11月25日、東京・パレスホテル東京で「第14回岩谷時子賞」授賞式が開催された。同賞は、「愛の讃歌」「君といつまでも」などの訳詞・作詞で知られ、越路吹雪のマネジャーとしても活躍した故・岩谷時子さんの遺志を受け継ぎ、音楽・演劇界を中心に日本の文化・芸術の発展・向上に功労のあった人物・団体に授与される賞だ。今回は岩谷時子賞をさだまさし、功労賞を宇野亞喜良、特別賞を島田歌穂と大友良英、奨励賞をエヴァー・アンダーソンが受賞した。
さだまさし、ソロデビュー50周年の記念日に受賞!
岩谷時子賞を受賞したさだまさしは、奇しくもこの日がソロデビューからちょうど50周年という記念日だった。「岩谷時子という名前を知ったのは中学2年生の時。加山雄三さんのブームの時でした」と振り返り、「加山さんにあこがれなければ、真面目なバイオリン弾きになってたと思うんですが、加山さんにあこがれたために脱落しまして、歌うたいになりました」とユーモアを交えてスピーチした。
受賞について「ずっとこのために歩んできた気がする。子供の頃の自分に、がんばってれば岩谷時子賞もらえるぞって言いたい」と誇らしげに語った。

「批判されなかったのは『北の国から』だけ」
さだは自身の楽曲について「叩かれるのは歌詞からだったですね。俺より先に寝るなとか、起きるなとか。そういうこと言ったのでボロカスに言われた」と、代表曲「関白宣言」での批判を振り返った。そして「なにも批判されなかったのは『北の国から』のテーマだけだった気がします。あれは『アー』と『ウー』とかだけでやったヒット曲というのも珍しいと思います」と会場を笑わせた。
現在も精力的にコンサート活動を続けるさだは「お客さんがいなくなるまで歌うといっています。お客さんがいる限りは現役で歌っていこう」と意気込みを語り、スピーチ後には「いのちの理由」を歌唱。会場から拍手喝采を受けた。

『レ・ミゼラブル』1000回出演の島田歌穂
特別賞を受賞した島田歌穂は、岩谷時子が訳詞を手がけたミュージカル「レ・ミゼラブル」に1987年の日本初演から出演し、出演回数は1000回を超える。世界ベストキャストにも選ばれ、英国王室主催のコンサートにも出演した実績が評価された。

島田歌穂さん
島田は「岩谷先生は毎日稽古場に足を運んでくださいました。いつも稽古場の片隅の決まったお席にちょこんと座られて、大きな楽譜を広げて、最後の最後まで訳詞の手直しをしてくださっていました」と、岩谷さんとの思い出を語った。
岩谷時子からのエールを胸に
「『歌穂ちゃん、がんばってるわね!』と温かく優しい笑顔で声をかけてくれました。そのことにどれほど力をいただいたかは計り知れません」と島田は振り返る。昨年デビュー50周年を迎えたタイミングでの受賞に「岩谷先生が『歌穂ちゃん、まだまだこれからよ!』と温かいエールを送ってくださっているように感じられてなりません」と感謝の言葉を述べ、「レ・ミゼラブル」より「オン・マイ・オウン」を熱唱。心に響く歌声で会場を魅了した。
越路吹雪のポスターから始まった縁
功労賞を受賞したグラフィックデザイナーの宇野亞喜良(91)は、1950年代から活動を続け、演劇ポスターや舞台美術監督としても知られる存在だ。1967年発行の岩谷時子にとって初の書籍「岩谷時子の作品集~愛の讃歌~」の装丁・挿画も手がけた。

宇野亞喜良さん
宇野は「越路吹雪さんのポスターを作ったときから岩谷時子さんと間接的なつながりがありましたが、実際にお会いしたことはなく。ですが、こうして数十年前の作品を思い出すことができ、本日は楽しかったです」と喜びを語った。
このほか、特別賞を音楽家の大友良英、奨励賞を映画「バイオハザード」シリーズで知られるミラ・ジョヴォヴィッチの娘で俳優のエヴァー・アンダーソンが受賞。

大友良英さん
また「岩谷時子 Foundation for Youth」奨学金制度にピアニストの中川優芽花とバイオリニストの堀内優里が選ばれた。

中川優芽花さん

堀内優里さん
授賞式には選考委員を務めた指揮者の佐渡裕、俳優の別所哲也、作家の村岡恵理らが出席し、竹下景子がプレゼンターを務めた。
授賞式の様子は、12月7日まで映像配信サイト・カーテンコールにて無料アーカイブ配信が行われる。
image by: MAG2 NEWS編集部









