小池知事の誤算、都の欺瞞。「豊洲問題」で透ける各々の思惑

 

地下空洞にした明確な理由があるはずなのだが、いまだにはっきりしない。「万が一にそなえ汚染水の浄化ができるモニタリング空間が必要」(都の自己検証報告書)というだけでは、シロウトにはよくわからない。

こんな疑念もわいてくる。地下空洞でいこうということになったのは、盛土にさほどの効果がない証左ではないか。そして、盛土であろうが、地下空洞であろうが、この土地に生鮮市場をつくるということ自体、大きな矛盾をはらんでいるため、誰もが確信を持てる対策を考えることができず、責任逃れに必死なのではないか。

実は、小池知事のつくった「市場問題プロジェクトチーム」のなかに、地下空洞にした理由を説明した建築家がいる。佐藤尚巳建築研究所の佐藤尚巳代表だ。

9月29日に開かれた第1回目の会合で、佐藤は次のように語った。

地下の配管、ダスト類など設備は20年から25年で更新される。巨大な地下に25センチ、30センチといった小空間しかなければ、保守点検が現実的に難しい。それを考えたら、土盛りをせず下から大きな空間をつくっておけば、アクセスして取り替えしやすく、保守メンテ性は格段にあがり、施設は長寿命化する。建物の下に盛土をしたうえで地下ピットをつくるために掘るのと、盛土をせずに下から組み上げる方式とでは、ざっくり計算しても175億円はコストが下がる。

佐藤は建築家として、メンテナンスやコストの観点から地下空間のほうが合理的だと主張する。おそらく、建築設計の専門家なら、そう考えるのが普通なのだろう。

専門家会議は08年7月26日の会合をもって解散し、具体的な工法を検討するための技術会議が同年8月15日からスタートした。

技術会議は非公開で、座長が原島文雄(元首都大学学長)であること以外は、委員の顔が見えず、秘密主義が徹底された。議事録を見ても、発言者が特定されないよう「委員」か「東京都」かの区別があるだけであった。

盛土から地下空洞への変更はこの会議のなかでしっかりと議論されたものではないようだが、都の役人にすれば、盛土案を考えたのも自分たちなら、地下空洞に工法を変えるのも自分たちだという、驕り、慢心があったのではないだろうか。だから、すでに解散した専門家会議に報告する必要も感じなかったのだろう。

まさに「ブラックボックス」というほかない。とにもかくにも専門家会議と技術会議の検証をパスしたので安全、というフィクションを都が主導してつくりあげたのである。

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