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「1年以内に無理なら取引を見直す」激震が走った米HP社からの手紙

米国の大手コンピューターメーカー・HP(ヒューレット・パッカード)のCMOであるアントニオ・ルシオさんが、取引先の広告代理店に送ったという手紙が波紋を読んでいるそうです。その内容は「取引先企業のトップの役職に女性社員と有色人種の起用を増やすこと。12ヶ月以内に出来なければ取引を見直す」という驚きの内容でした。NY在住で『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者・りばてぃさんは、このルシオさんの手紙の目的をわかりやすく解説し、今後はマーケティング業界で女性や有色人種を積極的に起用する流れが強まっていくだろうと予測しています。

広告代理店に衝撃!? HPが送った1通の手紙

今年9月1日。コンピューターメーカーのHP(ヒューレット・パッカード)が、取引きする広告代理店とPRエージェンシー5社に対し1通の手紙を送った

送り主は、アントニオ・ルシオ(Antonio Lucio)さん、HPのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)だ。

Dear Friends,(親愛なる友よ)

・・・からはじまる手紙に書かれていた重要なポイントは以下のとおり:

・クリエイティブと戦略部門のトップの役職に女性と有色人種系(白人種以外)、つまりマイノリティ人種をどのように増やしていくのか実行プランを30日間以内に送ってください。

・また、そのプランを今後12か月間で実行できなければ取引きを見直す

・なぜなら、HPの企業ビジョンは世界中のどこの誰にとってもテクノロジーがより良い生活をもたらす。でも、戦略や重要な決定を下す役職に私たちの商品を使うであろう世界中のあらゆるタイプの人たちが加わってなければ彼らのためになるものを生み出したり提供したりすることはできないと考える。

・これまで複数の調査を重ね研究してきた結果、幅広い見解と多様性がイノベーションを改善しそして加速させることがわかった。だから変えていきたい。

まずは、女性社員から、次に多様な人種をトップ人事に起用していってほしい。

・なぜなら、HPのパソコン購入者の53%は女性、プリンターの購入者の45%が女性なのに、男性ばかりで戦略を練っていては販売機会を失ってしまうのは明確だから。

・これは、近年の女性雇用や多様性の議論を受けて当社が出した行き当たりばったりの計画じゃない。

・私たちのチームがこれまでにないほどの素晴らしいアイデアを出すためには、高いポテンシャルを持つ人材を雇用できる新たな機会であり戦略的な雇用であるということを十分に理解してほしい。

・・・といった主旨のことを伝えている。

また、この手紙の送付を受けて、広告専門誌のAdAgeがルシオさんにインタビューし、より詳しく事情を伺っている。

興味深いのは、AdAgeからの質問に対する返答。

多様性があってバラエティ豊富な人材が集まることで会社は成長すると言い切れますか?・・・との問いに、

私たちの打ち合わせに一回来るといい。多様な視点がもたらす濃厚な内容、とにかく楽しく刺激がある。

これまでなかったような激しい議論にも発展するけども、それが革新と打開策をもたらしているんだよ。

と答えている。

また、ルシオさんは、女性や多様な人材を雇用する際に、よくやりがちなのが、

ほら、ここに10個の役職の空きがあるから女性と多様な人材を雇用しよう、雇用したら変わるだろう」だと指摘し、それではまったくダメだという。

何事もそうだけど、まずは、自分たちで戦略を考える。社内外で必要となる人はどういう人なのか?より良い方向に変えていくため、クリエイトしていくには、どのポジションに誰が必要なのか?

導きだすのに12か月間かかったそうだ。

つまり、表面だけで女性雇用や多様性を叫んでも、任せっきりではダメだし、どこになぜ必要なかを明確にしないと失敗するということだろう。

ちなみに現在、HPには世界中合わせて全部で1,000人のマーケティング社員がおり、その55%が女性だという。マネージャーレベルでみると43%。多くの企業と比べても多いほうとのこと。

しかし以前は、マーケティング部門のトップでルシオさんの直の部下のリーダー的役職には10人中たったの2人しか女性がいなかったという。たったの20%だ。それを倍にした。まずはトップレベルから変えないといけないとアドバイスしている。

ちなみに、今回手紙を受け取ったHPの広告代理店及びPRエージェンシーはオモニコム・グループのBBDOとPR会社2社、Fred & Farid、電通傘下のGyroの全部で5社。

これらの会社のクリエイティブとマーケティング戦略部門の50%を女性にしてほしいとルシオさんは望んでいる。

しかも、HPだけでなく、ジェネラル・ミルズも今年8月に社員の50%が女性、有色人種が20%いる広告代理店だけ広告コンペに参加してほしいと発表している。今後、大手広告企業もこれに続く可能性はあるだろう。

ご参考:
HP becomes the latest brand to demand all its advertising agencies hire more women and people of color

HP Demands Ad Agencies Diversify Their Workforces

Q&A: HP’s Antonio Lucio on Why Diversity Matters

General Mills only wants an ad agency staffed with 50% women and 20% people of color

9月1日からちょうど1か月経ったので今件、また動きでるかもしれませんね。

上述のとおり、興味深いのはルシオさん筆頭にHPが上辺だけじゃない女性起用をしてきた点です。ルシオさんは男性なので
当然、わからないことも多かったと思いますが、それでも、自分で変えていくと決めて取り組み調査した結果、12か月間「変えていくためには」どのポジションにどんな人材が必要かがようやく見えてきたって言うんですからすごいです。

結果的に女性起用が上手く進んだので、消費者に対する広告やイメージ戦略に直接関わる取引先にも女性起用を求めたんですね。非常にシンプルな経緯でしょう。

そうそう、そういえば、アメリカでは購買決定の85%は女性が決めるという調査結果がありまして女性に対するマーケティングの重要性が高まってるんです、という記事をブログに書きました。

せっかくなので、アメリカで叫ばれている、女性マーケティングの重要性をより理解するために日米での女性像の違いなど参考になりそうな実例を前後半で過去のメルマガに書いているのでご興味ある方は以下よりどうぞ。

すでにご購読済みの方は読み直してみると新たな発見があるかもしれません。

アメリカでは購買決定の85%は女性が決める?! 米国の女性マーケティングの現状

メルマガバックナンバー
2014年4月21日配信号
【Vol.084】メルマガ「ニューヨークの遊び方」第84回:米国で高まる「女性マーケティング」の重要性
2014年4月28日配信号
【Vol.085】メルマガ「ニューヨークの遊び方」第85回:米国で高まる「女性マーケティング」の重要性(続編)
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image by: Ken Wolter / Shutterstock.com

 

メルマガ「ニューヨークの遊び方」』より一部抜粋

著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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