小池知事の誤算、都の欺瞞。「豊洲問題」で透ける各々の思惑

 

平田座長は慎重な発言を繰り返している。

【9月17日時事】
都は青果棟など主要施設の地下にたまる水から有害物質ベンゼンは検出されず、環境基準を下回る微量のヒ素と六価クロムが検出されたとの調査結果を発表した。平田座長は「地下水の影響を受けているのでは」とし、たまり水が地下水由来のものであるとの見方を示した。ヒ素などに関しては「環境基準値よりかなり低いので大丈夫」と述べた。

【10月3日読売新聞】
豊洲市場の地下水調査で、環境基準をわずかに上回るベンゼンとヒ素が検出された問題で、都の専門家会議の平田座長は「一時的な上昇で判断するのではなく、今後の推移を見守るべきだ」とのコメントを発表した。平田座長は「(土壌汚染対策後に)地下水中の汚染物質濃度が、変動しながら低下するのはよくある現象」と指摘した。

都幹部と平田座長は、政治的思惑も見え隠れする小池知事の本音と建て前をさぐりながら、微妙な間合いをはかっているように見える。

豊洲の風評悪化で被害を受けるのは卸売業者、とりわけ中小の仲卸業者たちである。いまの状況ではあまりに気の毒だ。小池知事の眼中に彼らの姿はあるのだろうか。

自民党の二階俊博幹事長が小池知事と会った真の狙いは、互いの協力態勢の確認だ。公共事業優先の二階が、内田茂率いる都議会自民党との間を取り持とうというのだ。

小池知事は難題山積の豊洲市場問題について深入りするつもりはもともとなかったのだろう。判断を専門家会議やプロジェクトチームに任せる仕組みをつくってからは、関心を東京五輪に向け、アスリートファーストの姿勢をアピールできる東京五輪ボート会場の変更に熱を入れている

小池知事の東京大改革がどれほどのものなのか、まだはっきり見えてこないが、メディアの過大評価が続く限り、小池知事はジャンヌダルク役を演じるほかなさそうだ。現実との葛藤のなかで、それはそうとうな重荷となってのしかかってくるだろう。

image by: 東京都中央卸売市場

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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