「育ててくれた親の介護は子の努め」とは言うものの、まだまだ親は元気となると、その備えも先送りにしてしまいがちなものです。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、親が元気なうちにこそきちんと話し合っておくべきこと、把握しておくべきことがわかりやすい会話形式で紹介されています。
親が元気なうちから把握しておくべきこと
厚生労働省からは、いろんなアドバイザーが誕生している。昨秋に誕生したのが、介護プランナーだ。うちのボスが就任しているので、あれこれ聞いてみた。
新米 「介護プランナーの資料に『親が元気なうちから把握しておくべきこと』っていうのがありますよね。 内容が気になっているんですけど…」
所長 「あ~、これね。確かに気になるね」
新米 「そうなんですよ。どんなことが書いてあるんですか?」
所長 「介護は突然やってくるから、普段からの準備が必要だよな。いざというときには、親に聞きたいことも聞けないかもしれない。だから、早目の準備で、『親が元気なうちから把握しておくべきこと』チェックリストが有効になるってわけだ」
新米 「はい、はい。…で」
所長 「『介護への事前の備え』の一環として、親の考えや状況、親の住む地域の地域包括支援センターの情報などを確認・記録するためのツールなんだ」
新米 「でも、聞こうと思っても聞きにくい…とは思うんです」
所長 「確かに、親が元気でいるうちは、『親に介護が必要になったらどうするか』といった話題は親子間でもなかなか切り出しにくいよな」
新米 「ですよね~」
所長 「そこで、まずは親に介護保険の保険証が届く65歳を迎えたとき、または、君たちが介護保険料を納付し始める40歳を迎えたときなどに、きっかけをつくるのがいいと思うよ」
新米 「65歳と40歳かぁ~。俺は、まだまだですね」
所長 「まだまだだなんて言わなくても良いじゃないか。言ってる間に40歳になるぞ。それまでは、何かをきっかけにして、介護について話し合ってみるのがいいね。会社で介護研修があったんだなんてのもきっかけになるぞ」
新米 「あ、そっか。で、まずはどんなことから聞けば良いですか?」
所長 「もしものときのため、自分の親の状況把握からだろうね。親自身が『老後の生き方』や『介護が必要になった場合の暮らし方』についてどんな考えを持っているかは、必ず知っておきたいよね。まだ具体的な希望を持っていないこともあるかもしれないけれど、一度確認するのが良いね」
新米 「う~ん、そういうことは聞いたことがないなぁ」
所長 「たとえば、介護が必要になった場合、誰とどのように暮らしたいか・子どもに介護してもらうことへの抵抗感の有無はないか・在宅介護サービスを利用するか・介護施設に入居するか・最期はどこで暮らしたいと思っているか・延命治療を希望しているかっていうことは聞いておくのがいいね」
新米 「うわぁ~、ズバリのことも聞くんですね」
所長 「ズバリって…?」
新米 「『最期はどこで暮らしたいと思っているか』とか『延命治療を希望しているか』っていうのは、面と向かっては聞けないなぁ」
所長 「確かに聞きにくいこともあるけど、介護のうえでは重要なことだぞ。それから、親の生活環境や経済状況も把握しておかないとね」
新米 「はぁ~、それも確かに」
所長 「1日や1週間をどう過ごしているか、つまり生活パターンだね。他には生活上困っていることや不便に感じている場所、経済状況も把握しておかないとね、どれくらいの生活費で生活しているか、生活費を何でまかなっているかとか。ズバリ、財産(預貯金、株式、保険、借入、年金など)も。大切な書類(健康保険証、介護保険証、病院の診察カード、年金手帳、生命保険証書、預金通帳、印鑑類など)の保管場所もね」
新米 「どんな生活しているかだったら、聞きやすいです。でも、財産の話はしたことないですね。健康保険証や診察カードは身近だし、どこにあるかは聞けばいいですね。預金通帳や生命保険の証書も聞いてみます」
所長 「あと、親の趣味や楽しみとか好きな食べ物なら、知ってるでしょ」
新米 「好きな食べ物か、あれっ、何でも食べるし、そう言えば、取り立てての好物っていうのは知らないかも…。趣味も若い頃の話は聞いたことあるけど、今って何が趣味って言えるんだろ?」
所長 「おいおい、大丈夫かい?」
新米 「親とは同居して、毎日顔を合わしているのに、あらためて聞かれると、案外分かっていないもんですね」
所長 「現在の親の行動面・健康面の状況も大事なことだよ」
新米 「あ、健康面は大事っすぅ~」
所長 「たとえば、食事のとり方・耳の聞こえ方・トイレ・排泄・動く様子(歩き方、歩く速さ、つまずく、転ぶなど)・物忘れの傾向(同じものを買い込んでいないかなど)・頻度・親の既往歴や血圧など・親の服用している薬(市販薬を含む)やサプリメント・親のかかりつけ医・親の不安・悩み、まだまだあるぞ」
新米 「わぁ、何か切りがないですね。耳はまだよく聞こえるし、しっかり歩くし、でも、それがだんだんそうじゃなくなるんですよね」
所長 「他にも、兄弟姉妹・配偶者などとは事前によく話し合い、お互いの状況を把握しておくと、いざというときに親の介護に関する役割分担や体制を決めやすくなるね。親の介護については、兄弟姉妹間・夫婦間などでさまざまな意見が出ることが予想されるから、出た意見をとりまとめて『最終的な意思決定者』を事前に決めておくことも有効だね。
新米 「ふーん、時間がかかりそうなことですね」
所長 「そうだよ。だから、早めに準備しないとね。また、介護も兄弟姉妹間・夫婦間などで分担し、介護の負担が1人に集中しないように注意しないとね」
新米 「1人に負担がかかると大変ですよね」
所長 「1人で抱え込まないというのが大事だね。その他、親の住む地域の地域包括支援センターの所在地や連絡先、親の住む地域で利用できる各種介護支援サービスも知っておくといいね」
新米 「なんとなく、知っておいたら良いことがわかってきました。早く準備するに限りますね」
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、中学校の通学区域におおよそ1施設ずつ設置されています。介護サービスの申請などは、介護が必要な「高齢者の居住地」にある地域包括支援センターや市区町村の窓口で行います。事前に、地域包括支援センターや市区町村の窓口の所在地や連絡先を調べておきましょう。