Googleが開発した人工知能が見る夢「Deep Dream」が世界中で話題となっています。AIによって人工的に生成された画像というのが、まさに悪夢そのもの。『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』のイラストレーター・吉井宏さんが、実際に「Deep Dream」を使用したレポートを報告しています。……人によっては“閲覧注意”な画像もあるかも。
悪夢画像の衝撃!
先月から話題になっている、Googleが開発した人工知能が見る悪夢「Deep Dream」。くわしい解説はリンクを読んでいただくとして、簡単に言うと「人工知能に画像認識させ、今まで学習した膨大な画像を参考に、何が見えたか描かせるもの(たぶんw)」。
普通は写真の不明瞭な部分は画像認識できないんだけど、「何でもいいから何に見えたか描けっ!」って感じでムリヤリ認識させる感じかな? 不明瞭な写真どころか、砂の嵐のようなノイズ画像でさえ「何が見えた?」ってしつこく問われるので、人工知能は一生懸命に自分の知っている何かに似てないか探して画像上に表現する、という仕組みらしい。
NAVERまとめ「人工知能の見る悪夢『Deep Dream』で生成された画像集」
最初にこれで生成された画像を見たときのショックはすごかった。まさに夢、というか悪夢。夢って、頭に浮かんだ映像からの連想で次から次へ幻想が展開されていく感じだと思うから。
また、20歳頃に興味を持って以来、古今東西いろんな幻想絵画を見てきたけど、Deep Dreamはダントツにすごい。連想の自由度という点で、これを超える幻想絵画は見たことない。
連想で浮かぶものを画面に無制限に定着させていくってのは、どこかで歯止めが効いちゃったり「構図や構成的・辻褄的にこれはないわ」ってなっちゃうんだけど、Deep Dreamは歯止め効いてないw
アウトサイダーアートやアール・ブリュット、薬物影響下の人の絵も似たような感じの、歯止めが効いてない凄みや怖さがあるけど、その点でも負けてない。
「歯止めが効かない系の絵」は、人間は人工知能にかなわなくなってくるんじゃないか? 今の段階では連想の元ネタ画像が少ないらしく、表現されるものの幅が狭いんだけど。
動画バージョンは悪夢そのもの
悪夢画像のショック覚めやらぬうちに、今度は動画が出てきた。これこそ、悪夢! 逃げ出したくなるような怖さ。まあ、連想で出てくる画像の元ネタが気色悪いものが多すぎる傾向はあるから、「楽しいものばかり見えるバージョン」も見たいw まあ、犬やネズミや鳥がちょっと可愛かったりするw
こちらは、ピザのCMの動画をDeep Dreamで処理したもの。途中から何の映像だったか忘れてしまい、毛の生えた塊を持ち上げたり液体に突っ込むところでハッと我に帰る始末w 「何だこれは? あっそうか、ピザだった」。ムービーに最初からある圧縮ノイズを拾うのか、固定された犬がいくつもあるのがちょっと残念。ちゃんと1フレームずつ処理してるのかな? っていうか、猫を増やしてほしい~。
静止画だけでなく、動画も連想の素材として使えるようになったらもっとおもしろくなりそう。
Deep Dreamを使ってみた
この人工知能悪夢を、自分がアップした画像を元に生成できるサービスが始まった。
このサイト。画像をアップすると、「印象派的線描画」と「悪夢」の二枚が生成される。もちろん後者にしか興味はないw
時間帯によってぜんぜん繋がらなかったりめちゃくちゃ遅かったりする。ときたま非常に快調に、何枚でも次々に処理されることもある。一枚を数分で処理できることもあるので、連番の動画を一枚ずつ処理して動画を作れるかもしれない。数日かかって約70枚の画像を処理してみた。後半でいくつかアップしました。
コツっぽいものなど
70枚もやると、どんな感じに悪夢が生成されるか、だいたい予測できるようになってくる。コントラストのはっきりしたイラストや写真、またはモノがはっきり写っている写真などは向いてない。余白やのっぺりした部分にマチエールのように「目」が連なるだけで、あまり面白くならない。
ゴチャゴチャとした木や不定形の雲や影などのほうがだんぜん面白くなる。Photoshopの雲模様なども「それっぽく」なるようだ。また、ガウスぼかしで不明瞭にしてからアップするといい結果になることが多い。ボカしの強度によっても結果がちがう。
画像のサイズによって処理時間や生成される悪夢の状態がかなり変わるようだ。僕の感じでは800pixel程度の画像がバランスがいいような気がする。
悪夢作品集w
いろんな画像を処理した70枚から、面白いものを選んでみた。リンクは上がDeap Dream、下が元画像。
・2Dイラスト
初期にやってみたものの一枚。やはり画像認識しづらそうな部分が面白くなるようだ。
雲の部分に塔が見えるのはいかにも典型的なDeep Dream。元画像にはまったく無い地上部分の不思議なクルマや人影が面白い。川にちゃんと船を浮かべてあるのがオカシイw
川の写真の右下の動物の集団部分を切り抜いて、再びDeep Dreamしてみるテスト。数度繰り返してみたけど、アンシャープマスクをきつくかけるような感じになるばかりで、絵柄の変化はなかった。
・駐車場の木
これも鳥や動物が満載のDeep Dreamらしい画像になった。木の下にいっぱいいる人物は元の写真には無い。木の下には人がいるもんだっていう人工知能の先入観によるもの?
・桜の花
桜の花びらがいい具合に犬などの動物に変化。
・水槽の熱帯魚
魚の下部や背景に不気味なものがたくさんいる。
白くて微妙な立体感のあるものを試してみた結果。元が何なのかわかんないよね。制作中の立体作品と、右下は「ドゥーボーイ」のフィギュアの後ろ姿の写真。後頭部に顔が生成されてるのがイイ。
・幻想絵画
禁じ手? ウィーン幻想派の画家、エルンスト・フックスの画集のモノクロ絵のページを撮った写真。もともとDeap Dreamっぽい彼の絵を処理すると、カラーが混じったさらに面白い絵に生まれ変わった~!
・3DCGの画面キャプチャ
MODOで作成中のTDWキャラクターのキャプチャ画像から。ポリゴンのラインに反応したり、鼻部分にディテールが追加されていたり、ニョロニョロと何かが生えてたり。
・TDWキャラクター
TDWキャラは明快すぎるためか、普通にDeep Dreamにアップしてもあまり面白くならないが、ボカした画像だとそれなりに面白くなる。ボカしなし、少しボカし、大きくボカしの三種。
・雲模様などぼんやり画像
Photoshopの雲模様、エアブラシで描いたふわふわ、文字をボカしたもの。「目」ばかり目立つけど、そこそこ面白い。
・チョコレート
食べ物の写真が元だとインパクトあるよ! 見事に犬が生成されてるw
・お膳の料理
何の料理なんだ? キモチワル~~~ww
・中華あんかけ焼きそば
いろんな生き物が鮮明に生成されてて、新鮮な海産物って感じだから火は通ってないねw
以上。たくさんの画像を処理してみると、見慣れたモチーフが繰り返し出てくるのでさすがに飽きてくるw もっと自在に無数のモチーフから生成されるといいんだけど。もちろんアップデートしていくんだろうな。Photoshopのフィルタになったりしてw
おまけ
印象派的画像でおもしろかったもの。
・風景や白いもの
・TDWキャラクター
『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』
デジタルメディアで活躍する現役クリエイターたちのコラムで構成されている本格派。総発行部数約16000! 真のクリエイターを目指している方からデジタルに関わる方まで、すべてに向けて発行中!
≪登録はこちら≫