荒れる森友学園問題の裏で着々と成立に近づく「共謀罪」の危険性

arata20170309
 

大阪・豊中市の「森友学園問題」の裏で、安倍政権が今国会への提出を目指している、組織的犯罪処罰法の改正案。官邸サイドはその必要性を強く訴えて続けていますが、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、過去に3回も廃案となった「共謀罪」法の新設そのものであるとし、その条文から読み取れる危険性を指摘するとともに、安倍総理の口からまたも飛び出した「政治権力サイドの大ウソ」を白日の下に晒しています。

共謀罪…偽りのテロ対策

東京オリンピックをひかえてテロ対策が必要、国際組織犯罪防止条約を締結するため国内の法整備が不可欠…国民が「そりゃそうだ」と納得しそうな理屈をつけて、安倍政権は危険きわまりない法案を国会に提出しようとしている

暴力団など反社会的団体が犯す罪の処罰内容を定める「組織的犯罪処罰法の改正案がそれだ。

改正の中身は、「共謀罪法の新設そのものである。共謀罪の法案といえば、過去三度も国会に提出されたものの、廃案になった。それだけ国民の反対が強いということだ。

同じ内容を安倍政権は「共謀罪」とせず、「テロ等準備罪と名を変えて、国民を欺こうとしている

この改正法案が、必ずしもテロ防止を目的としていないことは、当初、その条文に「テロ」の文言がなかったことでも明らかだ。

「テロの字をどこかに入れろ、テロ等準備罪と呼びにくいではないか」。そのように与党議員たちが騒ぎ出したため、つい最近「テロリズム集団」という言葉を付け足したらしい。

それはともかく、問題は共謀罪」だ。

犯罪行為をやることに複数人が「合意」あるいは「計画」したら、共謀ということになるが、普通の人なら、たとえ一時的に気持ちが高まっても、思いとどまるものだろう。

共謀の段階で、捜査機関が盗聴やライン、メールの内容を証拠に逮捕できるとなれば、一般市民が自由に電話やネット上で「あいつ、殺してやろうか」などと冗談でも軽々しく言えないことになってしまう。

日本の刑法は、原則として既遂処罰であり、共謀のたぐいで処罰されるのは内乱陰謀罪、外患陰謀罪、私戦陰謀罪など「特別重大な法益侵害の危険性のある犯罪行為に限られている

それを、600以上の犯罪について共謀罪の対象とするというのが、安倍政権の当初の考え方だった。現時点では、反対の声を受けて277の犯罪に減ってはいるが、それでも刑法の根幹を揺るがす改変には違いない。

そのなかには、労働基準法、金融商品取引法、文化財保護法、会社法、消費税法、職業安定法などに関する犯罪までも含まれる。

安倍首相は「一般の人は対象にならない」と強調するが、その根拠は希薄だ。実際の条文を読めばわかる。

まだ、改正案は閣議決定されていないが、内容はほぼ確定しており、先日、その全文がメディアで公開された。ポイントは、「第6条の2」だ。

組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行なわれる者の遂行を二人以上で計画した者は…

とある。

これを専門家は「構成要件」と呼ぶ。構成要件を満たせば、強制捜査に着手できるのだ。つまり、対象犯罪の実行を二人以上で合意したことがわかれば逮捕されるかもしれないということだ。

安倍首相は2月3日の衆議院予算委員会で、逢坂誠二議員に対し「犯罪を行う合意に加え、実行準備行為が行われた場合にはじめて処罰される」と国会で答弁した。

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