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携帯3社が相次いでドローンビジネスに名乗り。カギは「圏外」対策

なかなか日本で定着しないドローンを活用したビジネスですが、携帯電話の大手3キャリアがこの分野に参入するようです。3社それぞれサービス内容に違いはありますが、ケータイ/スマートフォン・ジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、3社に共通するドローンビジネスが成功するかどうかのカギとして、「地方」と「圏外対策」の2点を挙げています。

キャリア3社が相次いで、ドローンの活用に着手 ━━ 上空100メートルの「圏外」対策はどうするのか

キャリアのドローンに対する取り組みが盛り上がりを見せている。

NTTドコモは、福岡市内と2.5キロ沖合にある能古島でドローンを飛ばし、島内にいるシニアや家族向けに買い物をサポートする事業の実証実験を行っている。

また、KDDIも地図会社のゼンリンなど組んで、3次元地図を作り、セルラー網経由での自律走行を実現する「スマートドローンプラットフォーム」の開発に着手。ソフトバンクはドローンを無線中継基地として活用し、冬季の山岳や遭難事故による遭難者の救出に役立てるという。

各社とも、5G時代に向け、セルラー網を活用し、目視外飛行によるドローンでのビジネスチャンスを模索しているようだ。

ただ、2015年改正された航空法によって、ドローンを飛ばせる場所がかなり限られている状態にある。空港等の周辺の上空、人口密集地区の上空、150メートル以上の高さの上空で飛ばすには、予め国土交通大臣の許可が必要となる。

実際、地図で調べてみても、都内の屋外で飛ばせる場所と言えば東京都の遙か西、八王子市やあきる野市まで行かないと飛行場所を確保できない。もちろん、関東の人が多く住むところは全滅。地方でも街中は無理な状態といえる。都心部で気軽に飛ばせないようだと、ドローンにビジネスチャンスがあっても、その範囲は限定的だ。

キャリア各社は、セルラー網を使うことで「全国規模のエリア」で飛ばせることをアピールするが、これまでのネットワーク展開は、あくまで「人がいる地上」を前提としている。

基地局から飛ばしている電波は、地上にいる人もしくはビルのなかに居る人に向けられている。地上に向けた電波においては「人口カバー率99%以上」であっても、それが100メートルを超える上空となれば、本来、基地局からの電波はそうした高さを想定していないわけで、人間にとって「エリア」であっても、ドローンからすれば「圏外」という可能性もありえる。

仮に圏外であっても、ドローンはGPSで位置情報を測位するので、予め決められた場所なら飛行できる。圏外になり、LTEの電波をつかまなくなっても、すぐに飛行できなくなる、というものでもない。しかし、カメラで撮影している映像をセルラー経由で中継する、となれば、飛行場所がしっかりとエリアされているかどうかが重要となってくる。

手軽に飛ばせる場所となれば、ルーラルエリアとなるが、一方で、ルーラルエリアとなれば、「上空まで電波が飛んでいるか」という点が不安要素となっている。

また、NTTドコモは離島に住む人向けの買い物サポートとして、福岡・能古島で実証実験をやっているが、実際に能古島に行ってみると、朝夕の通勤・通学時間には30分に1本、日中も1時間に1本、連絡船が能古島と福岡市内を往復している。わざわざ、多くの人手を使い、ドローンを飛ばして、離島に商品を届けるよりも、連絡船に乗せてしまった方が、はるかにコスト面で安上がりになるはずであり、そこにドローンの出番はないように思える。

アーバンエリアでのビジネス展開がすぐには着手できない中、「いかにルーラルエリアで、電波を確保しつつ、儲かるビジネスモデルを探すか」が、キャリアのドローンビジネスには求められそうだ

image by: Shutterstock

 

石川温の「スマホ業界新聞」』 より一部抜粋

著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)
日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
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