現役医師だから語れる、インフル患者が病院に行くことのリスク

 

迅速抗原検査の欠陥とは

一方で、日本におけるインフルエンザ患者の受診理由として、もう一つ問題があります。検査目的の受診です。鼻の奥に綿棒を挿入して鼻汁を採取して行う、インフルエンザウイルス迅速抗原検査です。

しかしながら、この検査には欠陥があります。検査の感度が低く偽陰性(見逃し)の割合が多いということです。これまでの臨床データによると、感度は60から70パーセント程度という結果が出ています。すなわち、この検査では30から40パーセントのケースはインフルエンザ診断が見逃されるのです。

このような重大な欠陥がある検査を信頼してはいけないのです。多くの職場でこの検査で陽性結果が出なければ病気休養を取れないというルールを設定しています。そのルールには2つの点で問題です。一つは、インフルエンザにかかった可能性がある健康な人々を病院に行かせることで二次的な感染拡大を促している点。そして二つ目は、この検査で偽陰性結果(見逃し)となった人々に病気休養を与えずに職場での勤務を続けさせて職場内の他の人々にも感染拡大を広げてしまう点です。

お勧めのインフルエンザ対策

それでは、若くて健康な人々がインフルエンザにかかったなと思ったらどうするか。それは、自宅で休養してください、ということです。水分と栄養を補給して十分に睡眠を取りましょう。呼吸困難や頻呼吸、意識障害などのときにはもちろん医療機関への受診をお勧めします。

インフルエンザ対策でもっとも重要なことは予防です。毎年のインフルエンザ予防接種は健康な人々も含めてみんなに受けるとよいでしょう。また、流行期にはなるべく人混みを避けて徹底した手洗いを行うとよいですね。

 

文献

Watanabe A, Chang SC, Kim MJ, Chu DW, Ohashi Y; MARVEL Study Group.Long-acting neuraminidase inhibitor laninamivir octanoate versus oseltamivir for treatment of influenza: A double-blind, randomized, noninferiority clinical trial. Clin Infect Dis. 2010 Nov 15;51(10):1167-75.

image by: Shutterstock.com

 

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