憲法9条は改正可能なのか? 安倍政権の描く「加憲」のシナリオ

 

改憲策動第3弾の柱

読売インタビューを読むと、肝心なポイントは2つである。

第1は、新憲法施行のタイミングを「2020年と年限をハッキリ定めたことである。読売インタビューではこう語っている。

私はかねがね、半世紀ぶりに日本で五輪が開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた。かつて日本は1964年の東京五輪を目指して、新幹線、首都高速、ゴミのない美しい街並みなど、大きく生まれ変わった。……先進国へ急成長していく原動力となった。

2020年も、今、日本人にとって共通の目標の年だ。例えば、政府は20年に指導的役割の3割以上を女性にする、という野心的な目標も掲げている。20年を新しい憲法が施行される年にしたい。新しい日本を作っていくこの年に、新たな憲法の施行を目指すのがふさわしい。

五輪そのものは単なるお祭り騒ぎで「日本の生まれ変わり」とは何の関係もない。ましてや、女性管理職3割の目標と改憲も無関係である。20年の目標で最も重要なのは「基礎的財政収支プライナリー・バランス)」の黒字化の公約だが、アベノミクスの惨めな失敗の後では到底達成できず、その一事をとっても20年は「新しい日本」の出発の年とはなりえない。

第2は、第9条改定を正面のターゲットに据えたことである。

9条の改正にも正面から取り組んでもらいたい。平和安全法制をめぐる議論の中で、ある調査によれば、憲法学者のうち自衛隊を合憲としたのはわずか2割余りにとどまり、7割以上が違憲の疑いを持っていた。……また共産党は一貫して自衛隊は違憲との立場を取り続けている。

(自衛隊は)自然災害では、二次災害の危険も顧みず真っ先に現場に飛び込む。安全保障環境が厳しさを増す中、24時間365日体制で領土、領海、領空、日本人の命を守り抜いてきている。

自衛隊が全力で任務を果たす姿に対し、国民の信頼は今や9割を超える。一方、多くの憲法学者は違憲だと言っている。教科書には……違憲との指摘も必ずといっていいほど書かれている。

北朝鮮を巡る情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている中、「違憲かもしれないけど、何かあれば命を張ってくれ」というのはあまりに無責任だ。

9条については、平和主義の理念はこれからも堅持していく。そこで例えば、1項、2項をそのまま残し、その上で第3項に自衛隊の記述を書き加える。……私たちの世代が何をなし得るのかと考えれば、自衛隊を合憲化することが使命ではないかと思う。

「正面から」と言う割にはフォークボールのような曲球で、1項はともかく、自民党が忌み嫌ってきた2項の戦力不保持交戦権放棄もそのまま残した上で、3項を「加憲」するというのである。

なかなか手の込んだ理屈で、加憲路線の公明党を味方として確保しつつ、民進党の中の改憲派を誘い出して野党を分断し、国民に対しては1項、2項がそのままなら問題ないんじゃないかと思わせて改憲への抵抗感を和らげるという仕掛けである。

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