まるで人身売買。アメリカにはない「日本の芸能界」が抱える深い闇

 

アメリカの場合は、日本とは全く違うシステムで動いています。

まず育成に関してですが、基本は自己責任です。自己責任というと過酷なような感じですが、要するに歌手や俳優を志望している人は、まず「学校でしっかり基礎を身につける」ことが要求されます。

歌にしても、ダンスにしても、あるいは演技にしても、アメリカの高校のクラブ活動は大変にレベルが高く、そこでまず基礎が磨かれるようになっています。そして、その上で才能が明らかであったり、本人のモチベーションが高い場合は、大学や専門学校でパフォーマンス・アートミュージックのコースを受けてより高いレベルを目指します

そうして実力を養って様々なオーディションを受けてチャンスを目指すわけです。この間については、まず大学の学費については、奨学金制度はありますが、基本的には自分で払い、またその他にダンスや歌のレッスンを続ける場合も自費になります。

ですから「オーディションを受けまくっている」下積み時代には、それこそスーパーマーケットのレジ打ちや、レストランの店員などをして頑張るわけです。正に過酷な自己責任ということになりますが、それによって「自分で獲得したスキルは間違いなく自分のものという権利は確定します。

ですから、第三者が自分に先行投資」をしてくれる代わりに、そこに人身売買のように「貸し借りの関係」ができるということは「ない」わけです。

次にサクセスした後の「営業」ですが、勿論タレントが自分でメディアに売り込みをするのは大変ですから、プロが介在します。一般的に米欧では「エージェント」と呼ばれる職種になります。そのエージェントですが、大手の事務所に属する事が多いのですが、基本的に売上の一定割合、つまり10%とか20%という金額を自動的に払う契約になっています。

ということは、例えばジェニファー・ローレンスのようなトップ女優が映画に出演して、一本20ミリオン(20億円)の出演料を得たとしたら、その中の仮に10%なら2億をエージェントに払うというシステムです。金額的にはかなりの支払いになりますが、少なくとも本人のプライドとか、世間的には「20億の仕事、20億の稼ぎ」としてのリスペクトは得られるし、何よりも明朗会計になっています。

そんな一本20ミリオンなどというトップクラスで仕事を「選べる」身分はともかく、そこまで行かない「中堅」の場合はどうかというと、組合制度があります。つまり組合に加盟して、組合費を払っていると、何らかの公平なシステムで仕事を割り振ってもらえるし、万が一依頼者の方が不当なことをした場合は組合に守ってもらえるというシステムになっています。

この「スキルは自分のもの」「雇ったエージェントが営業」「中堅以下は組合を通じて」というシステムですが、確かに日本の制度とは全く異なるのは事実です。ですが、長年この方法でやって、とりあえず回っているのは事実であり、参考にはなると思います。

グループは解散するが、個人は依然として事務所に囲い込まれるとか、契約破棄を認める代わり本名での活動は禁止されるなどといった、社会的な常識から離れたことを続けて、芸能というカルチャーの「夢の部分」が消えてしまっては元も子もありません。アメリカの方式をすぐに導入とは言わないまでも、この時期に比較してみるのは意味があると思います。

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