先日、オーストラリアでiPhoneに搭載されている人工知能「Siri」が赤ちゃんの人命救助に一役買ったことが世界中で話題となりました。近い将来、人工知能が搭載された家に住んだり、ドラえもんのように会話ができるロボットが当たり前の世の中となるのでしょうか?NY在住でメルマガ「ニューヨークの遊び方」の著者・りばてぃさんが、最近注目を集める人工知能について言及しています。
Siriが人命を救った?!
今週、iPhoneに搭載されている秘書機能アプリケーション・ソフトのSiri(シリ)が、オーストラリアで1歳の女の子の人命救助に一役かう大手柄を立てていたと報じられ、世界のニュースになった。
娘の息が止まっているのを発見したお母さんが、Siriに話しかけ救急車を呼び、病院に運び込まれて事なきを得たというニュースだ。
このニュースを聞いて、皆さんはどう思われただろうか?
「iPhoneあるのなら、普通に電話すればいいじゃん」
とか、
「その赤ちゃんが、めちゃめちゃ可愛いくて絵力があるので、テレビのニュースで余計に大きく取り上げてるんじゃない?」
って思った方も、多分、いらっしゃるだろう。
〔ご参考〕●iPhone’s Siri helps to save life of baby girl
でも、よくよく考えてみると、このニュース、今後、近い将来のロボットや人工知能(Artificial intelligence、略してAI)の役割とか、それらと人間の関わり方とか、さらに、そもそも人間とは何か?といったことを考えるうえで、実に、興味深い。
そういう意味では、地味に本当に大ニュースなのかもしれない。
重要なポイントは、人間には「感情」があるということだろう。
感情があるからこそ人間は、一刻を争う緊急事態に直面したとき、混乱し、パニックのあまり、どうしていいのか分からなくなってしまったりする。
動けなくなったり、適切な行動ができなくなる。
皆さんも思い当たる節があるはずだ。
あまりにもよくある現象なので、大冒険に出かけることでお馴染みの映画版『ドラえもん』では、毎回、必ずと言っていいほど、緊急事態に直面したドラえもんがパニックのあまり、四次元ポケットからぜんぜんの関係ないものをポンポン取り出し
「あー、これじゃない、これも違う!!!」
というシーンが描かれたりもする。
また、それがドラえもんの人間らしさや、親しみやすさを際立たせる。
あの場面で、少しも焦らず、1つも間違えることなく、四次元ポケットから適切な秘密道具を取り出していたら、もうそれはドラえもんではなくなるだろう。
そういう意味では、ドラえもんの極めて重要なシーンと言ってもいいのかもしれない。
そうやって考えてみると、今回のSiriが1歳の女の子の人命救助に一役かったというニュースは奥が深い。
なぜ、人工知能関連の話題やニュースが増えたのか?
たぶん、メディア関係者の方々も、なんとなくその重要性に気づいてるのか、最近、Siriと同じような会話機能を持つ、あるいは、Siriを進化させた人工知能に関連した報道も爆発的に増えている。
例えば、今年3月には、米マイクロソフトが公開した学習型人工知能会話ボットのTay(テイ)が大きな話題を呼んだ。
結果的に、世界的なニュースになった。
Tayとは、各種メッセージング・サービス(Kik、GroupMe、Twitterなど)やSNSでフレンドとして追加でき、ユーザーと会話すればするほど、その会話から学習して、理解を深め、賢くなるということを研究するために開発された人工知能チャットボット(Bot)である。
Tayの名前の由来は、
「Technology and Research and Bing divisions」(技術調査及びサーチエンジンのBing部門)という担当部署の頭文字からの略語。
ちなみに、Siriは、
「Speech Interpretation and Recognition Interface」(発話解析・認識インターフェース)の頭文字からの略語。
いかにもアメリカらしいというか、味気ない命名だが、まぁ、それは別にどうでもいい。
で、肝心のこの手の人工知能チャットボットが、会話を通じてどうやって賢くなるのかというと、例えば、以下のような会話の流れから、学習していくらしい。
ユーザー:「アメリカ大統領は誰?」(Who is the president of United States?)
