調布飛行機事故はなぜ起きたのか? 原因解明の鍵を握るのは「異音」

 

左旋回は無かった? 動画を見ると、いかにも左旋回しているように見えるんですね。少なくとも左へ飛んでいるように見える。事故直後、盛んに、左旋回していると報道されたけれど、実際に墜落場所と滑走路の位置を確認して見ると、左旋回したとは言い難い。最後に何らかの捻りが加わった結果として、左へ傾いて、滑走路の延長線上より、やや北東側に墜ちたかなという感じです。それを考えると、ほとんど真っ直ぐ飛んでいたけれど、最後には失速してすとんと墜ちた感じがしないでもない。

一つの可能性としては、滑走路を走っている途中でパワーが出ないことに気付いた。ところがもうV1を超えて、ひとまず離陸するしかない。でも離陸は出来たけれども、速度は全然足りていないから、失速してしまった。

いずれにせよ、原因がエンジン・トラブルなら、動画にエンジン音が残っているから、検証は容易でしょう。

もう一つ気になっているのは、巨大な火災です。昔と違って、エンジン一基の性能が上がり、単発機も大型化しました。大型化するということは、燃料を余計に積めるということです。それが地上で炎上すると、大きな被害をもたらす。ただ、それでも航空燃料というのは、ガソリンほど簡単に着火はしないものです。もちろん地上側にも着火の要因はいくらでもあるけれど、もしエンジンを確実にシャットダウンできていたなら、燃料は四散しても、火災は免れていたかも知れない。

もちろんあの状況では、エンジンをシャットダウンする余裕は無かったことでしょう。しかし逆に考えると、実は墜落時に、エンジンが動いていた可能性は高い。それが正常だったか否かは別にして。

ビデオ映像を見て、普段より離陸高度が低いという解説なり証言がありますが、正直、あの角度で撮られたビデオだけで映像解析なくそれが判断できるかな、という疑問はあれど、気温と重量増でいつもより高度が上がらなかった。パワーが出ずに、高度が上がらなかった、等の理由は考えられるでしょう。

エンジン音が普段と違ったという地元民の証言もありますが、これはビデオから周波数を解析して分析すればすぐ解ることです。

あと、地元住民の証言は、当てに出来る時と出来ない時があります。その見極めは非常に難しいです。なぜなら、地元民と言えども、マニアや、それを見分ける聞き分ける訓練を受けているわけではないし、時間経過と報道によって徐々に記憶にバイアスが掛かっていく。いずれにせよ、今回は、「」という最強のエビデンスが残っているから、それが事故原因の解明に役立つでしょう。

ところで、地元との協定があるとは言え、離島定期便も飛んでいる飛行場で、管制官がいないってちょっと今時、非常識よね。いい加減改善しないと。戦後日本て、一度決めたことを不磨の大典みたいに扱うからやっかいですね。とりわけ地元協議というのは鉄板みたいに動かせない。

image by:Wikipedia

 
『日刊 大石英司の代替空港』2015.7.27号より一部抜粋

著者/大石英司
作家、鹿児島県出身、川崎市高津区在住。国内外の注目ニュースに関して alternative な視点を提供するメルマガはビジネスマンなら必読です。
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