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睡眠時間を確保して、人間らしく生きたいナ。人間なんだからナ

厚生労働省が普及を目指す「勤務間インターバル制度」。2019年の努力義務化が検討されているこの制度、いったいどのようなものなのでしょうか? 企業にとって、そして社員にとってのメリットは? 今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』の中で、わかりやすく紹介されています。

労働時間と睡眠

現在、厚生労働省では、勤務間インターバル制度の普及のため、企業への支援を行おうとしている。労働時間と睡眠時間について事務所でも話題になった。

新米 「E子先輩、最近、労働時間についてますますうるさくなってきていますが、生活時間、特に睡眠はどのような関係があるんですか?」

E子 「健康にとって睡眠が大切っていうのは、ほとんどの人がなんとなくはわかっているわよね」

新米 「はい…」

E子 「人の生活って、働いている時と、働いていない時を合わせて1日が成り立っているわよね」

新米 「あ、はい…。そうですよね」

E子 「ここ最近は、ずっと長時間労働っていうか労働時間にばかり目が言ってるけど、いま、厚労省がいっている『勤務間のインターバル』っていうのは、働いていない方の時間に注目してるのよね。つまり、人が生きるために必要とされる休息や睡眠を確保するための時間的な枠組みを、社会的に獲得していこうってことなのよ」

大塚 「まずは睡眠や休息の時間を確保するってことですね」

E子 「そう。『勤務間のインターバル時間』を確保することで、健康にとって必要不可欠な睡眠時間を確保することにつなげるってこと」

新米 「つまり、インターバルとってても遊びに行ってちゃぁ、ダメってことだなぁ」

大塚 「当たり前でしょ。何ふざけたこと言ってんの!」

E子 「勤務間のインターバル時間と生活時間の関係を週5日勤務の日勤者で考えた場合、勤務間インターバルを11時間としたら、22時退勤の翌日9時出勤っていう生活想定になるわ」

新米 「え? 夜の10時終わりで良いんですか?」

大塚 「計算上はそうなるわね」

E子 「それを残業時間からみると、インターバルが11時間で18時~だと4時間、17時~だと5時間、つまり1日に4~5時間の残業時間が可能ってことになるの」

大塚 「それって、1ヵ月単位で残業時間をみると、勤務間インターバルが11時間の場合は、月残業時間が80時間がOKってことになるんですね」

新米 「インターバルが11時間でも、結構残業できちゃいますね」

E子 「もっと、残業減らせっていってるかと思ってたけど、今、まずは100時間未満にしましょうって話題が出ているレベルでしょ。残業時間が多いところは、めちゃくちゃ多いってことだし、まずは、そういったところにインターバル制の考えを入れることから始まりね」

大塚 「要は、脳・心臓疾患の労災認定基準において、1ヵ月の時間外労働が概ね80~100時間とされていることからもその線引きで、十分な睡眠や休息をどう考えるのかってことですね」

E子 「そういうことね。労働時間の長さを抑制するという話とともに、休日や休息時間、オフの時間の確保に社会の目が向いてきたわけ」

新米 「ふーん」

大塚 「私、実験結果も興味あります」

E子 「アメリカの睡眠研究の実験があるわよ。1晩の睡眠時間を4時間、6時間、8時間の3グループに分け、14日間、実験室に宿泊させて反応検査を行ったの。同時に3日間徹夜させるグループにも同じような反応時間検査を行って比較したそうよ」

新米 「へ~、そんな実験をしたんですね。具体的には、どんな実験なんですか?」

E子 「反応検査みたいね。ランダムに提示される刺激に対して、0.5秒以上かかって反応した遅延反応数を解析して、グループごとの経日変化を観察した結果が載ってるわ」

大塚 「反応検査の比較をしたんですね」

E子 「結果としては、毎日4時間の睡眠の場合、その状態が6日間継続しただけで1晩徹夜したのと同じくらいの遅延反応が生じたそうよ。10日以上続くと2晩徹夜したのと同等レベルの遅延反応になってる」

