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弁護士も使う、交渉の行き詰まりを解決してくれる「便利な言葉」

ビジネスで欠かせない交渉の場での悩みのひとつに、お互いが譲らず話が前に進まない「膠着状態」があります。これがために決裂してしまったという苦い経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、著者で現役弁護士の谷原誠さんが、弁護士ならではの「膠着状態を脱するテクニック」を記しています。

膠着状態ではこの質問

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

交渉では、ある論点で双方とも譲らず、話が前に進まなくなる膠着状態に入ることがあります。膠着状態のまま、進展しない状態が長く続けば、その交渉は決裂ということになるでしょう。この膠着状態は、言い方を変えると、どちらかが妥協譲歩しないと動かない状態です。

たとえば、商品の価格についての話し合いが、こちらが90万円、相手は100万円と主張して膠着しているとします。この場合、どちらが折れて、相手が主張する価格にするか、双方が譲歩して、たとえば95万円とするか、といったことが考えられますが、互いに譲れない条件であるとき、こういったことは容易ではないでしょう。

このような膠着状態を脱する方法の一つに、視点を変えるという方法があります。交渉の論点は一つであるということはほとんどありません

商品・サービスの売買の場合、料金だけではなく、納期や保証期間、品質等々、様々な要素があります。視点を変え、これらの条件について聞き、相手が本当に料金のニーズしか持っていないのか、試してみるのです。

そのケースで、便利な言葉として「仮に~」があります。いったん料金に関する話を横に置き、「ところで、仮に、〇月まで納期を伸ばすとすると、どうでしょう」「仮に支払いサイトを短くすればどうですか」と、ほかの条件について仮の話として軽く話題を振ってみます

「仮に」のよいところは、こちらにとってあくまで仮の話であり、そこでいくら突っ込んだ発言をしても、言質を取られるわけではないということです。自分の立場を表明せずに相手のニーズを探ることができます

ここで「まあ、納期が長ければ別にできないことはないんだけど」などと、ぽろりと隠れたニーズが表れることがあります。もし、こちらに、そのニーズを満たす用意がある場合、改めてその条件を含め打診してみると、話は再び動き出します。

相手が考える要望、ニーズの情報は、交渉において最も武器になるもの。相手のニーズがわかればこちらのカードも増えます。人は前に言ったことと矛盾する行動をとりにくいという「一貫性の法則」がありますので、「仮に」の話での発言は、心理的に人を拘束します。

交渉が膠着状態に入り、「これはなかなか動かなそうだな」と感じたら、自分の要求をひたすら通そうとするのではなく、相手に膠着している論点以外のことで本音を語ってもらう工夫をすることが大切です。

仮に話法」は、その際のきっかけになってくれるかもしれません。

今回は、ここまでです。

image by: Shutterstock.com

 

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人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などでもお馴染みの現役弁護士・谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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