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急転「首相から100万」暴露へ。森友学園騒動を巡る黒幕は誰だ?

15日に予定されていた記者会見を延期し、フリージャーナリストの菅野完氏の自宅でインタビューに応じ、さらに16日「小学校設立に関して安倍首相から100万円をもらった」との爆弾発言を口にした籠池元森友学園理事長。ますます混迷を極める「森友学園問題」ですが、あれだけ開校に意欲を見せていた籠池氏の突然の小学校認可申請取り下げに関しても、様々な憶測が飛び交う事態に。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、その「黒幕」の正体に鋭く迫っています。

森友学園の小学校認可申請取り下げに黒幕はいるのか

●(関連記事)安倍政権を滅ぼす時限爆弾になりそうな「森友学園問題」の深い闇

森友学園問題の核心は二つある。

一つは、安倍首相夫妻を金看板にした小学校の新設にともなう国有地格安払い下げや認可をめぐって、財務省や国交省大阪府が異常というほかない特別な計らいをしたこと。

いま一つは、教育勅語をよりどころとする同学園の教育方針が憲法や教育基本法に反しているにもかかわらず、文科省大阪府が看過してきたことである。

裏で行政組織を動かした大きな力があるとすれば、それは政治家なのか、フィクサーのたぐいなのか、いまのところは判然としない。

もちろん、首相夫人が新設小学校の名誉校長になるという触れ込みと、籠池泰典理事長の押しの強さによって、関連する役所が特別視せざるを得なかった側面もあるだろう。

いずれにせよ、国と大阪府の罪は重い。籠池理事長が小学校の認可申請を取り下げたことによって、免罪されることは決してない。問題の幕引きを期待する空気が安倍政権中枢や自民党内部に生まれているようだが、そうはいかない。

目下の焦点は、籠池氏に対し、認可申請取り下げを働きかけた人物がいるかどうかだ。

基本的に、籠池氏が置かれた経済的状況は危機的であると推察される。どのような契約になっているのか知らないが、大阪の某国会議員事務所によると、3月末に建設業者への支払手形が落ちない可能性があるという。

かりに小学校が認可され、開校できていた場合でも、この悪評のもと、児童が集まらず、経営が立ち行かないのは目に見えている。それを誰かに諭され籠池氏自ら退却を決断したのかもしれない。

開校して破綻し、児童を混乱に巻き込むより、このさい国や大阪府、そしてマスコミのせいにして、身を引くほうがいいというのは、一つの考え方だ。しかし、あの感情過多で思い込みの激しい籠池夫妻にそんな判断ができるだろうか

なにしろ、申請を取り下げる前日までは徹底抗戦の構えだったのである。「学校を開設させてほしい、それだけです」と熱く語り、大阪府に対して「賠償請求をせないかんようになる」と言い放ったあの威勢のよさはどこへ失せたのか

愛国教育を褒めちぎってその気にさせたあげく、問題が起こるや梯子を外した政治家たちへの不満がよほどたまっていたのだろう。ユーチューブに自身の動画を投稿し、次のように発言して挑戦的な姿勢をのぞかせていた

国会議員の先生が、私を全然知らないといっていましたけど。よく存じ上げている方もいらっしゃいますね。10年前にしか会っていませんっておっしゃったけど、そんなことないですよね。2年ほど前に、お会いしたことがあるんじゃないかと思います。ある特定の会合で。

稲田朋美防衛大臣が国会で「会ったのは10年ほど前」と繰り返していることへの反論だ。

籠池つぶしはやめて欲しい。尻尾切りはやめて欲しいんです。…あいつは悪い奴や、とんでもないわとか、しつこいやつやとか、電話をしてくる、とか。

「偉人」と籠池氏が称える安倍首相に対してもつい愚痴が出る。これは、いよいよ自分が頼みの綱としてきた政治家たちを敵に回す覚悟ができたのか、と思わせるほどだった。

それが嘘のように、身をひるがえし、籠池氏は認可申請取り下げの記者会見を開いた。塚本幼稚園内の会場は園児用のイスが並べられ、すし詰め状態。突然オモテに現れた長男、佳茂氏も同席し、父親に加勢した。

籠池氏の恨み節はもっぱらメディアやジャーナリストに向けられた。二十数分続いた独演会の後、質疑が始まると、のっけから荒れ模様となった。

「日本会議の研究」の著者、菅野完氏が「認可申請を取り下げる知恵を理事長にさずけたのは稲田大臣の旦那龍示さんですか」と強烈な質問を投げかけたからだ。

籠池氏は「私が考えました」と答えたが、菅野氏の名を確認するとそれ以上の彼の質問を拒否した。

稲田大臣の夫、龍示氏はかつて森友学園の顧問弁護士だった。国会議員になる前の稲田大臣も「ご主人とともに私の顧問弁護士だった」と籠池氏は後日、菅野氏の単独インタビューで証言した。

その動画をもとに小川敏夫議員が参議院予算委員会で稲田大臣に事実関係をただしたが、稲田大臣は「顧問弁護士だったことはない。法律相談を受けたこともない」と、新聞に動かぬ証拠資料がスクープされるまでかたくなに否定し続けた。その結果、ウソつき大臣として野党から辞任を要求されているのは周知のとおりだ。

必死に自分とは無関係であるかのように装う稲田大臣に対し、籠池夫妻は憎悪をむき出しにしているが、裏を返せば、夫妻にとって稲田氏は重要な存在ではないということなのかもしれない。

