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遺された家族の年金が月4万円も増える「遺族厚生年金」とは?

ご好評いただいた前回掲載記事「年金額が月に3万円もUPする『配偶者加給年金』を知っていますか?」に続き、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』で紹介されているのは「遺族厚生年金」。著者のhirokiさんによると、遺族厚生年金をもらう際も、死亡した人に20年以上の厚生年金期間があると受取額が上がるのだそうです。具体的な事例で解説されていますので、わかりやすさも抜群ですよ。

厚生年金期間20年以上ある夫が死亡した場合の、妻が受給する遺族厚生年金はグッと手厚くなる

このあいだ、厚生年金期間が20年以上あって65歳未満の配偶者が居ると、390,100円の配偶者加給年金が付く話をしました。

年金額が月に3万円もUPする「配偶者加給年金」を知っていますか?

今回は遺族厚生年金について。遺族厚生年金を貰うという事態になった時も、死亡者に20年以上の厚生年金期間があると遺族厚生年金額がグッと高くなります。プラスされる額は585,100円月額48,758円)。ただし、遺族厚生年金の増額は妻が貰う場合に限ります。

というわけで事例~(^-^)/

1.昭和44(1969)年11月生まれの夫(今月47歳)が12月死亡。死亡時は自営業で、国民年金に加入中。

ア.年金記録は年金に加入する年齢である20歳になる平成元(1989)年11月から4年生大学を卒業する平成4(1992)年3月までの29ヶ月国民年金(国民年金保険料納付済)。

※注意

昼間学生は平成3年3月までは国民年金には強制加入ではなく任意加入。任意加入してなかったらカラ期間として原則の25年の年金記録に組み込む。定時制(夜間)、通信は任意加入ではなく元々強制加入。専門学校は昭和61年4月から平成3年3月まで任意加入で、任意加入してなかったらカラ期間

イ.平成4(1992)年4月~平成26(2014)年3月までの264ヶ月は厚生年金。

ウ.平成26年4月から平成28年10月までの31ヶ月は国民年金(国民年金保険料納付済み)。

平成4年4月から平成15年3月(→132ヶ月)までの平均標準報酬月額(とりあえずこの期間に貰った給与を全て足して132ヶ月で割って平均と考えてもらえれば)は350,000円とします。

平成15年4月から平成26年3月(→132ヶ月)までの平均標準報酬額(この期間に貰った給与と賞与をすべて足して132ヶ月で割って平均したものと考えてもらえれば…)は480,000円とします。

平成15年月3と平成15年4月で分けてるのは、平成15年4月以降は賞与も年金額に反映するようになったから。平成15年3月までの賞与には特別保険料として1%引かれていましたが、年金には反映させてはいませんでした。

2.妻は昭和54(1979)5月生まれ(現在37歳)。子供は1人→平成16(2004)年10月生まれ(現在12歳)。

一体、妻はいくらの遺族年金が貰えるのか? 遺族厚生年金は死亡者から見て原則としては、配偶者父母祖父母の順で最優先順位者が受給する。配偶者と子は同じ第1順位者ですが、配偶者が支給優先する。配偶者に支給されてる場合は子に対する遺族年金は停止中。父母以下は、配偶者や子が遺族年金貰える権利を得たらもう貰う権利は消滅

死亡した夫は全体の年金記録としては25年以上(死亡時点で324ヶ月)を既に満たしているので、老齢厚生年金の受給資格期間を満たしています。そして、厚生年金期間は20年以上(264ヶ月)有り。

まず遺族厚生年金額をざっくりとですが算出(^^;;

(350,000円÷1,000×7.125×132ヶ月+480,000円÷1,000×5.481×132ヶ月)÷4×3=(329,175円+347,276円)÷4×3=507,338円月額42,278円)。

