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崖っぷちのトランプに辞められたら困る「3つの勢力」

トランプ氏とロシアとの「不適切な関係」を捜査中だったFBI長官の解任をきっかけに、一気に高まった「大統領を弾劾せよ」の声。しかし、今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者の北野幸伯さんが、「トランプ大統領が窮地に追い込まれても、強力な3つの勢力が手を差し伸べる」との見方を記しています。

弾劾に怯えるトランプを支援する3つの勢力

トランプが、「ロシア・ゲート調査中のFBI長官を解任した件。「捜査妨害だ!」と大騒ぎになり、「弾劾」を求める議員も出てきました。

時事通信5月18日。

弾劾を求める動きは広がりを見せつつある。

 

民主党執行部は沈黙を守っているものの、グリーン下院議員は17日の下院本会議で「司法妨害に伴う大統領の弾劾を要求する」と表明。

 

米メディアによると、共和党内からも「ニクソン、クリントン両元大統領のケースでは、司法妨害は弾劾に値すると考えられた」(カーベロ下院議員)と指摘する声が漏れ始めた。

この件について、記事を書きました。まだの方は、まずこちらからご一読ください。

裏切られる米国民。弾劾を免れても変わらぬ窮地のトランプ大統領

今アメリカで起こっていることの本質は、何でしょうか?

「ロシア・ゲート」は表向きの理由で、要するに、「抵抗勢力がトランプをやめさせたい」のです。ビジネス界から突然政界に殴り込みをかけ、大統領になったトランプ。既存の支配層から見ると、完全に「よそ者」です。その為、「抵抗勢力」は、非常に強力で、なおかつ数が多い。主な面子を見ると。

う~む。世界最強国家アメリカの大統領でも、これだけの敵に勝つのは、容易ではありません。トランプさんに味方はいないのでしょうか? 今日は、そんな話をしましょう。

軍産複合体を喜ばせるトランプ

トランプは5月20日、サウジアラビアを訪問しました。就任後初の外遊先が、「イスラム教国」だった。これは、アメリカの歴史上初めての出来事だそうです。そして、トランプさん、大きな成果をあげました。

<米大統領>サウジに武器輸出契約 イランとISにらみ

毎日新聞 5/21(日)21:13配信

 

【ワシントン会川晴之】トランプ米大統領は就任後初の海外訪問先サウジアラビアで巨額の武器輸出契約を受注した。訪問直前にはアラブ首長国連邦(UAE)への武器輸出でも合意。弾道ミサイル開発を進めるイランと過激派組織「イスラム国」(IS)の脅威をテコに、武器輸出拡大を実現した形だ。

 

サウジと20日結んだ武器売却契約は、当初分だけで1,090億ドル(約12兆円)。ティラーソン国務長官などによるとサウジは総額3,800億ドル超の対米インフラ投資にも合意しており、前代未聞の額だ。

サウジはアメリカから12兆円も武器を買う…。日本の防衛費が約5兆円ですから、その倍以上。すごいことです。アメリカの軍産複合体は大喜びしたことでしょう。

軍産複合体。これが、トランプさん、一番目の味方です。トランプは、最初から軍産複合体を味方につけていたわけではありません。大統領選挙戦中、彼は「孤立主義的」でした。

たとえば、「ウクライナ問題は欧州の問題」「アサドは悪いが、ISはもっと悪い」「朝鮮戦争が起こっても、アメリカは介入しない。韓国や日本は、『グッド・ラックだ!』」などと発言していた。つまり、「アメリカは、他国の紛争に介入しないよ」と。こういう発言は、もちろん軍産複合体を不安にさせます。

しかし、トランプは、大統領に就任すると、まさに180度変わりました。まず、「軍事費を10%(約6兆円)増やす!」と宣言した。そして、4月にはシリア軍基地をミサイル攻撃して、世界を驚かせた。「戦略的忍耐の時代は終わった」と言いつつ、北朝鮮との対決姿勢を強めていった。そして、今回サウジアラビアに12兆円武器を売る契約を結んだ。

トランプは、「軍産複合体にとって都合のいい大統領」に変わっていきました。「オバマよりいいぞ!」ということでしょう。

サウジアラビアを味方にするトランプ

この話には、もう一つの「参加者」がいます。そう、アメリカから大量に武器を買うことを決めたサウジアラビア。実をいうと、サウジアラビアは、「オバマに冷遇された国」でした。なぜ? 主な理由は、アメリカで起こった「革命」。何でしょう?