森友学園の小学校設置について籠池夫妻が恩義を感じる人といえば、第一に安倍首相と昭恵夫人であろう。ほかに黒幕がいるとすれば、その人物の名をあげたりしないだろう。

認可申請取り下げ会見で、安倍首相夫妻について「何もしてもらってません」と多くを語らず、政治家の口利きに関しては「なかったって言うてるでしょ」と突っぱねるなど、籠池氏は明らかにユーチューブ動画より政治家への態度が軟化していた。政治家サイドから何らかの働きかけがあったのかと勘ぐりたくもなるところだ。

森友学園の小学校校舎建設費は、工事をした業者によると7億5,600万円(大阪府に提出)でも、23億8,400万円(国土交通省への補助金申請額)でもなく、15億5,000万円が本当だという。そのうち11億円の工事代金が未払いという報道がある。

土地代は疑惑の国有地払い下げでタダ同然だったが、それでも、その他の工事費を含めて20億円くらいはかかっていると想像される。

国からの補助金以外の資金はどのように調達したのだろうか。これだけの金額を4億円ほどといわれる寄付金ではまかなえない。しかもここへきて国も、小学校用地を更地にしたうえ違約金が必要(財務省)、補助金を返還してもらう(国交省)と態度を変えた。

察するに、これまでに少なくとも10億円をこえる融資を金融機関から受けているのではないだろうか。

どこから融資を受けているかは分からない。りそな銀行という説もある。複数の金融機関かもしれない。

いずれにせよ、こうなった以上、よほどの特別扱いで返済を猶予してもらうか、籠池氏の考えに共鳴する大金持ちの支援でもない限り、この学園が存続できるわけがない。

かりに、認可申請取り下げをする代わりとして、そういうたぐいの救済策が提案されたとしたら籠池氏はそれに飛びつかざるを得なかっただろう。

国有地払い下げの実務を担ったのが財務省、その大臣、麻生太郎氏は金融庁担当大臣でもある。常識的には考えにくいことだが、もし銀行が返済猶予等の特別扱いをするとすれば、このあたりが怪しいということになる。

杉尾秀哉議員が3月15日の参議院予算委員会で麻生財務大臣に「籠池氏を知っているか」と聞くと、麻生大臣は「珍しい名前だが、覚えていません」と空っとぼけた。

籠池夫妻が商品券か札束かを持って口利きを依頼してきたが突き返したという鴻池祥肇議員は麻生大臣の盟友だ。籠池氏は、鴻池氏を通じて麻生氏と面識があったと言っている

財務省の体質も問われている今、麻生大臣にとっても他人事ではない。

安倍夫妻が一時は肩入れした森友学園の教育実態によって、安倍政権の思想的本性が視覚化されたことは、これまでPR戦略で保ってきた支持率にじわじわ影響してくるだろう。

教育勅語を暗誦し、軍歌を合唱している幼稚園児が「安倍首相ガンバレ」などと声を合わす。北朝鮮など全体主義国家の風景そのものではないか。

森友学園に好意的に対処してきた大阪府の松井知事にしても責任逃れに躍起だ。小学校を認可しない方針に転じたのは、自らに世間の批判が集まるのを恐れているゆえだ。

安倍総理や鴻池議員に見捨てられ、松井知事にも裏切られたと感じた籠池氏は「尻尾切りはやめてほしい」と訴えた。まさに尻尾切りであろう

野党から籠池氏らの参考人招致を迫られた自民党は「民間人だから」「話が面白いからといって招致はできない」などと奇妙な理屈で渋る。だが、いつまでも拒んでいると、世間の疑惑はいっそう深まるだろう。

森友問題は官邸と自民党にとって早急に沈静化させねばならない重大事となった。この問題がメディアに取り上げられ続ける限り、今後、折に触れて、2015年9月3日から3日間安倍首相が何をしていたのかも大きな問題として蒸し返されるに違いない。

この3日間、偶然にしては森友と結びつくことが集中しすぎている。とくに9月4日は、午前10時から近畿財務局9階会議室で森友学園の小学校に関し、建設会社の所長、近畿財務局の統括管理官、大阪航空局調査係が何ごとかを話し合った。また同日、国交省から森友学園に6,200万円の補助金を交付することが決定している。

国有地払い下げの事務を統括する迫田理財局長を安倍首相がこの時期に呼んだことについて、森友と関連づけられるのは、仕方がないのではないか。働きかけなどしなくとも、安倍首相が少しでも話題にするだけで十分な圧力になるに違いない。

「国のために命を懸けるなんてことは馬鹿なやつがすることだと言う教師もいる」と戦後教育を批判していた安倍首相が、国のために命を懸けよと説く「教育勅語」を幼稚園児に暗誦させる森友学園を好ましく思っていたことは間違いないだろう。国会で「幼稚園児に教育勅語を暗誦させてもいいと考えているのか」とただされても答えようとしない

安倍首相との関係が取りざたされることによる政権へのダメージを食い止める手段として、有力な政治家あるいはその周辺が動いた可能性は否定できない。

一度は裏切られたと思った政治家たちに籠池氏は、再び頼っているようにも見える。3月15日に行なわれることになっていた外国特派員協会の記者会見は籠池氏側の都合で延期になった。この背後に、籠池氏の口を怖れる勢力からの何らかの働きかけがないとはいえまい。

真相はいまだ闇の中だ。籠池という特異な人物だけの力で、国や地方自治体がこれほど組織ぐるみで動き発覚するや口裏を合わせるように不誠実な釈明を繰り返すはずがない。黒幕は誰か。どういうメカニズムが働いたのか。肝心なところが見えないまま、謎はますます深まっている。

 

 

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