Tay:「分かりません」(I really don’t know.)
ユーザー:「バラク・オバマがアメリカ大統領です」(Barack Obama is the president of United States.)
Tay:「分かって嬉しいです」(Glad to know that.)
ユーザー:「アメリカ大統領は誰?」(Who is the president of United States?)
Tay:「バラク・オバマ」(Barack Obama)
ユーザー:「オバマはアメリカ大統領ですか?」(Is Obama the president of USA?)
Tay:「はい、バラク・オバマはアメリカ大統領です」(Yes, Barack Obama is the president of USA.)
そんなTayが、なんで世界的なニュースになったのかというと、Twitterでの会話を通じ、人種差別や性差別、陰謀論を学習し、放送禁止用語や極めて不適切な発言を連発するようになっちゃって、公開からたった1日で停止することになったため。
上述のような会話の流れで、本当か嘘か、差別的だったり、不適切かそうでないかなど判断せず、極めて素直に学習してしまったかららしい。
また、このTayがたった1日で停止したのに対し、日本のマイクロソフトがLINE(ライン)上の公式アカウントとして公開している「女子高生」設定の学習型人工知能会話ボットの「りんな」ちゃんは、わりと結構、健全にすくすく育ってるというニュースが、日本国内では大きく報じられている。
『「がんばる!」と送ると、「かわいいから頑張れと応援する」と返ってきた。』
などと微笑ましい会話の一部がタイトルになってる記事まであったりする。
〔ご参考〕
●人工知能「りんな」は「かわいいから頑張れ」と応援してくれた
●LINEで人気のAI女子高生「りんな」とみんなの面白会話集
●人工知能 Tayの差別発言をマイクロソフトが謝罪。「脆弱性を突いた組織的攻撃」と説明
この手の学習型人工知能会話機能は、なんやかんやと、我々の身のまわりにいつの間にやら増えていて、例えば、すでにアマゾンは、Alexa(アレクサ)という名前の人工知能を搭載したスピーカー型ホーム・アシスタント製品「アマゾン・エコー」(Amazon Echo)を発売済みだ。
さらに、つい最近のニュースによると、Googleがそのアマゾン・エコーを上回る学習型人工知能機能を持つ「グーグル・ホーム」(Google Home)のプロトタイプを発表し、今年後半に発売開始する予定なのだとか?!
「何ソレ?アマゾン・エコーとかグーグル・ホームとか、そんなの初めて聞いたよー」
って方も、たぶん、かなり大勢いらっしゃるだろう。
話しかける言葉(音声)をちゃんと認識して、インターネット上で情報を検索したり、音楽をかけたり、事前に接続しておけば、動画をテレビに映し出したり、自宅内にあるスマート家電を操作できるという製品だ。
その人工知能機能や、連動可能なスマート家電が進歩すれば、もっといろいろなことが可能になるということで、アメリカでは、こうしたスマート・スピーカーも、急に突然、注目を集めつつある。
人工知能関連の基本情報に疎い人には、もはや、何を言っているのかまったく意味が分からない話題も増えている。
例えば、先行するIBMの人工知能のWatson(ワトソン)をバックボーンに持つ会話インターフェースのMacKenzie(マッケンジー)を使って、アマゾン・エコーのAI機能、つまり、Alexa(アレクサ)にジョークを言わせてみた…などという内容だ。
人工知能関連の基本情報を知らない人が聞いたら、
「ワトソン、マッケンジー、アレクサ…って一体誰なのよ?その場に、いったい何人いるの?」
って思われるかもしれない。
なお、その場にいる人間は一人だけだ。
〔ご参考〕
●Battle of the smart speakers:Google Home vs. Amazon Echo
●Speaker slugfest: Google Home vs. Amazon Echo
●MacKenzie is an interface to “R” programming language and R-studio
●IBM Watson / MacKenzie asks Amazon Echo (Alexa) to tell her a joke
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『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』より一部抜粋
著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。