小池知事の誤算、都の欺瞞。「豊洲問題」で透ける各々の思惑

 

ただし、都は盛土案を地下空洞に変えることを隠し通すつもりだったに違いない。せっかく盛土で多くの都民を納得させたのに、その変更を公表したら、メディアが騒ぎ、反対運動が再び大きく燃え上がる。そうなると、沈静化に手間取り、豊洲への移転が大幅に遅れてしまう。

予定通り11月7日に豊洲に市場が移転し、時の経過とともに都民が新市場に慣れ、かつて土壌汚染で騒がれた記憶も薄れれば、地下空洞に変更したことなどどうでもよくなっていくはずだ。そのように思っていたのではないだろうか。

舛添要一知事が失脚し、小池百合子が新知事に当選して、豊洲移転が延期されるなど想像の及ぶことではなかったにちがいない。ましてや、地下空洞の存在が発覚するとは、驚天動地の出来事だっただろう。

彼らに救いがあるとすれば、小池知事が平田座長の専門家会議を招集し、地下空洞の検証を依頼したことだ。もし小池知事が、専門家会議、技術会議の欺瞞性を見破り、全く違うメンバー構成の有識者会議を組織して再検証させたら、おそらく豊洲への移転計画は白紙に戻るだろう。

発がん物質のベンゼン、青酸カリの主成分であるシアン、和歌山毒カレー事件で知られたヒ素、その他、鉛などの重金属。ガス生成の副産物であるそれらの毒物がしみこんだ土地の上に、首都圏の台所を移転させるというのだから、狂気の沙汰である。

巨大利権がからむ築地の豊洲移転と跡地再開発の流れに小池知事が「待った」をかけているように見えているが、すでに小池知事は移転を開始するための準備をしている。

その一つが「地下水モニタリング」の最終結果待ちであり、もう一つは地下空洞発覚後に急きょ再設置した「専門家会議」による安全判断である。

小池知事が、ほんとうに石原知事時代からの膿を取り除きたいと思うのなら、場合によっては豊洲移転を白紙に戻すくらいの覚悟を決め、厳しい安全評価のできる有識者会議に検証を委ねたうえで、石原元知事をはじめ計画決定にかかわった人々の雁首を揃えて、テレビカメラの前で、説明責任を果たさせるべきだろう。

ところが、石原都知事時代の膿を出すどころか、豊洲の計画に安全性のお墨付きを与えた専門家会議を復活させたのである。

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