そして、18歳年度末未満の子が居るので、国民年金から遺族基礎年金780,100円+224,500円(子の加算額)=1,004,600円月額83,716円)。

遺族基礎年金を貰える遺族は、18歳年度末未満の子供がいる配偶者、または、18歳年度末未満の子供のみ。

※注意

子は20歳未満の1、2級の障害等級に該当する子も含む。障害手帳の等級とは関係無い。

よって、子が18歳年度末を迎えるまでは遺族厚生年金507,338円+(遺族基礎年金780,100円+子の加算額224,500円)=1,511,938円月額125,994円)となります。

そして子が高校卒業する18歳年度末を迎える頃(平成35年3月31日)、妻は43歳。

平成35(2023)年3月分をもって、遺族基礎年金の支給は終わり1,004,600円の年金は無くなり、遺族厚生年金507,338円月額42,278円)のみとなります。

しかし、この夫に20年以上の厚生年金期間があったから、585,100円アップします。この585,100円は中高齢寡婦加算という(定額)。

だから平成35年4月分からは、遺族厚生年金507,338円+中高齢寡婦加算585,100円=1,092,438円月額91,036円)となります。

※参考

もし、死亡時点で18歳年度末未満の子供が居なくても死亡時点で妻が40歳以上だったら中高齢寡婦加算が加算される

なお、共済組合期間が20年以上ある人の死亡だったり、厚生年金期間と共済組合期間併せて20年以上満たしている人の死亡でも構いません。

ちなみに、よく遺族厚生年金は厚生年金に300ヶ月加入したものとして計算されると言われますが、今回は実期間である264ヶ月で計算してます。

300ヶ月加入したものとみなすのは、あくまで厚生年金や共済組合に加入中に死亡したとか障害厚生年金2級以上の受給権者が死亡した等の場合(短期要件という)なので、今回みたいに死亡時に国民年金に加入していて、かつ、老齢厚生年金を貰うための全体の受給資格期間25年以上を満たしている(長期要件という)ような場合の人は300ヶ月とみなして計算はしません。

短期要件と長期要件(日本年金機構)

で、その中高齢寡婦加算585,100円は妻が65歳になるまで付き続けます。65歳になると585,100円は吹っ飛びます(笑)。まあ、妻が昭和31年4月1日以前生まれなら妻の生年月日に応じて加算金が付き始める事はあります(経過的寡婦加算という)。

※注意

遺族年金は再婚内縁関係含む)したり、直系血族または直系姻族以外の人の養子縁組(事実上の養子縁組含む)をすると消滅します。再婚後に離婚したからって復活する事はありません。

でも65歳になれば普通は妻自身の老齢基礎年金(満額なら780,100円)が貰えるから年金受給総額としては増える事になるかもしれないし減る事になるかもしれないし、そこは妻の年金保険料納付状況次第ですね~(^^;;

※追記

この夫は国民年金保険料納付済期間合わせると死亡月の前月までの間に60ヶ月あります。国民年金保険料を納めた期間が36ヶ月以上ある場合は死亡一時金(あと60歳から貰える寡婦年金というのがありますが今回は割愛)が、国民年金から独自給付として国民年金保険料掛け捨て防止として設けられています。

今回の事例だと、国民年金から遺族基礎年金が出ているので掛け捨て防止の死亡一時金は支給されませんが、もし18歳年度末未満の子供が居なくて遺族基礎年金が支給される場合が全くないのであれば支給される事があります。

支給額は国民年金保険料納付状況(免除期間も含むが36ヶ月以上の月数を数える場合は注意が必要。全額免除とかは月数に入らない)により異なりますが、一時金は最低120,000円最高320,000円までです。

国民年金独自給付の死亡一時金と寡婦年金(日本年金機構)

この妻の場合は貰うとすれば、金額は120,000円です。

なお、36ヶ月以上付加保険料も納めている場合は死亡一時金に一律8,500円プラスされます。

付加保険料というのは、月々の国民年金保険料と合わせて月400円納めると将来の老齢基礎年金に付加年金として上乗せされる年金。例えば付加保険料を300ヶ月納めていたら、200円×300ヶ月=年額60,000円の付加年金になる。

付加年金(日本年金機構)

image by: Shutterstock

 

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