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なぜ高級住宅街が空き家になり、都心のタワマンに人が集まるのか?

これまで「田園調布に忍び寄るゴーストタウン危機。セレブ住宅街の辛い現実」「ゴーストタウン化する大都市郊外。かつて憧れの高級住宅街の末路」と2回に渡り、我が国を襲う深刻な空き家問題について記されてきた無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さん。今回の記事では、住宅供給数のコントロールをしてこなかった政府を批判するとともに、今後日本の空き家問題がどう展開していくかについて考察しています。

住まいに関する価値観も常に変化している

こんにちは! 廣田信子です。

我が国の都市計画は都市の成長や住宅数のコントロールとは無関係につくられます。

もともと戦争でたくさんの人が亡くなり、戦後のベビーブームで急激に人口が増加したことによって、日本の人口ピラミッドは、いびつな形にならざるを得ませんでした。

団塊の時代、団塊ジュニアの時代が、家を持つ時期、急激に住宅の需要が増える、そのピーク時に合わせて住宅を供給していると、どうしても、住宅は過剰供給になってしまいます。しかも、供給側は、常に住宅を一次購入する家族の平均パターン夫婦に子供が2人の4人家族をモデルにしてきました。

そして、「ゴーストタウン化する大都市郊外。かつて憧れの高級住宅街の末路」の通り、30年~40年前は、専業主婦が家にいることが前提の住宅が多数供給されています。

また、当時はまだいずれは高齢の親を自宅に引き取って面倒を見るというのもごく普通の社会通念で、そのときに使える和室が1階にある住宅も平均モデルでした。

その後、家族の形態が大きく変化し、1950年代に、一世帯当たりの員数は5人でしたが、1961年には4人を切り、1992年にはとうとう3人を切り、2015年には2.49人と2.5人を切っています。

単身者が増え、子供の数も減少し、高齢の親との同居も珍しくなった今日、4、5人家族用の大き過ぎる家が余ってしまうのは、当たり前のことです。

また、専業主婦が減少して共働きが増えることで、環境のよさより、職場との距離通勤の利便性が住宅選択の重要なポイントになってきました。都心のタワーマンション等は、まさにその需要を満たすものです。

日本の家族の形態や働き方の変化に合わせてディベロッパーはどんどん新しい地域を開拓し新たな形態の住宅を供給してきました。それを、景気対策、税収増のため、政府も後押ししてきた…その結果が今です。

少子高齢化、人口減少社会は、急に来たわけではなく、四半世紀前からわかっていたのです。少子高齢化の未来が避けられないと分かった段階で、住宅政策を大胆に見直し、住宅供給数のコントロールをしていたら、少しは違っていたのではと残念ですが、経済成長を目指す資本主義社会は、それを許さなかったでしょう。

さて、今日の空き家問題、国はようやく手を打ち出しましたが、焼け石に水の感は否めません。でも、実は私、そんなに悲観的にならなくてもいいんじゃないかと思っています。

人は、なかなか今の価値観を変えることができないけど、どうしようもない状況になれば、それなりの知恵も出て、新たな価値観の芽も育ちます。時代は流れているのです。30年前に今を想像できなかったように、20年後は、今とは全く違う価値感の社会になっているかもしれません。

働き方改革で、休みが増え、家庭生活を大事にする文化が根付き、同時に、IT社会がさらに進化し、在宅勤務が進み、都心のオフィスに通勤する必要がなくなったら、人は、また、郊外のゆったりした住環境を求めるかもしれません。

また、人口減少社会を支えるために、制約のある中でも、すでに多くの外国人労働者が働いています。今後、もっともっと増えることでしょう。そうすれば、彼らの住宅が必要になります。都心に近い比較的家賃が安い賃貸マンションの需要が減ることはないと思います。

じゃあ、都心のタワーマンションはというと、民泊を積極的に受け入れることで、別の意味での価値を生んでいるかもしれません。もっと、根本的なところで、人の幸福感の源が、「自分が所有すること」から「人と分かち合うこと」に変わっていたら、まったく別の世界が、そこに展開しているかもしれません。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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