商品のメリットもデメリットも一から十まできちんと説明したのに、買ってもらえる気配さえない―。もしかしたら、相手はあなたの説明に納得がいかないのではなく、商品への「興味がない」のかもしれません。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、商品の魅力や構造を説明するよりも先に、ほかのものとの「違い」を説明し、興味を持ってもらうことがまず第一だと説いています。
興味は違いから
注意深く物事を見つめる洞察力、的確に物事を伝えることのできる表現力、より正解のものを選べる判断力…。そういう、経営や企画に必要な能力を鍛えるのに、どのようなことが必要なのか。
いろいろなプロフェッショナルな方々や、いつまでもアマチュアでしかない人たちなど、いろんな人を見てきて分かってきたことは、「違いが説明できる」ということではないか、と思います。
ほら、よく日本人が外国人のことを、「西洋の人はみんな同じ顔に見える」なんて言いますよね。逆に西洋の人たちは日本人や中国人を見ると、「東洋人は見分けがつかない」と言うでしょう。
それはやはり、自分たちが詳しいものは違いに気づいて説明ができ、自分たちが詳しくないものは違いに気づけず説明できないからだと思います。
例えば、たとえ日本人であっても、めちゃくちゃ洋画が好き、海外ドラマが好き、という人は、西洋人の顔は簡単に見分けます。興味があれば、見分けがつくのです。
私は若い頃、里見浩太朗と北大路欣也、高橋英樹と松方弘樹の区別がつきませんでした。恐らくその頃は、時代劇に全く興味がなかったからで、時代劇の人はみんな同じに見えてたんだと思います。
だから、日本人だから、西洋人だからではなく、単純に「そこまで興味があるか、ないか」というだけのことだと言えるのではないでしょうか。
電車に興味がない人は、どんな電車を見てもただの電車にしか見えませんが、興味がある子どもなどは、「全然違うじゃん!」と、そのフォルムの細かい部分の説明をします。
植物に興味がない人は、桜と梅が同じに見える、魚に興味がない人は、イワシもアジも同じに見える、新しい漫画やゲームに興味がない人は、どのキャラクターも同じに見える…、というように、興味がなければ、どれもこれも大した違いはないように見えます。
「どれだって一緒じゃん」と思うということは、その分野における最も浅いところに留まっている、ということに他なりません。ということは、まず興味を持ってもらうためには、「違いが説明できる」ということが大きなポイントになります。
「これとこれ、違いが説明できますか?」ということが、興味の第一歩です。「いや、説明できないよ。興味ないし」という人にも、まずはその違いが説明できるように教えてあげる。すると、興味がなかった人は、「興味がないけど、違いは分かる」状態になりますが、そこから、じゃあ3つ目に見るものはどこを見ればいいのかが分かってくるし、その違いを、興味のある人に説明することで、「すごいねー」と褒められて、気持ちがよくなります。そこから、「もうちょっと違いを知ってみようかな」と、興味を深く持ってくれるのです。
全く興味のない人の目には、「全く違うものも、全部同じように見えている」。
少し興味を持ち始めるきっかけは、「同じように見えているものの、違いを知る」。
そのことを知っていると、初歩的なことは何からどんな風に説明をするのか、という構成が分かってくるのではないでしょうか。
生命保険のことを説明するなら、生命保険の魅力とか構造とかそんなことよりも前に、「損害保険と生命保険の違いを知ってます?」というほうが圧倒的に早い。生保の人間からすると「いやいや、損保と生保は全然別でしょ。アホか!」と思うかもしれませんが、全く興味がない人にとっては、同じかと思ってた、という人だってたくさんいるのです。
先日、イチゴの色の話をしただけでイチゴが売れまくったという話題を書きましたが、これだって、よくよく考えると、「甘いイチゴと、甘くないイチゴの違いを知ってるか?」という話になっています。
全く興味のない人に、まずは2つのものの基本的な違いの見分け方を教える。それが、業界や商品に興味を持ってもらう、最初の第一歩だと考えてみましょう。
御社ならば、どんなことを説明しますか?
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
- 自社の商品や業界に全く興味のない子ども相手に、「◯◯と◯◯の違いを知っていますか?」という話をするならば、どんな2つの物と、どんな違いの説明をするか。簡単にノートにまとめる。