新米 「睡眠4時間が6日継続で徹夜1回、10日継続で徹夜2回と同じ反応ってことですかぁ」

大塚 「そういうことみたいね」

E子 「毎日6時間の睡眠の場合でも10日継続で1晩徹夜したのと同等以上の遅延反応になるそうよ」

新米 「睡眠時間を確保するのが大事だってことはわかりましたが、最適な睡眠時間というのはどれくらいなんですか?」

大塚 「個人差や、年齢や体質の違いもあるだろうし、働き方の内容によっても変わるでしょうね」

E子 「そうね。でも、いろんな調査を見ると、最適な睡眠時間は、6時間から8時間の間に9割くらいは収まるという結果が出ているようね」

新米 「やっぱり一般的に言われている数字ですね」

E子 「残る1割の人は体質的にその枠外の時間が最適睡眠時間といってるそうだけど、4時間の睡眠で健康な状態を維持できる人はごく少数で、やっぱり大半の人は6時間から8時間程度の睡眠が必要ね」

大塚 「ところがなんです! 厚生労働省の調査結果では、平日に6時間の睡眠がとれていない人が約48%となってるんですよね」

新米 「つまり、大半の人は寝たくても寝られていない現状にあるってことなんですね」

E子 「そういうことね。週末に2時間以上朝寝をしてしまう人は、平日の睡眠が足りていない証拠ともあるわ」

大塚 「でも、睡眠もいっぱいとれたら、次の日に寝なくてもよいってことにはならないわよね」

新米 「僕も、今日いっぱい食べたから、明日は何も食べなくて大丈夫ですとはなりませんね」

大塚 「何、言ってんのよ! あんた、当たり前でしょ」

E子 「人には体内時計があるので、寝るべきタイミングに適切な量の睡眠をとることが、体内の生活リズムを守ることにつながるから大事なのよね」

大塚 「睡眠は、量とタイミングが重要ってことですね」

E子 「EUの指令ではインターバル時間は11時間らしいけど、今後、日本でも11時間が浸透するかは見ていくことになるわね」

大塚 「ヨーロッパでは、インターバル制は『空気のような制度』で普通守れているらしいわ。やっぱり日本は働きバチなんですかね」

E子 「そう言う意味では、日本でこそ生きてくる制度だといえるのかもしれないわね」

大塚 「『過労死』は英語でも『KAROSHI』として輸出されてしまって、日本の汚名のような言葉になってるわ」

新米 「汚名返上にもなればいいですね」

「勤務間インターバル制度導入事例集」 * 厚生労働省

過重労働対策については多くの企業における重点テーマとなっていますが、2017年3月28日に示された働き方改革実行計画の中で「勤務間インターバル制度」が盛り込まれ、2019年4月にも努力義務化が検討されています。

それまでの間、日本はこの勤務間インターバル制度を導入する中小企業への助成金の活用や好事例の周知により、取組みを推進することとしており、今回、好事例として、「勤務間インターバル制度導入事例集」が公開されました。

内容としては、7社(ユニ・チャーム株式会社、株式会社フレッセイ、TBCグループ株式会社、KDDI株式会社、社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院、AGS株式会社、本田技研工業株式会社)が事例として紹介され、勤務間インターバル制度の実施状況導入の経緯期待される効果と課題が記載されています。例えば、KDDIについては、日本の勤務間インターバルの先駆けとなった会社として取り上げられており、11時間のインターバルを健康管理の指標として使っているなど、会社としての狙いなどが記載されています。

製造業、卸売業・小売業、サービス業、医療・福祉など様々な業種が記載されており、これからインターバル制度の導入を検討する企業においてはこの事例集は参考になるでしょう。

image by: Shutterstock.com

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この日記をお読みくだされば、社労士及び社労士事務所の固いイメージが一変するかもしれません。 新米社労士が日々の業務・社会のルール等に悩み・悪戦苦闘する様子を中心に、笑いあり、涙あり、なるほどありの社労士事務所の日常を、ノンフィクション、フィクションを交えて綴ります。 水曜日のお昼休み、くすっと笑いながら、皆でお楽しみください。

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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