聴者数となったのだ(1位は前回大会決勝の日本戦、2位は99年大会決勝の中国戦)。

〔ご参考〕 Women’s World Cup: USA’s semifinal triumph over Germany another TV ratings bonanza

また、皆さんもよくご存知の通り、その翌日の日本対イギリス戦は、延長ロスタイム中のオウンゴールという劇的な結末だったこともあって、アメリカでも大きな話題になった。

それにしても、両チームともベストを尽くして戦った最後の最後に、オウンゴールとは、こんな悲劇、滅多にないだろう。

日本国内でも、対戦相手だった日本のサポーターですら、かわいそう過ぎて涙したという異例の報道があった。

〔ご参考〕 イングランド代表のバセットがオウンゴール 日本サポーターも涙

とにかく、インターネット動画配信が普及していない時代だったら、後日、そんな話題を耳にしても、

「そうなんだ、見過ごしたよ!!」

と悔やむだけだった。

それが今では、誰でも手軽にネット動画で、そうした決定的な場面を見れる。

誰かがYouTubeなどに勝手にアップロードした動画が山ほどあるのだ。

試合の動画だけじゃない。

代表チームの選手を招いたり、特集したテレビのスポーツ番組や、ドキュメンタリー番組ですら、YouTubeなどで検索かけたら、いくらでも見れる。

このことがもたらす影響は、尋常じゃない。

また、当然のことながら、FIFAも、YouTube上に専門のチャンネル(FIFA TV)を設けていて、試合のハイライト・シーンを編集してまとめた素晴らしい公式動画を公開している。

注目が高かったからなのか、今回の準決勝後には、米独戦、日英戦の2試合それぞれのハイライト動画に加え、2試合まとめた動画も登場。

もちろん、いつでも、どこからでも、無料で視聴できる。

〔ご参考〕
HIGHLIGHTS: USA v. Germany – FIFA Women’s World Cup 2015 ~米独戦

 

HIGHLIGHTS: Japan v. England – FIFA Women’s World Cup 2015 ~日英戦

 

ROUNDUP: Semi-finals at Women’s World Cup ~「準決勝」2試合まとめ

さらに、今回の準決勝後では、これまでなかった極めて異例の動画が、このFIFA TV上で公開された。

>>次ページ 公開された動画の何が異例なのか?

それは、日英戦の試合直後にあった英代表チームのマーク・サンプソン(Mark Sampson)監督による記者会見(Post-Match Press Conference)の動画だ。

しかも、その長さはなんと17分52秒!!

ノーカット版だ。

〔ご参考〕 ENGLAND Reactions – Japan v. England – Post-Match Press Conference

この会見で、サンプソン監督は最初から最後までずっと、オウンゴールを献上したローラ・バセット(Laura Bassett)選手や、その他の選手一同を、心から誇りに思うなどと絶賛しまくった。

自分が知るどのチームよりも限界を何度も超え、全力を出し尽くしたとか、このチームにバセット選手のオウンゴールを責める者は1人もいないとか、誰もが彼女を尊敬しているし、このチームのメンバーは、皆、一生の友人だ、そもそもバセット選手がいなければここまで来ることもなかったとか、彼女は英国に帰国後ヒーローとして迎えられるべきだ…などと、涙を堪え、熱く語り続けた。

「彼女は英雄だ」と力説する若い男性の監督ならではの熱さ。

まるで、

「そんな奴いたら俺がぶっとばす」

とか言いそうな雰囲気満々。

それだけイギリス国内では、過去に重要な国際試合でミスをしたスポーツ選手に対して、辛らつな批判や中傷が報じられることが多かったのかもしれない。

悪評高いタブロイド紙もあるし。

だからこそ、試合直後に、サンプソン監督はあんなにも熱く、それこそ命がけの剣幕で語ったのかも?

でも、もし、この世界にネット動画配信がなかったら

サンプソン監督の会見の様子は、一部のマスコミ関係者にしか知られなかったかもしれない。

テレビ番組には「放送枠」があり、「時間の制約」があるため、17分52秒もの会見のすべての内容が放送されることはまずありえない。

良くてせいぜい一部の抜粋

下手すると、サンプソン監督が伝えたかったメッセージではなく、

悲劇仲間割れ戦犯は…

みたいな感じのメッセージへと恣意的に編集され、ワイドショー番組などで、嘘か本当か分からないデタラメばかり取り上げられていたかもしれない。

実際、イギリスのタブロイド紙は、そうやって嘘か本当か分からない下衆な話題や悪質な報道で、販売部数を稼いできた。

FIFAが、素早くサンプソン監督の記者会見動画を公開したことによって、そんな悪質な報道を、未然に防ぎ、抑える効果があっただろう。

たった1つの動画が、1人の人間の人生を変えることになったのかもしれない。

いや、1人の人間じゃない。

イギリス代表チーム関係者や、その家族や友人、この試合を見ていたサポーター、将来、サッカー選手になる夢を追いかけている子ども達など等、大勢の人々の人生を、救い、守り、何かしらのかたちで変えることになっているのかもしれない。

そういう意味では、このたった1本の動画には、計り知れない意味や意義がある。

今はまだ、インターネット上での動画配信の歴史が浅く、それによって、世の中の世論形成や社会現象を作り出す仕組みが激変している真っ最中だ。

そのため、まだ誰も把握しきれていないけれど、後々、人類が振り返った時、今まさに起こっている変化(あるいは進歩)は、私たち人類にとって、とても重要なターニング・ポイントになっている可能性がある。

ひょっとすると、人類が初めてを使いはじめたとか、電気を使いはじめた時などに、匹敵する、あるいはそれを上回るくらいの激変が、今まさに起こっているのかもしれない。

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image by: YouTube

『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』 Vol.147より一部抜粋

著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。
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