真田家ゆかりの武器も。知恩院の「七不思議」が現代に伝えるもの

 

忘れ傘

御影堂正面の天井の軒裏には骨組ばかりとなった傘が見えます。これには2つ説があります。名工、左甚五郎が完璧なお堂を造ると神様が嫉妬すると魔除けのために置いたという説。このあたりに住んでいた白狐が、自分の棲居を他の場所に確保してくれたお礼にこの傘を置いて知恩院を守ることを約束したという説。

傘は雨が降る時に使う道具で、水から身を守るものです。忘れ傘は火災から御影堂を守るものとして信じられています。禅寺の法堂はっとうの天井に水の守り神でもある龍の絵が描かれているのも同様の理由からです。火災から大切な建築物を守ろうとする昔の人たちの強い想いが込められているのです。

抜け雀

大方丈の菊の間には狩野信政が描いた襖絵があります。紅白の菊の上に数羽の雀が描かれていましたが、あまりも上手に描かれたので雀が生命を受けて飛び去ったといわれています。現存する大方丈の襖絵には飛び去った跡しか残っていませんが、狩野信政の絵の上手さを示したものと語り継がれています。

昔は完璧すぎるものを造ることを敢えて避ける風習がありました。建築物などもわざと柱の数を少なくしたり、柱をさかさまに建てたりと不完全への工夫がされています。これは、物事は完成した時から衰退が始まるという考え方に基づいています。不完全なものは完全を目指すというもの。お月見も満月である十五夜を観賞しますが、少しだけ欠けている十三夜が好まれるのはこのような考え方が影響していたようです。

三方正面真向の猫

方丈の廊下にある杉戸に描かれた猫の絵も狩野信政が描いたものです。どちらから見ても見る人の方を正面からにらんでいるように見える不思議な絵なのでこの名前がつきました。

親猫が子猫を温かく見守る姿が見事に表現されています。親が子を思う心、我々をいつでもどこでもいつまでも正面から見守っている仏の慈悲を表しています。

print
いま読まれてます

  • 真田家ゆかりの武器も。知恩院の「七不思議」が現代に伝えるもの
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け