そもそも記事で紹介することは寺の宣伝にもなるわけで、お互い、持ちつ持たれつの関係のはずである。 僕が編集部記者のころは、京都特集の取材に行っても、鎌倉の取材に行っても参観客として写真を撮影し、普通にそれを雑誌に掲載していた。 それで問題になったという記憶もない。
しかし、かつては申請さえすれば無料だった日光東照宮も、平泉の中尊寺もすべてお金がかかるように変わった。 建物にも肖像権がある、という理屈はわかるが、一般公開している建物や仏像を紹介することでお客が増えれば、お寺だって拝観料という形で見返りがあるはずである。
雑誌には広告料というものがあって、広告掲載するには、カラー1ページでいくらという料金が必要になる。 料金は雑誌ごとに違うが、カラー紹介すると少なく見積もっても5万円以下ということはないはずだ。 1ページ大だと、雑誌によっては数百万円する。 それをタダで載せますと言っているのである。
「それはありがとうございます。 掲載料も頂戴します」じゃねーだろ! という気がしてならないのは僕だけだろうか。
温泉に置き換えて考えて欲しい。 宿の写真を撮って無料掲載するのに、面倒な許諾申請をして、なおかつお金までとられるとなれば、その宿はどこも紹介しなくなるに違いない。
宿は代わりがきくが、有名寺院は代わりがない。 そこのところをうまいこと利用されているようで腹が立つ。 まあ、今さら言っても仕方がないけども。
つい最近、平等院さんをご紹介することがあって、またご志納の話になった。
これまで通り「そちらのご予算の範囲で」といわれた。 版元さんと協議して過去の例などから「1万円」を志納することに決めた。 3000円が、こちらの「志」で1万円になったわけだ。 志納金というのは、こうでないといけない。
気持ちで支払うのは、こちらとしても気分がいい。 押し付けられないからこそ志納金も弾みたくなるというものだ。
共同湯の志納金もそうだろう。僕なんか100円玉がないと、ま、いっか、といいつつ500玉入れてきちゃう。逆はダメ。 タダで入ろうなどというサモシイ考えはいかんですよ!
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『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋
著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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