過日の鉱泉分析法指針の見直し、および環境省自然局長通達で、温泉の一般的適応症には「ストレスによる諸障害(睡眠障害、うつ状態など)」が明示され、単純温泉、塩化物泉、硫酸塩泉の適応症(いわゆる効能)には「うつ状態」が明示されることになった。
僕は、会社を休み始めて数か月経ったころから一人で温泉めぐりを始めた。
前述の局長通達の何年も前から、実感として「うつに温泉が効く」と感じてのろのろとやる気のない頭と体を振り絞って、温泉に出かけたものだ。
温泉がうつに効く、その医学的なからくりに関しては、僕は医者ではないのではっきりとはいえないが、体験的には温泉の「浮力効果」がいいように思う。
湯に浸かると体重は約10分の1になる(感じられる)とされ、湯にプカプカと浮いて、こぽこぽと湯が流れる音に耳を澄ませていると、頭の中が空っぽになる。 この「ナンにも考えない」状態が、どうやらいいような気がする。
うつ状態の思考は、答えのでない堂々巡りの考えが頭の中を駆け巡っているもので、そういう思考から解き放たれて、ただボー然と湯に浸かるという感覚は、温泉に浸かっていると手に入れやすいと思う。
特におすすめは「ぬる湯」である。 38度前後のぬるい湯は、のんびり長く浸かっていられるので、頭空っぽ状態も長く続きやすいというわけだ。
どこのぬる湯がいいか、というのは、僕も編集のお手伝いをした『温泉批評』2015年春夏号、特集「ぬる湯の悦楽・冷泉の魅惑」に紹介されているので、そちらを参考にして欲しい。 今でもバックナンバーが買える。