ブッシュ(子)の時代、アメリカは、資源たっぷりの中東を非常に重視していました。なぜ? 「アメリカ国内の石油は、2016年に枯渇する」と予測されていたから。

ところがオバマの時代、アメリカで「シェール革命」が進展していきます。結果、アメリカは、いつの間にかサウジ、ロシアに並ぶ「エネルギー超大国」になってしまった。2016年には、40年ぶりに「原油輸出」が再開されています。つまり、「シェール革命のおかげで、アメリカには石油もガスもたっぷりある」「だから、サウジとの関係はそれほど重要ではない」。これが、オバマの態度でした。

2016年1月、世界を仰天させた事件が起こります。サウジアラビア(=スンニ派)が、シーア派の指導者ニムル師を処刑した。これに激怒したシーア派イランの群衆は、テヘランのサウジ大使館を襲撃します。サウジアラビアはイランとの国交断絶」を宣言。軍事衝突に発展する可能性がでてきた。この時、オバマ・アメリカは、どんな態度だったのか?2016年1月6日付、読売新聞から。

米国務省のカービー報道官は4日の記者会見で「我々はこの問題の仲介者になろうとしているかと問われれば、答えはノーだ」と述べた。

つまり、「アメリカはサウジを守らない」と宣言した。それどころかアメリカは、サウジと対立するイラン制裁を解除してしまいます。オバマ時代アメリカとサウジの関係は最悪になっていた。だから、サウジは、トランプを大歓迎したのです。CNN.co.jp 5月21日。

サウジの首都リヤドの空港では、大統領専用機から降り立ったトランプ氏とメラニア夫人をサルマン国王らが出迎えた。空港からの通り沿いにはトランプ氏と国王の大きな看板が並び、滞在先のホテルの外壁にも同氏の顔が大きく映し出されるなど、現地は歓迎ムード一色だ。トランプ氏とサルマン国王はにこやかに会話を交わした後、ともに車でリヤド市街へ移動。宮殿では国王がトランプ氏に同国最高の栄誉とされるメダルを贈呈した。

「国王がトランプ氏に同国最高の栄誉とされるメダルを贈呈した」そうです。

サウジアラビア。これが、トランプ第二の味方

トランプ最大の支持国イスラエル

シェール革命」でオバマは、中東への関心を失った。それで、被害を受けたのはサウジアラビア。もう一国、もちろんイスラエル。

オバマ時代アメリカとイスラエルの関係は最悪になっていました。2015年3月、ネタニヤフ首相は、アメリカ議会で演説。なんと、オバマ政権を痛烈に批判した。それで、世界は、「嗚呼、アメリカとイスラエルの関係は最悪だ」と理解したのです。

トランプは絶対的親イスラエル」です。何といっても、娘イヴァンカさんの夫クシュナーさんはユダヤ人。イヴァンカさんは、結婚時「ユダヤ教」に改宗しましたから、定義上、彼女も「ユダヤ人」。(「ユダヤ人」の定義は、「ユダヤ教徒」であること。だから皆さんも、ユダヤ教徒になれば、ユダヤ人になれます)。よって、トランプの孫もユダヤ人。そして、トランプとネタニヤフ首相は親友。というわけで、オバマに冷遇されたイスラエルもまた、トランプ大統領誕生を歓迎したのです。

今後アメリカで、「弾劾話」が進んだとします。イスラエルは共和党議員に大きな影響力をもっている。それで、トランプを支援してくれることでしょう。その見返りは、オバマが進めたイランとの融和政策を変更すること。

というわけで、軍産複合体サウジアラビアイスラエルはトランプの味方。敵は、既述のように、民主党、共和党の反ロシア派、マスコミ、諜報機関、国際金融資本など。

トランプさんは、安倍総理とも仲がいい。オバマさんと比べると、北朝鮮に対し、断固とした態度をとっている。現状日本にとっては悪くない大統領」ですね。是非、がんばってほしいと思います。

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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