憲法9条は改正可能なのか? 安倍政権の描く「加憲」のシナリオ

 

「2020年」への道程は平坦ではない

それでも何でも、とにかく憲法に手をかけたいというのが安倍首相と日本会議の執念である。そのため安倍首相は読売インタビューなどを通じて、上から一方的に2020年という年限と9条及び26条という対象条項とを自民党に押しつけ、それに沿って年内に党としての案をまとめるよう指示した。これによって、両院の憲法審査会を通じて民進党はじめ野党との熟議を通じて国民世論の喚起を図っていくという丁寧な漸進路線を追求してきた保岡興治=党憲法改正推進本部長、中谷元=同本部長代行、船田元=衆議院憲法審査会筆頭幹事らいわゆる「憲法族」は脇に押しやられて、幹事長はじめ党3役が主導する案作りが進められることになる。

安倍首相側近からは、「超スピードで事を進め、年内に自民党案、自公維の合意に基づき18年春に改憲発議、それから60日以上・180日以内の夏前に解散・総選挙と同時に国民投票実施、勝利すれば9月の総裁選は安倍首相の無投票3選が確定する」という都合のいいシナリオが漏れてくるけれども、いくら何でもそれでは公明も維新も付いては行けない。順当なところ、「年内に自民党案、1年かけて出来るだけ民進党も引き込んだ憲法審査会での議論の積み重ねを経て、19年春に発議、7月参院選と同時に国民投票実施、20年に施行」という目算となっていくだろう。

しかしこうした設定は余りに強引で、安倍首相が党内敵なしの「一強」状態でますます傲慢になると同時に、森友学園・加計学園などのお友達優遇疑惑が晴れないどころか深まりつつあることへの焦りに駆り立てられているようにも見える。いくら改憲を加憲にグレードダウンしても、そのやり方が独断的では公明党はもちろん自民党内からさえも反発が出てきて、かえって来年の総裁3選への道は狭まっていきそうである。この日本会議の指示に従った踏み込みが「敗着だった」と後に振り返られることになるかもしれない。

 

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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