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調布飛行機事故はなぜ起きたのか? 原因解明の鍵を握るのは「異音」

26日に調布市で起きた小型飛行機墜落事故から1日、偶然撮影された離陸直後の動画や被害状況から、エンジントラブルが原因との専門家の指摘がありますが、別の視点で解説するのは作家で航空機に詳しい大石英司さん。メルマガ『日刊 大石英司の代替空港』からご紹介します。

調布飛行場事故

小型機が民家に墜落、3人死亡5人重軽傷…調布
エンジントラブルの可能性を指摘…専門家ら

GQの編集者の方がプライベートで乗っていて重傷を負われたという情報もありますが、「GQ」は今どこが出しているんだろう。

乗客を含めて、小型機に乗る皆さんは、自己責任だから致し方無い部分はあるけれど、地上で巻き添えになった方はなんともお気の毒です。犬を助けて逃げ遅れたな話もありますが、まだ30歳代の女性のようで。

事故原因は、大別すると3つに別れます。

1.VR速度が達していなかった
当日の気温と重量を計算してVR速度を弾いたのに、いざローテーションする段になり、もっと速いスピードで機体引き起こしすることをすっかり失念して(速度計には、その都度V1とVRを解り易くマーキングできる)、うっかりいつもの速度でローテーションしてしまい、結果として失速墜落した。あるいは、そもそも計算を間違えた。民航機でも、重量計算を間違えて離陸失敗して墜落という事故は過去に数件あります。他にも、何かの機械的なトラブルで、滑走速度を誤認する情報が表示され、早めにローテーションしてしまった可能性もある。

2.エンジン・トラブル
そのエンジン・トラブルの可能性の中には、気温上昇に伴う、諸々の燃料やオイル関係のトラブルが因果関係の引き金になった可能性もある。ハンガーの中にいたのかどうか、この高気温の中で、長いこと飛んでいなかったというのが気になります。

3.舵の故障
何らかの原因で舵やエレベータ他がロックしてしまい、リカバリーできずに墜落した。

>>次ページ 墜落場所と滑走路の位置から見えてくる疑問点

左旋回は無かった? 動画を見ると、いかにも左旋回しているように見えるんですね。少なくとも左へ飛んでいるように見える。事故直後、盛んに、左旋回していると報道されたけれど、実際に墜落場所と滑走路の位置を確認して見ると、左旋回したとは言い難い。最後に何らかの捻りが加わった結果として、左へ傾いて、滑走路の延長線上より、やや北東側に墜ちたかなという感じです。それを考えると、ほとんど真っ直ぐ飛んでいたけれど、最後には失速してすとんと墜ちた感じがしないでもない。

一つの可能性としては、滑走路を走っている途中でパワーが出ないことに気付いた。ところがもうV1を超えて、ひとまず離陸するしかない。でも離陸は出来たけれども、速度は全然足りていないから、失速してしまった。

いずれにせよ、原因がエンジン・トラブルなら、動画にエンジン音が残っているから、検証は容易でしょう。

もう一つ気になっているのは、巨大な火災です。昔と違って、エンジン一基の性能が上がり、単発機も大型化しました。大型化するということは、燃料を余計に積めるということです。それが地上で炎上すると、大きな被害をもたらす。ただ、それでも航空燃料というのは、ガソリンほど簡単に着火はしないものです。もちろん地上側にも着火の要因はいくらでもあるけれど、もしエンジンを確実にシャットダウンできていたなら、燃料は四散しても、火災は免れていたかも知れない。

もちろんあの状況では、エンジンをシャットダウンする余裕は無かったことでしょう。しかし逆に考えると、実は墜落時に、エンジンが動いていた可能性は高い。それが正常だったか否かは別にして。

ビデオ映像を見て、普段より離陸高度が低いという解説なり証言がありますが、正直、あの角度で撮られたビデオだけで映像解析なくそれが判断できるかな、という疑問はあれど、気温と重量増でいつもより高度が上がらなかった。パワーが出ずに、高度が上がらなかった、等の理由は考えられるでしょう。

エンジン音が普段と違ったという地元民の証言もありますが、これはビデオから周波数を解析して分析すればすぐ解ることです。

あと、地元住民の証言は、当てに出来る時と出来ない時があります。その見極めは非常に難しいです。なぜなら、地元民と言えども、マニアや、それを見分ける聞き分ける訓練を受けているわけではないし、時間経過と報道によって徐々に記憶にバイアスが掛かっていく。いずれにせよ、今回は、「」という最強のエビデンスが残っているから、それが事故原因の解明に役立つでしょう。

ところで、地元との協定があるとは言え、離島定期便も飛んでいる飛行場で、管制官がいないってちょっと今時、非常識よね。いい加減改善しないと。戦後日本て、一度決めたことを不磨の大典みたいに扱うからやっかいですね。とりわけ地元協議というのは鉄板みたいに動かせない。

image by:Wikipedia

 
『日刊 大石英司の代替空港』2015.7.27号より一部抜粋

著者/大石英司
作家、鹿児島県出身、川崎市高津区在住。国内外の注目ニュースに関して alternative な視点を提供するメルマガはビジネスマンなら必読です。
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