かねてから「先進国にも関わらず労働環境が酷い」と世界中から指摘されてきた日本ですが、電通過労自殺の一件を期に「労働環境を早急に改善せよ」との世論が高まり、ようやく政府が重い腰を上げる運びとなりました。この流れを受けた無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、「日本は変わるまでに時間はかかるが、動き出したら早い」と、安倍総理、そして小池知事への期待感を示しています。
子供が多いと税金が安くなる?
先日、こんな記事を発見しました。
<自民有志議員>子多いほど税軽減…「世帯方式」検討へ
毎日新聞 2/19(日)10:20配信
自民党の有志議員が近く、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗(世帯課税)方式」の導入に向けた勉強会をスタートさせることが分かった。少子化に歯止めをかける所得税改革と位置付け、党税制調査会での本格的な議論につなげる考えだ。
「子どもの多い世帯ほど所得税が軽減させる」そうです。どういうことでしょうか?
課税所得は家族の人数で割ることで決まるため、子どもが多い」世帯ほどより低い税率が適用され、税額が少なくなる仕組みだ。
所得が1,000万円で両親と子ども2人の4人世帯の場合、控除を省略して考えれば課税所得は4分の1の250万円で適用される税率は10%。同じ所得の単身世帯に税率33%が適用されるのと比べ、所得税額は3分の1以下になる。
(同上)
現状見ると、
- 独身男性で年収1,000万円=税率33%
- 既婚男性(奥さんと子供2人)で年収1,000万円=税率33%
これだと、独身男性は優雅に暮らせますが、結婚して子供が2人いる男性は、独身男性と比べて明らかに負担が大きいですね。
これを改めたい。どうするの?
- 独身男性年収1,000万円=税率33%
- 既婚男性(奥さんと子供二人)年収1000万円=1,000万円÷4(男性、奥さん、子供、子供)=250万円
一人当たり所得は250万円と見なされ、税金は3分の1以下の10%になる! 実にすばらしいですね。他国での実績はあるのでしょうか?
N分N乗方式はフランスで1946年に導入され、80年代に拡充された。同国の2015年の合計特殊出生率は1.96と日本(1.45)を大幅に上回っており、N分N乗方式が人口減少を食い止めたと評価されている。
(同上)
フランスで既に実績があるそうです。フランスは、欧州ではめずらしく出生率が高いのです。勝手に高いのではなく、高くなるように、考えてやっている。まだ「勉強会」の段階みたいですが、こういういい政策は、速やかに導入に踏み切ってほしいです。
日本に一時帰国してテレビをつけたら「日本は少子化で、お先真っ暗だ。『お先真っ暗』であることを前提に人生設計をたてよう」みたいな座談会をやっていました。
バカバカしい。「少子化」は、「解決できる問題」です。フランスがそうですし、ロシアも劇的に出生率を増やすことに成功しています。出生率1.17を1.7まで増やしたロシアの秘策については、こちらをご一読ください。
● 日本以上に深刻な少子化問題を解決した、ロシアの大胆な「奇策」
日本政府は、是非こちらの方法も採用して欲しいです。
日本人の労働時間は短くなる
皆さんご存知と思いますが、安倍総理は、過労自殺した電通社員・高橋まつりさんのお母さん・幸美さんと総理官邸で面会しました。TBSニュース2月22日を見てみましょう。
母親の幸美さんがまつりさんの子どもの頃からのアルバムを見ながら思い出話をしたのに対し、安倍総理は若干涙ぐみながら聞いていたということです。
安倍総理は、「涙ぐみながら聞いていた」そうです。
また、幸美さんが「長時間労働の報道がいろいろ出ていますが、ぜひ実効性があるようにしてもらいたいと思っております」と話したのに対し、安倍総理は「私は何としてでもやりたいと思っています」と答えたということです。
(同上)
総理は、「何としてもやりたい」(つまり長時間労働を是正したい)と答えた。
この言葉を聞いて、「変わるぞ!」と思う人もいれば「どうせ口ばっかりで変わるはずない!」と思う人もいるでしょう。私は、「変わる」と思っています。
日本の変化は、急速に起こる
私は、「日本は世界一素晴らしい国」と確信しています。しかし、一点だけ問題があるとすれば、「労働環境が、相当ひどいこと」でしょう。中でも「長時間労働」の問題は深刻です。これ、おそらく読者の皆さんも実感されているでしょうから、証拠を示すまでもないでしょう。高橋さんの話を聞いて、「嗚呼、私も死にたくなることがある…」と同情した人は多いはずです。
私の知人・友人は、日本時間夜11時~12時頃、モスクワに電話してきます。「まだ、職場なんだけど…」。
また、外国人で日本人男性と結婚した女性が決まって言うのは、「仕事が忙しくて、夫がほとんど家にいない。何のために結婚したのかわからない」。
「長時間労働」は、日本国に大きな被害を与えています。まず、国民の「健康」に打撃を与える。「体の健康」はもちろん、「心の健康」にも。「過労自殺」は、長時間労働が心と体に打撃を与えているということですね。
そして、「未婚」の問題があります。朝から晩まで働いていたら、彼氏彼女を見つける時間がないでしょう? 見つけても、忙しくてデートできなければ、結婚にいたらない。結婚しても、長時間労働で、子作りの時間もパワーも残っていない。子供が生まれても、長時間労働で、しばしば男性が子育てに関われない。結果、奥さんの負担が大きくなりすぎる。夫婦が産休をほとんどとらず朝から晩まで働いている場合は、子供が保育園に預けっぱなしになる。
などなど、いいことがありません。ようやく行政も気がつき、変化の兆しがみられるようになりました。「クールビズ」をひろげた小池都知事が、熱心に取り組んでいます。安倍総理も、その流れに乗って、これからマジメに取り組んでいくことでしょう。
「明治維新」「第2次大戦後」、日本は「アッ」という間に変わりました。「長時間労働是正」についても、変化に必要な「雰囲気」は醸成されています。10年後、日本は「残業のない国」になっているかもしれません。
日本は、変わるまでに時間がかかりますが、動き出したらものすごいスピードで変わります。
image by: 首相官邸