暴走・北朝鮮に振り上げたこぶし、落とし所はどこになるのか?

 

では、南北統一問題はどうでしょう?

北朝鮮の場合は、危機の「出口」としては、常に「統一」つまり韓国に吸収合併させるという問題が出たり入ったりするのは避けられません。何よりも、冷戦の過酷な論理の中で民族が引き裂かれたこと、にも関わらずもう一つの事例であるドイツの場合は西側が東側を吸収合併し、合併コストも全額負担しているという「前例」があることから、「民族の悲願として統一問題があるというのは、否定できません。

また、現在の北朝鮮が巨大な人道危機にあるのであれば、少なくとも国境の開放を行うべきであり、そうなればドイツのように速やかな再統一に向かうことは自然の流れのようにも思われます。

ですが、こちらもそう簡単には行きません。まず、現在の韓国には北の住民に関して「積み立てていなかった年金や健保コスト」を負担したり、北の通貨を対等のレートで交換して実質的に北の住民に「自由世界での生活一時金」を渡すなどという経済的な余裕はありません

残念ながらそうした吸収合併を強行したら、南の経済は破綻する一方で、南北のグループ間の不和から社会の不安定を招く危険があります。その先にあるのは、日本を仮想敵として国論の団結を図るような危険がどうしても否定できません。

また、統一したからといって、一気に北側の生活水準が改善しない中で国境をオープンにすれば中国側の社会も混乱します。また、仮に急速に北の社会が自由化してしまったとしたら、今度は鴨緑江を挟んで中国が直接西側と接触するという危険な状況になることも考えられます。

ですから、韓国の保守派日本中国という当事国の全てにとって性急な南北統一は不可能な選択肢だということは、残念ながら事実なのです。アメリカにとっても、仮に朝鮮半島の全体がアメリカの軍事勢力圏に入ったとしたら、中国と直接接してしまうことの「面倒」を背負うことになるでしょう。

というわけで、食糧などの経済援助でもダメだし統一という出口も事実上不可能ということになります。

では、どんな出口があるのでしょうか?

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