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コンビニ夏の陣。なぜローソンは「サラダ」推しを打ち出したのか?

今年2月より、ローソンは一部の地域でサラダの種類を従来の約1.5倍にあたる26種類に増やし棚を5段にしたところ、1店舗あたりの1日の平均売上高が大幅に伸びたことから、5月より全国の約1万店舗で品揃えを拡大していくと発表しました。なぜ同社は「サラダ」を戦略商品として選んだのでしょうか、そして勝算はあるのでしょうか。無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』の著者で、MBAホルダーの安部徹也さんが詳しく分析します。

なぜローソンはサラダを次期戦略商品に選んだのか?

今や日本全国に5万5,000店を超える店舗を出店し、コンビニ業界は飽和状態にあるといっても過言ではないでしょう。街を歩けば、わずか数十メートルで、必ずコンビニがあるということも珍しいことではなくなりました。

このような状況下、コンビニ各社は事業拡大に頭を悩ませています。2017年4月20日付の日経新聞では、コンビニ業界に関して次のようなニュースが報道されました。

3月のコンビニ売上高、微増 客単価上昇で2カ月ぶり

 

日本フランチャイズチェーン協会(東京・港)が20日発表した3月のコンビニエンスストア売上高(既存店、速報値)前年同月比で微増の7,920億円と2カ月ぶりに増加した。

 

客数が減った一方、生鮮食品や調理品などのついで買いが増えているとみられ、客単価は増加傾向が続いている。

 

新店舗や他業態との競合で客数は13カ月連続で減り、既存店客数は0.9%減だった。

 

一方で主婦や高齢者に向けた品ぞろえの強化が奏功し、平均客単価は0.9%増の610円と24カ月連続で増加した。

つまり、コンビニ各社はスーパーやドラッグストアなど他業態の店舗に顧客を奪われているばかりでなく、近隣に出店する自社の新店舗に顧客が分散することにより、一店舗当たりの顧客数は減少の一途にあるという課題を抱えているのです。

企業全体で考えれば、既存店の顧客減少を新規店舗の出店で補うということになりますが、コンビニはフランチャイズ形式であり、既存店の顧客数が減少することは一店一店の加盟店のオーナーにとっては由々しき問題ともいえます。

もしあなたが大手コンビニのフランチャイザーであれば、どのような方法でこの問題を解消するでしょうか?

コンビニ業界の課題を解決してみよう

1.世の中の流れから考えてみる

このコンビニ業界の現状抱える課題に対してローソンが目を付けたのがサラダです。その背景には、昨今の健康志向の高まりで数多くのサラダ専門店が出店するなど、サラダの人気が過熱していることが挙げられるでしょう。

その事実を裏付けるように2017年5月10日の産経新聞に次のような記事が掲載されていました。

健康・美容志向…野菜が「主食」に 専門店やコンビニ商品人気

 

美容や健康志向の高まりを背景に、野菜を多く摂取できるよう、サラダを主食として食べられる専門店が人気を集めている。コンビニの店頭には消費者ニーズに合わせたサラダが並び、具材を豊富に取り入れたドレッシングも登場している。

また、従来のコンビニの顧客においても野菜を多く採りたいという気持ちはあっても実際に採れていない人が多いというデータもあります。

コンビニランチ族、野菜摂取を意識していても実態は全然摂れてない問題

そこでいろんな種類や量のサラダ、それこそ主食になるようなボリュームのあるものからちょっとしたおかずになる小さなものまで提供すれば、お昼のランチや夕食の際に手にとってもらえる可能性は高まってくるでしょうし、ドレッシングもバラエティーに富んでいれば毎日食べても飽きないということにつながります。

2.顧客の行動の視点、カスタマージャーニーから考えてみる

サラダは自分で作るとなるといろんな種類の野菜を購入して自分でカットしなければいけないですし、すべて食べきることができなければ腐らせてしまって食材を無駄にするということになります。

最近は、野菜価格の高騰という問題もありますし、節約志向も益々強まってきていますので、そのような無駄な出費は避けたいという消費者も多くなっています。

その点パック詰めのサラダであれば一食で食べきることができますし、手軽に健康的なおかずを一品増やすことができる、もしくは手軽に健康的な主食として食べられるというメリットもあるのです。

3.ターゲットの広がりを考えてみる

それでは、最後にサラダはターゲット的にどのくらいの広がりがあるかを考えてみましょう。

恐らくメインターゲットになるのは、美容と健康の意識の高い20代から40代の女性ということになるでしょう。

他にも最近ではメタボを気にする男性も増えています。糖質制限ダイエットで急成長したRIZAPの成功を目の当たりにすれば、いかに男性も摂取するカロリーを気にする時代になったかがわかるでしょう。

また、家族の健康を気にする主婦や多くの量を一度に食べられない高齢者なども手軽に適量を食べられるサラダに対するニーズは高いといえます。

こうして考えれば、サラダは実に多くの顧客層に訴求することのできる戦略商品であることがわかります。ですから、それぞれの顧客層のニーズに応じた商品を開発し、ラインナップを豊富に揃えれば、新規顧客の獲得や客単価の向上へとつなげることができるというわけです。

特にこれから暑くなってくる季節に向けて、さっぱりとしたサラダの需要は高まってきます。その季節を見計らってローソンは26種類というこれまでにない量の商品ラインナップを投入してきたわけですが、果たして、思惑通りに、サラダという戦略商品で課題となっている来店客数や客単価を実際に上げることができるのか? その結果を注視していきましょう。

image by: Sakarin Sawasdinaka / Shutterstock.com

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【著者】 安部徹也 【発行周期】 ほぼ 週刊

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