もしもお子さんが公共の場で大声を上げながら走り回ったとしたら、あなたならどう対応しますか? 無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』の著者で『「叱らない」しつけ』の著書もある教育評論家の親野智可等(おやの ちから)先生は、病院で見かけたとある親子の姿を例に挙げ、本来の「叱らないしつけ」について記しています。
病院で大声を出しながら走り回る子。放っておくのが「叱らないしつけ」?
病院の中で大声を出しながら走り回る男の子2人。お母さんは、ニコニコしながら「走っちゃだめよ~」と1回言っただけで、スマホの画面に没頭、後は野放し。
このお母さんは、子育て本に「子どもを叱らないように」と書いてあったからそうしている、とでも言うのでしょうか?
これがあなたの子どもだったら、こういうときどうしますか?
私も『「叱らない」しつけ』という本を書いていますが、こういう状況で野放しにすることをお薦めしているわけではありません。
このままでは周りに大きな迷惑をかけます。誰かにケガをさせたりでもしたらとんでもないことです。
こういうとき、親はまず子どもを止めなければなりません。当たり前のことですね。
次に、子どもと同じ目の高さになるようにしゃがみます。そして、落ち着いた静かな声で言います。
親「ねえ、ここはどこかな?」
子「病院だよ、病院」
親「そうだね。病院だね。じゃあ、どんな人がいるかな」
子「いろんな人がいる」
親「そうだね。いろんな人がいるね。お年よりもいるね」
子「うん、いる。いっぱいいる」
親「あのね、お年よりには骨が弱くなっている人もいるからね。あなたが走ってぶつかってころんだりすると、骨が折れちゃうこともあるんだよ」
子「え、そうなの!?」
親「そうだよ。それでもう歩けなくなっちゃうこともあるんだよ」
子「……」
親「歩けなくなっちゃったら、おばあさんやおじいさんはどういう気持ちになるかな?」
子「悲しい気持ち」
親「そうだね。じゃあ、そうならないために、あなたはどうしたらいい?」
子「走らないで、気をつけて歩く」
親「そうだね。ありがとう。よくわかってくれたね。ママ、うれしいよ」
このように、本人が「本当にそうだな。気をつけよう」と思えるように諭すことが大切です。
感情的かつヒステリックに叱りつける必要はありません。
それに、そういうやり方では、子どもの内面に働きかけることはできませんし、子どもの成長にもつながりません。
最後に1つ付け足しです。こういうとき、大人はついイライラして、立ったまま話してしまうことが多いと思います。
そうではなく、ぜひしゃがんで子どもと目の高さを合わせてください。すると、話し始める前に、まず大人の気持ちが落ち着きます。
それに、目の高さを合わせることで、一方的に上から見下すような話し方ができなくなります。
つまり、お互い1人の人間同士として正対して話すという感じになるのです。
親が立ったまま、上から一方的かつ声高に話し出すと、それだけで子どもは恐く感じます。すると、自分を守るための防御反応が働きます。
つまり、子どもの心が閉じてしまって、話の中身が子どもの心の中に届かなくなるのです。
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