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現役医師が断言。「認知症」は良心的な考えや行動でリスクが下がる

高齢化が進む日本にとって、大きな問題の一つである「認知症」。しかし、その予防法は徐々に解明されつつあります。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、認知症になる原因と、予防法について取り上げています。中でも「ボランティアなど、社会の役に立つ行動を積極的に行っている人は認知症になるリスクが低い」というのは今まであまり聞いたことがない説なのではないでしょうか?さっそく詳しく見て行きましょう!

増える認知症

認知症で最も多い原因であるアルツハイマー病は、高齢者に多いので、高齢人口が増えると認知症の人々も増えてきます。また、高齢者で多い脳梗塞も認知症の原因として重要であり、2番目に多い原因となっています。このようなことから、高齢者人口の割合が増えている日本では認知症の人が多くなってきています。

しかしながら、高齢そのものが認知症の原因ではありません。高齢者でも、アルツハイマー病や脳梗塞にかからない人々は多く、そのような人々のなかには活発な知的活動を続けているひとも大勢おります。そのような人々の生活習慣から、認知症の効果的な予防法についてのヒントを得ることができます。

アルツハイマー病と脳梗塞のうち、脳梗塞の予防法についてはほぼ確立しています。まず、第一に、やはり禁煙です。そして、次に高血圧と糖尿病の予防と治療減塩エクササイズ適正体重の維持、そして定期的な血圧・血糖の測定とそのコントロールが重要です。

また、心房細動という不整脈が原因となって、心臓の中の1つの部屋(心房)に血栓ができやすくなり、これが脳の血管に詰まると脳梗塞となるタイプのものがあります。この種類の脳梗塞を予防するためには、心房細動の特徴である脈のリズムがバラバラであるなどの症状があったときには早めに医療機関に受診して、血液をサラサラにするお薬を内服するなど、脳梗塞の予防を始めるようにお勧めします。

良心的な考えと行動はアルツハイマー病の予防となる

では、アルツハイマー病の予防はどうでしょうか。この病気の予防について確立した方法はこれまで不明でしたが、最近になってさまざまな方法が、アルツハイマー病の予防に効果があることが確認されてきています。

これらは「大脳レジリエンス力」を保つ方法です。大脳レジリエンス力は認知的レジリエンス力とも呼ばれ、認知症の原因となる病的攻撃に対する大脳自身の防御力を意味しています。

この大脳レジリエンス力を向上させる方法にはどのようなものがあるでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、地域住民や自然保護のためのボランティアなどの社会的のためになる活動を積極的に行うこと、実はこれが重要です。高齢者を対象とする研究で、スポーツクラブや勉強会、ボランティアなどの社会的活動を活発に行っている人では、脳由来神経栄養因子という大脳レジリエンス力を高める重要な物質の量が増えていることが示されました。良心的な考えや行動を行うと認知症の予防になることが分子レベルで示されているのです。

認知症にならない生活習慣

また、運動は高血圧と糖尿病の予防や治療でも重要ですが、アルツハイマー病の予防でも重要です。まず、運動は脳由来神経栄養因子を増やし大脳レジリエンス力を高めることがわかっています。

また、運動は血管内皮細胞成長因子を増やします。アルツハイマー病の原因の1つは、アミロイド様物質が大脳内の血管周囲に沈着して神経細胞への血液供給を遮断することです。この血管内皮細胞成長因子は、大脳内の血管成長をうながすことにより、アミロイド様物質の影響を抑えてくれるのです。

一方、脳によくない生活習慣を避けることも重要です。まずは、過剰なストレスと睡眠不足。これらは大脳レジリエンスにはよくありません。そして、長期大量の飲酒。飲酒量と脳の容積は負の相関があることがわかっています。

脳は使うほどよくなる、これはまた医学的真理でもあります。高齢となっても、新しいことを積極的に学んでいくと脳細胞によい刺激を与え、認知機能の維持につながります。医師で百寿者の日野原重明先生は、新しいことにチャレンジしていくことが脳を元気に保ちながら健康長寿を実現するのに最も重要であるとおっしゃっていましたね。

ビタミン欠乏でも認知症になります

また、ある種のビタミン類の「欠乏」は脳の健康に有害です。ビタミンB1が欠乏すると、コルサコフ精神病という認知症に罹り、記憶力が無くなります。この精神病では、記憶力が無いということに対する病識も同時に無くなるため、話し相手の問いなどに対して、悪意のないウソをつく傾向があります。これを「作話症状と呼んでいます。

ビタミンB12欠乏でも認知症となります。このときには、貧血や脊髄・末梢神経障害を合併することもあります。脊髄・末梢神経障害では、足のしびれや、バランスの不安定性からくる転倒などをきたします。

さらには、あまり知られてはいませんが、ナイアシンというビタミンの欠乏も認知症をきたします。これは、ペラグラと呼ばれ、認知症のほかに、下痢、発疹をきたします。

ビタミン欠乏で認知症となるのであれば、サプリなどでビタミンを大量に摂れば予防になるのでは?というアイデアが浮かぶ人もいると思います。しかしながら、これは正しくないことがわかりました。上記のB1やB12、そしてナイアシンを大量に摂っても頭はよくなりません。

また、10年ほど前までは、ビタミンEを取るとアルツハイマー病の予防や治療となると考えられていました。これもその後の臨床研究によって否定されています。なにごとも、過ぎたるは及ばざるがごとし、ですね。

ビタミンを多く含む野菜や果物、豆類、肉類などの自然の食品から摂るようにするとよいでしょう。ちなみに、B1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、いくら、B12を多く含む食品には、貝類、レバー、魚類、そしてナイアシンを多く含む食品には、鶏肉、牛肉、魚類などがあります。

文献

Wilson RS, Boyle PA, Yu L, Segawa E, Sytsma J, Bennett DA. Conscientiousness,
dementia related pathology, and trajectories of cognitive aging. Psychol Aging.
2015 Mar;30(1):74-82.

image by: Shutterstock.com

 

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