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道徳をなくした日本を救う、声に出して読みたい寺子屋の教科書

「仏教は性善説、キリスト教は性悪説」などと言われたりもしますが、みなさんはどちらのスタンスでしょうか。無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、中国の初学者向けの教科書で、江戸時代に寺子屋でも使われていたという『三字経(さんじきょう)』について、齋藤孝先生がレクチャーしてくださっています。悪人を「きちんとした教えを受けていない人」と説くこの書物の「教え」は、私たちの忘れかけていた大切なことを思い出させてくれそうです。

寺子屋の子どもたちが夢中になって読んだ本

齋藤孝先生が今回、紐解いてくださったのは、中国の宋代につくられた初学者向けの教科書『三字経』です。江戸時代、日本の寺子屋でも教科書として用いられ、子どもたちに、人としての生き方を説いてきました。

漢字三文字×四行を基本として一つの話が構成される、ユニークな『三字経』。実際にどのような内容なのか、本書からその一部をご紹介します。

気を散らさずに集中して学ぶ

苟 不 教 (苟くも教えずんば)

性 乃 遷 (性乃ち遷る)

教 之 道 (教えの道は)

貴 以 専 (専らを以て貴ぶ)

 

《大 意》

本来は善であるはずの人の本性も、教え導かないとどんどん悪いほうに変わっていってしまう。

 

だから教えることは大切であるし、教えを受けて学ぶことも大切である。

 

そして、教えを受けるときには、あちこちに気を散らさずに学ぶことに集中する。これが最も大切である。

もともと人間は善なる性質を持っているはずです。悪いことをしようと思う赤ちゃんはいませんし、いたずらっ子の幼稚園児でも悪事を働こうとは考えません。それなのに、だんだん悪くなってしまう人がいるのはどうしてなのでしょうか。それは、きちんとした教えを受けたことがないからだと、ここではいっています。

少年院の教官をしている方から聞いた話ですが、少年院に入る子の多くは、正しく箸や鉛筆が持てないというのです。また、集中して本を読むことができない子が多いそうです。彼らは家庭教育の中で箸の持ち方や鉛筆の持ち方、本を読む力といった基本的なことを教えられないまま成長してしまったのです。きちんと箸を持って食べ、鉛筆を持って書き、本を読むことができるようになるためには、それらの大切さをしっかり教えてくれる人が必要です。

昔、インドの山中でアマラとカマラという狼少女が発見されました。彼女たちは幼い頃、親に捨てられて、狼に育てられたといわれます。そのため、狼のような唸り声をあげ、四足で歩きました。狼の生活様式を教えられて、狼として育ったのです。良し悪しを問わず、人間にとって教えの影響力は大きなものです。狼に育てられれば、人は狼のようにもなるのです。だから、幼い頃からしっかり教えなくてはいけない。そして、教わる側は心を集中して学ばなくてはいけません

「やると決めたら途中で放り出さずに最後までやりなさい」と『三字経』はいっています。それが「専らを以て貴ぶ」という言葉です。たとえば問題集をやり始めて、最初はやる気になっていたけれど、10ページも進まないうちに「ああ、やめた」というのは「専ら」とはいえません。

身近な例でいうと、勉強の最中にラインが来てレスポンスしなければと気になって仕方がない。そういうときに、「専らでない人は勉強に集中できずについレスポンスをしてしまいます。それによって勉強が中断してしまうわけです。これではいくら勉強しても身につきません

善なる性質を引き出すには真剣に学ばなくてはいけません。気を散らしている人はなかなか立派な人間にはなれないのです。だから「専らを以て貴ぶ」。SNSなどに気を散らさないで、集中して勉強をする時間をつくることが大切だということです。昔も今も、これは変わりません。

 

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