【書評】米露中という「猛獣」に囲まれた日本は「老子」が救う

 

実は栄える老子の戦略

話を元に戻します。「反グローバル化」「ナショナリズム」の時代。世界には、個性と我が強いリーダーがたくさん出てきています。日本は、トランプ、習近平、プーチンのような猛獣」とどうつきあっていけばいいのでしょうか? 「老子」に聞いてみましょう。61章。

大國者下流。天下之交、天下之牝。牝常以靜勝牡。以靜爲下。故大國以下小國、則取小國、小國以下大國、則取大國。故或下以取、或下而取。大國不過欲兼畜人、小國不過欲入事人。夫兩者、各得其所欲、大者宜爲下。

どひゃ~、わけわかりません。黒澤先生の訳は。

大国は、大河の下流。すべての流れが交わるそこは、世界中が慕う女性のようなもの。いつの時代も、男が女性に敵わない理由は、女性が、じっと静かに下手に出るからだ。大国だからこそ、ものごし静かに小国にへりくだって接することだ。そうすれば、小国からの信頼が得られる。そしてまた、小国の側もへりくだって大国に接すれば、大国の信頼を得ることができる。

どうですか、これ? 日本は、小国ではありませんが、とにかく、大国には「へりくだって接すればいい」と。私は、本当に、「そのとおりじゃないか!」と思います。日本のいわゆる「専門家」は、口を開けば、

「日本はもっと自己主張せよ!」
「日本は、もっと貪欲に国益のための戦え!」

などといいます。日本は、「戦後、自己主張もやめ、国益のために戦うこともやめた」と。そうはいいますが、第二次大戦後の45年間、世界でもっとも成長しもっとも繁栄したのは日本です。

日本は戦前、戦中、強気で自己主張し、国益のために戦い、そして敗北しました。(例、国際連盟加盟国42か国が「満州国」建国に反対。日本は、自説を曲げず、連盟を脱退した)。しかし、「老子的」になった戦後は大繁栄することができた。

もう一国、日本と同じ境遇の国がありました。西ドイツです。西ドイツも、戦後「老子的生き方」を強いられました。西ドイツは1990年、東ドイツを吸収。そして、いまでは「EU=ドイツ帝国」といわれるほど力をつけている。

もう一国、「老子的外交」で成功した国があります。意外なことに、09年以前の中国です。中国は、「平和的台頭」を掲げ、日本以外の国から警戒されることがほとんどなかった。結果、1980年から30年間発展をつづけ、2010年には日本をぬきGDP2位に踊り出ます。しかし、09年、「独り勝ち」になり、傲慢になった中国は、「老子的」路線を捨て去った。そして、習近平は、「世界皇帝」のごとく、ふるまうようになった。「老子を捨てた中国はボロボロですね。

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